自分らしく生きることの大切さをテーマにして、日本でも大ヒットした「明日のパスタはアルデンテ」(2010年)のフェルザン・オズペテク監督の新作である。
オズぺテク監督は1954年イスタンブール出身で、姉は女優のゼイネブ・アクスだ。
この作品は、不器用な男女の13年間にわたる愛を、過去と現在が交錯する時間の中に描いている。
仕事も恋も手に入れたヒロインが遭遇する、人生の乱気流って・・・。
そんな時に力を与えてくれるのは、友人、家族、そして恋人の深い愛だ。
人は人に愛されて生きている生き物だと、あらためて気づかせてくれる、明るさと優しさいっぱいのヒューマン・ラブストーリーだ。
人生は一度きり、カプチーノも、いのちもお熱いうちにというわけか。
アドリア海を望む、南イタリアの美しい街レッチェ・・・。
エレナ(カシア・スムトゥニアク)はカフェで働いている。
エレナは雨の日のバス停で、アントニオ(フランチェスカ・アルカ)と出会う。
アントニオは偶然にも、同僚シルヴィア(カロリーナ・クレシェンティーニ)の恋人だった。
二人は性格も生き方もまるで違うが、強く惹かれあい、周囲に波乱を巻き起こした末にその恋を成就させて結ばれる。
13年後、カフェの同僚で親友のゲイ、ファビオ(フィリッポ・シッキターノ)と独立して始めたカフェが成功し、アントニオとの間に二人の子供をもうけたエレナは、公私ともに多忙な日々を送っていた。
しかし、あれほど愛し合ったエレナとアントニオの夫婦関係には、綻びが出始めていた。
そんな時、叔母のカルメラ(エレナ・ソフィア・リッチ)に付き合ってがん検診を受けたエレナは、思いがけない結果を聞かされるのだった・・・。
酒浸りの夫アントニオとの仲も冷え切り、思わぬ病がエレナにふりかかって・・・。
しかし、エレナは気丈に振る舞うが、体調は一進一退を繰り返し、病院で知り合った友人エグレ(パオラ・ミナッチョーニ)までが亡くなり、エレナは生きる希望を失ってしまうのだが・・・。
13年を飛び越えた映画は、ラストで過去に戻り、海辺で戯れる二人を映し出すのだ。
そう、まるで過ぎ去った日を愛おしむかのように。
人生にはいつか終わりが訪れる。
喜びも人生、悲しみも人生・・・。
そして、人は誰でもたくさんの思い出を持って生きている。
ヒロインを一人で育てた母の愛にも触れ、愛すべき人たちに囲まれて生きることこそが幸せであると認識させるドラマだ。
泣いて、笑って、元気をもらって、フェルザン・オズペテク監督のイタリア映画「カプチーノはお熱いうちに」は、作品自体あまり斬新さや意外性は感じないものの、現実は現実として、夢は夢として、どこまでも人間を深く優しく見つめる視線は心地よい。
人は人に愛し愛されて生きているのだから・・・。
イタリア映画らしい、人生讃歌だ。
[JULIENの評価・・・★★★☆☆](★五つが最高点)
次回は映画「起終点駅 ターミナル」を取り上げます。