カクレマショウ

やっぴBLOG

「ラポール」を築く(前置きはさておいて)

2012-02-17 | └社会教育

話し手と聴き手との間で、「ラポール」を築くことができるかどうか。どんな講演会でもワークショップでも、このことが一番大切だと思っています。

 

ラポール”rapport”とは、もともとフランス語で「橋をかける」という意味。転じて、相手と自分との間に「心の橋」が架かっている状態を指す臨床心理学の言葉です。もちろん、通常の人間関係においても、ラポールはとても大切なことです。心が通じ合い、互いに信頼し、相手を受け入れている状態(つまりラポール)があって、初めて良好なコミュニケーションが可能となる。そのことは、ある限られた時間での「話し手―聴き手の関係」にも当てはまります。どんな話し手でも、あるいはどんな話の内容であっても、聴き手としてはまずはラポールを築きたいと願う。

 

ただ、どうしてもそれが難しい時もあって…。ラポールを築けるかどうかは、ほとんどが「つかみ」の部分で決まる。話し手の最初の一言二言で、お、これはいい話しが聞けそう…ということもあるし、逆にいきなりまぶたが重くzzzなることもある…(_)

 

特に私がダメなのは(これは「事例発表」に多いのですが)、最初に「言い訳」をしてしまうタイプ。曰く、

 

 

「こういう場で話すのは慣れていないもので…

「最近忙しくて準備が十分できなくて…

「ちょっと風邪を引いてしまいまして…

「夕べ飲み過ぎて頭がぼーっとしていまして…

「先ほどの発表に比べたらたいした話はできませんが…

「皆さんに聞いていただけるような内容ではないのですが…

「お断りしたのですが、主催者からどうしてもと言われまして…

 

…そんな言い訳の嵐。別に誰も責めてるわけでもないのに、なぜ言い訳から入ってしまうのだろう。ちょっとキビシイ言い方すると、よしんば内容がスカスカだったとしても、そんな言い訳で許されるものでもないだろうに。こういうセリフをのっけから言われると、聞いている方の(少なくとも私の)テンション、一気に下がります。聴き手は、いい「事例」を聴きに来ているのです。言い訳が仮に本当だとしても、最初の切り出しとして言うべきではないんじゃないの…?

 

文字通り、「前置きはさておいて」、ずばっと本題に入ってほしいと思います。もちろん、効果的な「前置き」もあります。いい「前置き」をされると、期待度がぐんと上がっていいなりラポール成立!となることも。たとえば、私が好きなのは、受講者(学習者)がどんな人たちなのかを確認してくれる講師。「今日はどんな人たちが集まっていただいているのでしょうか?」と、挙手を促してくれるだけで、あ、この講師は、ちゃんと「相手」のことを意識して話してくれる人なんだと思ってうれしくなる。

 

いや、もちろん、「言い訳」から入る話し手に対しても、「頭から否定」なんかしないで、そんな言い訳をしたくなる心境を思いやってあげるべきなんでしょう。そうかそうか、って「受け入れて」あげるべきなんでしょうね。でも、実際、そのレベルからラポールを築くのはちょっと厳しいかも。

 

文句ついでに、「講演に先立ちまして」行われる「講師紹介」にもあえて文句をつけてみます。(_)!! なんだか、話し手とのラポールを「講師紹介」に邪魔されることも多いもので。

 

最悪なのは、プログラムに掲載されている経歴をそのまま読み上げるパターン。読めば分かるじゃん。「講師紹介」って、「プロフィール紹介」ではないと思う。主催者が、今日この人をどうして呼んだのか、どういう話をしてもらいたくてここに来ていただいているのか、それを伝えるのが講師紹介というもんじゃないのか? 講師の人となりなども、話しを聞けばだんだん分かってくるのだから、事前に余計な情報をインプットするのは余計なお節介でさえある!と思うんだけど。

 

ま、いずれにしても、話し手と聞き手と、それから主催者の思いが同じ方向を向いていさえすれば、ラポールは成立します。今までの、「よかったなあ」と思える講演やワークショップを思い返してみても、みんなそうでした。やっぱり、プログラムの「仕込み方」なんですよね、結局。


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