暘州通信

日本の山車

28825 盗っ人神さまと蘇塗

2008年08月25日 | 日本の山車
28825 盗っ人神さまと蘇塗
飛騨高山(高山市)の旧市街北部に松本町がある。ここに盗っ人神さまとよぶ小祠が祀られている。富山県に流れる神通川の上流であり、高山市内の中心を南北に流れる宮川、裏日本に流れる水系では唯一淡水のりを産したことから名づけられた苔川(すのりがわ)、さらに旧清見村(現高山市)を流れる川上川の三川が合流する地域である。
この苔川左岸側に冬頭町(ふいとちょう)がある。明治、大正期ころまでは「ふと」とよんでいた。
嬰児に飲ませる乳がでない貧しい婦人が「おもゆ」をつくって吾が子に飲ませるため、稲穂を盗んだところ、里人に見つかって追われたが、盗っ人神さまの祠に逃げ込んで助かったという伝説がある。
『魏志東夷伝・韓志』に「蘇塗(そと)」といい、大木を立て、鈴鼓(れいこ)を飾り、盗人が逃げ込んでくる記述がある。ここに逃げこめば、捕えることができない聖域とされ、通俗の常識とは無縁のところ不可侵の場所、すなわち「アジール」と考える思想は、エジプト、ギリシャにもあるという。
また「俘屠(ふと)のごとし」とある。俘屠とは寺院のことだといわれるが、冬頭(俘屠)の地名、先の川上川に架かる「四十九院橋」の固有名称とも無縁とは考えられない。
飛騨高山の「盗っ人神さま」は、古代に朝鮮から渡来した「蘇塗」だったとも考えられる。