YS Journal アメリカからの雑感

政治、経済、手当たり次第、そしてゴルフ

震災のアメリカ自動車業界への影響

2011-03-28 11:36:18 | アメリカ自動車業界
まず、いきなり GM のトラック工場が、日立製のエアーフローセンサーの不足を懸念してストップした。余り人気の無い小型ピックアップを生産している工場なので、部品の在庫を温存する為と推測されている。(他の車種にも使われているのであろう。(WSJ によると日立の全世界シェアはなんと60%。現時点でどの程度復旧しているのかは不明)

日立は、立地からしても地震の被害が大きかったのではないかと思われる。東北地区の下請けも多く、早くからアメリカからの原材料輸出の話が出ていた。

先週末から騒がれだしたのは、Xirallic という自動車塗料に入れるピグメント。ドイツ、メルク社の小名浜工場だけで作られているとの事。(メルク社の日本技術者が開発したらしい)アメリカでは、フォードとクライスラーが、このピグメントのは入った塗装を使った色の車のオーダーを受け付けていない。(因に、トヨタやホンダも日本製の車のオーダーを受け付けていない)

そのほか私の知っている限りでも、原発の避難区域内に工場があり、被害さえも解らない化学薬品会社や、工場自体には影響が無いもの、計画停電で今後の生産量が7割程度になる原材料メーカーもある。特に化成品は鹿島コンビナートからしか供給出来ないものもあり、影響が広範囲になる予感もしている。

センサーとか電気部品とは違い、原材料系はほぼ船便で来ているので、まだ全然影響が出ていない事もあり、ドタバタ始まっているものの緊迫感はまだ無い。(輸入材料を使っているのに、問い合わせをして来てこない所もあり、ちょっと拍子抜けしていたりもする。これらの会社のリスク管理のあり方を疑ってしまう)まあ、日本の会社は、Force Majeure を出していないので、アメリカにおいては、米系、日系に限らずピンときていない可能性もある。(出たら出たで、過剰反応をもあるので、それも厄介)

なぜこの期に及んで、日本の企業が "Force Majeure" を出していないのか不思議に思っていたが、面白い情報を得た。(真偽の程は未確認なので注意) "Force Majeure" を出してしまうと、在庫や今後限られた生産量を公平に出荷しなければならないらしい。(例えば、昨年の出荷実績に応じて、限られた量をその割合とか)現在、日本では、顧客に優先順位を付けて、足りない供給量をどのように分配するかを必死で調整を行っているらしい。いかにも日本らしいご苦労な事が行われているようだ。

生産とは全く別に、更に心配な事が増えて来た。それは放射能の影響である。

現時点では、ドイツ船社のHAPAG 社船籍以外は、東京、横浜港へは継続寄港する予定なのだが、今後、船籍国の指示により寄港拒否の可能性があるとの事だ。また、航路についても、福島原発の日本の30キロ圏外ではなく、アメリカ基準の80キロ(50マイル)を適用しているそうだ。(これは余り影響ない様な気がする)

アメリカ政府は、日本からの船舶、輸入品の放射能検査は厳しくなると予想されている。知らなかったのだが、航空便については、放射能測定は日常的に行われているとの事。測定が厳しくなっており、通関前の荷物が裁き切れなくなっており、保税倉庫はごった返しているとの事だ。(中国では、既に旅客便に載っていた貨物の通関拒否があり、そのまま送り返されている例がある)

今のところ、アメリカにおいては、日本からの原材料系供給不足の危機はスローモーションなのであるが、在庫、流通在庫の切れる5月頃からが怖い。放射能漏れもまだ続いているので、長期戦になりそうな嫌な予感がある。代替品の等の次善策の検討を始めなければと考えている。

今後長期的には、特殊な原材料に頼った部品などについては、比較的入手のし易い汎用品などへの転換が起こるのではないかと思っている。日系メーカーの工芸品的な自動車造りが、ある程度、転換せざるを得ないのではないだろうか。

震災の日本全体への真の意味でのインパクトは、まだその兆しさえ、姿を現していない。

政治家の唯一の商売道具「言葉」

2011-03-28 00:30:55 | 政治の話題
オバマ政権のリビアに対する対応は、ころころ変わっていて、戦争したいのか、人権擁護したいのか、良く解らないのだが、批判が高まった事を受けて、先週土曜日のラジオ演説(オバマになってビデオ演説になっているが)で、人権擁護という方向性で一所懸命、自己弁護をしている。

さて、演説の1分47秒頃に、"countless civilians" を救う事が出来たと自慢しているが、リビアの人口は、カダフィ側を含めても全部で642万しかいないので、”countless” を使うのは不適当であろう。

アメリカ大統領ともあろうお人が、こんな意味の無い情緒的な言葉を演説で使う事は、基本的に間違っている。以前からオバマのスピーチライターの資質に疑問を呈しているが、書く方も書く方なら、それを承認して読んでしまう政治家も政治家である。

政治家の唯一の商売道具は「言葉」である事を考えると、由々しき問題であろう。

さて、「言葉」が唯一の商売道具で有る職業として、アジテーターとか職業的左翼があるが、これらの人々は、意味の有る言葉を使う事と論理が成り立たなくなるという不思議な職業である。よって、意味も無く大げさで、情緒的で、感情的な言葉を連ねる事を生業とする奇怪な存在である。

残念ながら、"change" を掲げたオバマに "change" は無く、オバマ本来の生業として、唯一の商売道具「言葉」を使ってしまったという事であろう。

料理人には良く切れる包丁が必要だが、良く切れる包丁は殺人者も必要なのである。罪無き「言葉」”countless” に同情してしまう。