徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「ブロークン・イングリッシュ」―恋は臆病から―

2009-05-13 06:00:00 | 映画

このタイトルからは、どこかの国のハチャメチャな英語を使ってはしゃぎまくる首相を連想してしまうが、映画は違っていた。
少し前の作品になるけれど、肩のこらない、ミラクル・ロマンスだからだ。

現代女性の心の襞を、淡い色彩で描いた、地味な味わいの作品だ。
男と女の違いを見せつけて、まああり得ない話(?)だから、ミラクルというわけか。
ゾエ・カサヴェテス監督の、アメリカ・日本・フランス合作映画だ。

愛は、不器用で、臆病で、それでもその先に本当の恋が見えてくる・・・。
ニューヨークで出会い、パリで愛に気づいた。
あるがままの自分で愛し、愛されること・・・、女性による、女性のためのラブストーリーというわけか。
知らない愛に気づき始める男と女の、リアルな距離感が歯がゆく面白い。
誰もが憧れる、ニューヨークとパリの街並みが、一応ロマンをかき立てる・・・。

三十代、独身のノラ(パーカー・ポージー)は、ニューヨクのホテルで働く、仕事中心の日々を送っていた。
親友のオードリー(ドレア・ド・マッテオ)は、自分の紹介した相手と結婚した。
母親は、ことあるごとに自分のことを心配している。
男性と付き合おうとすれば、失敗する。
本当に愛し愛されるパートナーには、めぐり会えないかも知れない。
・・・揺れ動く、そんな女の気持ちさえ、日常にかき消される。

ある日、気分晴らしに出かけた友達のパーティーで、フランス人のジュリアン(メルヴィル・プポーと遭遇する。
ノラは、失敗ばかり繰り返していて、自分が傷つくのが怖い。
それだから、情熱的で優しい彼を信じられない。
だが、そんなジュリアンに惹かれている自分に気づいたとき、彼からパリに戻らなければならないと告げられる。
彼はノラに一緒に行こうと誘ったが、彼女はいまの生活のすべてを変える決断ができなかった。
ジュリアンは去っていった。

ノラの心に、ぽっかりと穴が開いてしまった。
仕事も手につかない。
このまま、また平凡な日常に戻るのか。
忘れようとすればするほど、せつなさが募った。
何もしないでいれば、何もかも失われる。
そう気づいたとき、オードリーの後押しもあって、二人は一緒にパリへ向かったのだったが・・・。

ゾエ・カサヴェテス監督ブロークン・イングリッシュは、愛とは抗いがたい魅惑で人を夢中にし、至上の歓びを与えるものだということを、女の視点で誰にも解りやすく説いているかのようだ。
大人のおとぎ話なのだ。

現実にはありえそうにもないミラクルが、結末に用意されているあたり、いかにも女性ならではの映画作りを感じさせる。
女の悲しさは愚かさであって、それは馬鹿馬鹿しいおかしさに変わる。
女心が、透けて見えてくる。

いつでも、恋は臆病で盲目だ。
ドラマとしては、さほど珍しい題材ではない。
いまの時代、婚活がひそかに盛んのようだ。
自分のいるべき場所を探し続ける、女たちの痛みはいつの時代も変わらない・・・。