徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

―「こよひ逢ふ人みなうつくしき」―生誕140年 与謝野晶子特別展(神奈川近代文学館にて)

2018-03-25 16:00:00 | 日々彷徨


 数日前に、桜の花弁の上にふりしきる雪景色を眺めたばかりだったが、三月もやがて暮れていこうとしている。
 桜は予定よりも早く開花して、もう見事な満開だ。
 そしてこれからしばらくは、春本番である。
  いよいよ、待ちに待っていた 暖かな季節の訪れとなった。
 春風に心地よく誘われて、そんな中での文学散歩だ。

 やわ肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君 (みだれ髪)

 神奈川近代文学館「与謝野晶子展」が開催されていて、覗いてみた。
 かの有名な歌集「みだれ髪」が刊行されたのは、1901年(明治34年)8月のことであった。
 2018年は、歌人与謝野晶子(1878年~1942年)の生誕140年にあたる。
 23歳の時の晶子が、恋愛を高らかに謳い上げた第一歌集の誕生は、近代日本の文学界に大きな衝撃を与えたのだった。
 師であった与謝野鉄幹への恋を貫いて結婚し、いまでは情熱の歌人と喧伝され、五男六女を育てた立派な強き母であった。
 その一家の家計はなかなか大変だったそうだ。
 それでも、ほとんど晶子の筆一本が家庭の苦難を誇り高く支えていたというから、これも驚きだ。




晶子は歌人としてのみならず、詩、評論、小説、童話、古典研究など様々な分野で、幅広い執筆活動を行ってきた。
晩年の「改訳源氏物語」などに至るまで、女性ながら、骨太でエネルギッシュな晶子の強いイメージが、この展観には投げかけられている。
明治という時代に、革新的な風潮の最先端を切り拓いて、男性勢力の強い時代をものともせずに、ひたむきでひたすらな勢いを誰もが感じることだろう。
大阪堺の和菓子商の娘として育った晶子は、店の後継者の男児になかなか恵まれなかったなかで、漢学塾などで学びながら、店番の合間を縫っては膨大な父親の蔵書をひもといて、早くも紫式部清少納言を読みふけっていた言われる。

この与謝野晶子展、なかなか内容の濃い興味深い展示で、明治、大正、昭和に続く激しい時代を、一人の女性として、文学者で先駆的な立場で強く生き抜いた彼女の波乱の人生を、数多くの貴重な資料で展観することができる。
記念行事として、4月7日(土)歌人・尾崎佐永子の講演をはじめ、4月14日(土)俳優・竹下景子「新訳源氏物語(与謝野晶子)」の朗読会、また4月21日(土)歌人・三枝昂之、5月5日(土)(祝)歌人・今野寿美の講演となど、さらに会期中の毎週金曜日にはギャラリートークも予定されている。
神奈川近代文学館与謝野晶子展は、3月17日(土)~5月13日(日)まで開催されている。
なお4月15日(日)までは前期展示、4月17日(火)~5月13日(日)は後期展示として入れ替わることになっている。

次回は日本映画「素敵なダイナマイトスキャンダル」を取り上げます。