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カクレマショウ

やっぴBLOG

ケンちゃんチャコちゃんクレヨンしんちゃん

2006-09-30 | ■映画
「クレヨンしんちゃん」って不思議なアニメだよなーと思います。日本PTA全国協議会が毎年発表する「子どもに見せたくない番組」の上位ランキング常連なのに、一方では大人を泣かせるメッセージ色の濃い映画版もある。しんちゃんの繰り出すお下劣なギャグに大笑いさせられるからこそ、シリアスな場面に余計泣かせられるのでしょう。子どもと一緒に見に行って、親の方が号泣するシーンが目に浮かびますねー。

泣くと言えば、私にとっては「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」(2002年)ですが、今日テレビでやっていた「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」(2001年)も、同じ原恵一氏の監督・脚本・絵コンテによる作品です。クレヨンしんちゃんのキャラクターを100%生かしながら、ただの子ども向けギャグ映画にしないところ、素晴らしいですね。というより、子どもには逆にわかりにくいんじゃないのな?とさえ思えます。

この映画が作られたのが21世紀の初年ということからでしょうか、「20世紀」というフレーズになってはいますが、この映画のテーマははっきり言って、「昭和ノスタルジー」です。私たちの年代なら誰もが懐かしさを覚える昭和30年代。そんなコンセプトの居酒屋やテーマパークがここ数年、雨後のタケノコのように増えてきていますが、この映画はそれを先取りしたものと言ってもいい。

懐かしさ=昔はよかったなあ…という感情の裏側には、少なからず「現在」へのいらだちや「未来」への失望が潜んでいます。オトナたちのそんな感情を利用して、悪の組織「イエスタディワンスモア」がある悪巧みを仕掛けていくのです。

悪役カップルが「ケンちゃんチャコちゃん」という名前であることからして泣かせる。あの頃誰もが知っていた子ども向けドラマの主人公。ウルトラマンや魔法使いサリーちゃんとは別の意味での、等身大のヒーロー、ヒロインでした。ケンちゃんチャコちゃんの誘いを断ることなんて誰もできないのです(ところで、この映画のチャコの声、なかなかいいですね~。オトナびてて。はかなげで。)。

「ノスタルジー」というのは、もともと精神的な病気の名前だったということをどこかで聞いたことがあります。それが現在は何か美しいイメージの言葉となり、ノスタルジーを「そそる」商売さえ登場している。ノスタルジーが高じると、現実から逃避し、過去に浸りきりになってしまう…。これってまさに病気です。ひろしとみさえがあの町の醸し出す「におい」のために「浸りきり」になってしまいそうになると、必死になってひろしの靴下のニオイをかぐシーン。あれは秀逸ですね。「古き良き昭和」に別れを告げて、現実と未来をしっかり見つめるためには、靴下のニオイこそ、かぎたくはないけれど、かがなくちゃいけないニオイなのです。そして、倒れても転んでも必死になってタワーを駆けのぼるしんちゃんの姿。まるで明るい未来を取り戻そうとするかのように見えました。

この映画、音楽にも相当凝っています。ケンとチャコがあの町を歩く時、ベッツィ&クリスの「白い花は恋人の色」のメロディが流れます。そして何と言っても、ラストシーンにかぶさる吉田拓郎の「今日までそして明日から」! …これでキマリ、という感じです。この曲は、昔、「旅の重さ」という映画の主題歌としてもものすごく印象的に使われているのですが、しんちゃんの方の使われ方も負けてません。

ところで、結局は「家族愛」が世界を救う、というコンセプトは、「クレヨンしんちゃん」の、あるいはこの種のアニメ映画の限界なのでしょうか? 「家族愛」の前で、タワーから飛び降りることができなかったケンとチャコ。もちろんめでたしめでたし、なのですが、なんとなく、あの二人がかわいそうにも思えました。


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