湘南発、六畳一間の自転車生活

自転車とともにある小さな日常

闘う相手として誰を選ぶか?

2007年07月10日 | 日常生活
 2年前の8月28日に行なわれたヒョードルvsミルコの試合を昨日久し振りにDVDで観た。この試合を僕は手に汗を握りながら息をのんで会場で観た。リングスでデューした当初から明らかに他の選手とは違うオーラを発していたヒョードルと、途中2度の痛々しい敗北を喫しながらもその後KOの山を築いてようやくヒョードル戦にこぎつけたミルコとの対決は、僕だけでなく当時の総合格闘技ファンが望む最高峰のカードだったと思う。実際その試合のチケットを手に入れるのはかかなり大変だったようだし、オークションでは格闘技の大会には珍しくたいした席でもないのに倍近い(以上の)値段に跳ね上がっていた。そんな状況をみるにつけ、ちょっと金銭的には痛かったけれども早々と3大会セットのチケットを買っておいて本当に正解だったと僕は心から思ったりしていた。セットのチケットを買ってしまったせいで、初回は大阪ドームまで行くことになってしまったにもかかわらず。

 ファンの期待にたがわず、試合内容のほうも素晴らしかったと思う。終盤ミルコのスタミナ切れと気持ちの弱さが出てしまって試合がだれたのが残念ではあったけれども、最初の5分間のあの緊張感と密度の濃さはなにものにもかえがたいように感じられた。会場の雰囲気も明らかに通常の試合と違っていて、二人の動きのひとつひとつに、いや動きだけでなく二人の闘志がばちばちと飛び交うたびにため息がもれた。僕はそれまでもいわゆる大試合を会場で観戦してきたけれども、あの試合には単なるこちらの個人的な思い入れ以上の何かが確かに存在していたと思う。

 ところで、かなりどうでも良いことで恐縮なんですが(汗)、もし自分の大切な何かを守るために、ヒョードルかミルコかノゲイラの3人の誰かとリングで闘えと言われたらどうしよう?といったことを僕はときどき考えたりする。えっと本当に下らなくて申しわけないんですが、多分格闘技ファンだからだと思うけれどもときどき僕はそんなことを考えたりする。その場合即座に却下したいのがヒョードルである。とにかく僕はこの3人のなかではヒョードルが一番怖い。どんなに相手が弱くても情け容赦なく手加減なしで表情ひとつかえずに攻撃してきそうだし、実際「・・・」とことばを失ってしまうようなそういう試合をリングス時代から僕は何試合も観てしまっているから。明らかに実力差のあるクリストファー・ヘイズドマンを情け容赦なくぼこぼこに殴りつけたり、亀の状態になったヒース・ヒーリングを腕を振り回して渾身の力で殴りつける姿は本当に怖ろしかった。とてもではないが、あんな人間と同じリングになんてあがれない。

 ヒョードルと比べればミルコやノゲイラにはそこまでの容赦のない怖さはないような気がする。ミルコは弱い人間にはとことん強く、また自分より強い人間には心の弱さが露呈しやすいファイターであると思うけれども、闘う価値のない相手にたいしてはそんなにひどいことはしないような気がする。とは言え、もちろんあのキックを食らったら手加減してもらったとしても病院送りは間違いないだろうし、下手をしたら死んでしまうとも思うけれど・・・。

 ノゲイラの場合は打撃系の選手ではないので“組みやすし”といった雰囲気がある。それから小池栄子を相手に鼻の下を伸ばしていたりする姿ももちろんリングの上の姿とは無関係ではあるのだけれども、闘う男の怖さを幾分失わせているような気がする。ただ勝負にたいする執着心や闘うことにたいするプライドは誰よりも強いような気もするのでそのあたりを考えると心の弱さが出やすいミルコより侮れるかというかと全然そんなことはない。決して組みやすい相手ではない。・・・って当たり前ですが(大汗)。

 もしただリングにあがることだけが条件であれば、僕はやはりノゲイラを選ぶと思う。そしてあがってゴングが鳴った瞬間にマットを叩いてギブアップ。屈辱的だけれどもそれ以外にない。でもノゲイラが相手であればうまくいけば寝技に引き込まれてチョークか何かで気持ち良く眠らせてくれるかもしれない。それでも敗北には変わりないけれども、一応リングにあがるという約束は果たしたわけだし、何もしないでマットを叩くよりかは幾分ましだろう。他の二人の場合はゴングが鳴った瞬間の打撃1発で終わってしまうだろうからやはりどうあっても選ぶことはできない。

 ただこれがリングにあがるだけでは駄目で勝利をも必要とされたとしたらどうだろう・・・。そのことを考えると僕はとても暗い気持ちになる。どんなに自分が大切に思ったところで守りきれないものがあるというつらい事実に気づかざる得ないから。そのとき僕はそれでも負けるとわかっていてもリングにあがるのか?それとも大切なものを見捨てるというつらい選択をするのか?これがこんな具体的な話ではなければ、大切のもののためであれば命をも懸ける!とか言えちゃうのかもしれないけれども、ヒョードルなんかの姿を実際に思い浮かべちゃったりしたらそんなことは言えないよなぁ。悲しいけれど・・・。