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カクレマショウ

やっぴBLOG

小児科医が足りない。

2008-05-01 | ■社会/政治
青森県三戸町の三戸中央病院に、この春から小児科の専門医の方が非常勤医師として勤務しています。森彪(たけし)さん、78歳。埼玉県立小児医療センター名誉総長を務めるなど、小児科医として豊富な経験を持つ方です。森さんが勤務するのは、週3日。月曜日の朝の新幹線に乗って昼過ぎに病院に着き、午後から診療。水曜日の午後に帰京するのだそうです。木、金は弘前大学から別の小児科医が来るので、毎日、小児科の専門医がいることになります。

総合病院なら当たり前といえば当たり前でしょうが、県内の特に過疎地域での医師不足は深刻で、小児科医どころかそもそも医師がいなくなったために病院がなくなる地域さえある。森さんは、「先祖が津軽藩士だった」という縁だけでなく、そうした事情も考えての青森赴任だったようです。

「医師不足」と言いますが、実は医師の数は年々増えています。ではなぜ「不足」なのかと言うと、地域によって医師が「偏在」しているからです。つまり、患者数の多い大都市圏の医師は多いけど、人口の少ない地域には医師が足りない。

そして、「医師の偏在」は、地域によるものだけではありません。「診療科」による偏在もまた大きな問題となっています。(日経BP SAFETY JAPAN「小児医療クライシス 二つの『医師の偏在』が生み出した小児科医不足 地域格差と診療科における格差によって危ぶまれる子供たちの未来」参照)たとえば、内科医の数は、この30年近くで倍以上に増えているのに、小児科医や産婦人科医はわずかに減ってきている。特に小児科医は、手間がかかる、診療報酬が低いといった理由で敬遠されるのだそうです。

しばらく前のテレビで、日本は乳幼児の死亡率は世界で最も低いが、「小児」になると、先進国の中でも最下位クラスだと言っていました。その原因はまさに小児科医不足。特に救急救命センターに小児科医がいないために命を落とした子どもたちが多いという事例を紹介していました。自分で症状を説明できない子どもこそ、救急センターが必要なのに、そういう体制になっていない。

教育と同じように、この国がいかに「次代を担う子どもたち」を大事にしていないかということですね。「この国」ばかりじゃありません。目先の利益や手軽さを追い求める大人たちが、子どもたちの可能性の芽を摘み取っている…。

さて、小児科に話を戻しますが、日本で小児科医が少ないのは、欧米に比べると、小児科医の手掛ける範囲が広いということもあるようです。予防接種や子どもの病気相談など「小児保健」の分野はおろか、そこから波及して、地域のお母さんたちの子育て支援まで引き受けている医者は決して少なくないでしょう。小児科病棟には、入院している子どもたちのための保育士や教員免許資格者も必要。そうした費用はもちろん診療報酬の対象外なので、自己負担しなければならない。要するに小児科は手間の割には「お金にならない」ってことか。

小児科医がそこまで手がけること自体は、決して悪いことではないと私は思います。むしろ、「お医者さん」が地域の子どもたちの健康を預かってくれるのは、親にとっては本当に心強いことでしょう。しかし、問題は、その小児科医が絶対的に足りないという点…。使命感だけに頼るのはもはや無理があるのかもしれません。小児科医に対する何らかの社会的な優遇措置が講じられない限り、「いざ」という時の子どもたちの健康は、いつまでたっても保障されません。

わざわざ青森まで通ってくれる、森さんのような小児科医、あるいは医師がそうたくさんいるとは思いません。医療の地域格差をもたらす「医師の偏在」は、2004年の医師研修制度改革が加速させたと言うことですが、こうした「システム」も含め、やっぱり国全体の問題として考えなければならないのでしょうね。


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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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少子化対策と実社会 (きーまま)
2008-05-02 18:16:13
とある大臣が少子化対策で「出産費を負担する。」と打ち出したことがありました。
が、子どもを持つ母親達の言い分は、共通して「そんな問題じゃねえよ。」と失笑でした。
出産費はなんとかなっても、子供を育てる環境に不安があるんですよね。

小児科医の不足も大きな不安材料です。
幸い、あたしは都内に住んでますし、
都内でも子育て支援が盛んな地域で(それを求めて引っ越してきた)、
子どもの具合や状況によって医療機関を選択できるのですが、
小児科医の少ない地域ではそうはいきませんよね。

少子化対策を掲げているのとは裏腹に、子供を育てる環境は悪化していく一方です。
少子化を打破するためには、国を挙げて安心して子育てができる社会を作っていく必要があります。
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国を挙げて。 (やっぴ)
2008-05-03 01:05:10
きーままさん

国を挙げて安心して子育てができる社会。日本がそうなるのはいつの日のことなのでしょうねえ。「子どもは宝」、「大人は我慢しても子どもたちのためになら」、そういう風潮を、市民の側からももっと盛り上げていかなければなりませんね。

結局、仕組みを作ったり変えたりするにはそれなりのお金が必要なわけで、そっちに予算を優先して配分することに、合意形成が必要なのですね。
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