徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「アデル、ブルーは熱い色」―愛する痛みは女の誇りと生きる歓び―

2014-04-13 12:00:00 | 映画


確かにそうなのだ。
目の前で、現実の恋愛が繰り広げられているような感覚だ。
カンヌ国際映画祭で、パルムドール(最高賞)を審査員の全員一致受賞した愛の衝撃作だ。
ひとことで言えば、女性と女性の愛の物語である。

女性同士の心身を捧げた愛は、過激なラブシーンの連続だが、嫌らしさは感じない。
むしろひとつひとつのシーンが、絵画のように彫刻のように美しい。
アブデラティフ・ケシシュ監督フランス映画だ。
世代や性別を超えた、究極のラブストーリーか。
監督とともに、主演女優のアデル・エグザルコプロスレア・セドゥパルムドール獲得するという、史上初の快挙にも注目が集まる。
コミック原作の映画が受賞するという、前例のない決定も史上初である。





      
アデル(アデル・エグザルコルコプロス)は、女子高校生だ。
街ですれ違った青い髪の女エマ(レア・セドゥ)に目を引かれ、偶然入ったバーで再会する。
エマは美学生だった。
その彼女が、高校の出口でアデルを待ち受ける。
二人は惹かれあい、愛し合い、体の関係も生まれ、互いの家族にも紹介する。
庶民の家庭に育ち凡庸な世俗に生きる女と、エリート家庭出身の知性と教養に富む女・・・。

それは、身も心も捧げた、二人の恋であった。
数年後、アデルは念願の幼稚園の先生となり、エマと同棲しながら彼女のモデルを務める。
しかし、住む環境や考え方、価値観の違いが、完璧だった二人の関係にほころびを生じさせていく・・・。

原作は悲劇的な結末を迎えるが、本作のケシシュ監督は、思い切って前向きの物語に改変したそうだ。
フランス映画「アデル、ブルーは熱い色」は、二人の女性が深く愛し合った数年間を描いている。
ただそれだけの中に綴られる、出会い、擦れ違い、移り気、亀裂、孤独、再会と旅立ち・・・。
アデルがエマから別れを告げられる終盤のシーンは、必死に追いすがるアデルの演技に、胸痛む思いも生じるほど、この部分の展開は悲痛感がある。

極めて単純なドラマなのだが、作品は、ドキュメンタリータッチの生々しい雰囲気や見せ場もある。
女性同士の恋愛だし、ラブシーンも激しいが、アデルレア・セドゥも二人の愛の形を鮮烈に体現している。
ヒロインたちの10年を追う、アブデラティフ・ケシシュ監督の目はかなり執拗だ。
演出についても、タイトルのように熱っぽく斬新である。
ここは大いに賞賛したい。

一目惚れから運命的な再会、そして恍惚の世界へ。
ここまで濃密に描いた作品を、あまり知らない。
人生の甘さと痛さを経験して大人になっていく女たちを、二人の女優が体当たりで表現する。
上映時間3時間は、いかにも長い感じがしないでもない。
性愛は生き生きと美しく輝くが、ラストシーンを迎えてこれからアデルはどう生きていくのか。
そこは観客に任される。
監督も出演者も、力量十分だ。
そう思いつつも、この作品が訴えてくる、奥行とか深さとなるとさてどうであろうか。
      [JULIENの評価・・・★★★★☆](★五つが最高点)