
“Trainspotting”。ダニー・ボイル監督、1996年公開です。
そういえば、ダニー・ボイルって、「ザ・ビーチ」ですよね。「ザ・ビーチ」はあまり期待しないで見ましたが、ディカプリオがいい演技してて、掘り出し物の映画でした。「トレインスポッティング」があまりにも衝撃的で、以後の作品はいまいちパッとしなかったもので。
主演はユアン・マクレガー。今やスター・ウォーズのオビワン・ケノービ役にはまっていますが、そもそもはこの「トレインスポッティング」で一躍スターダムにのしあがったのでした。丸坊主でヤク中毒。社会に背を向けて生きる若者。そんな役の方がユアン・マクレガーには合う…と思ってしまうのは、この映画のレントン役が強烈な印象を残していたからでしょう。イギー・ポップの“Lust For Life”をバックに、冒頭で街を突っ走るレントンの姿に彼自身のモノローグがかぶさる。「人生を選べ、キャリアを選べ、家族を、大型テレビを、洗濯機を、車を選べ。健康を、低コレステロールを、保険を選べ。友人を選べ。未来を選べ。 それが“豊かな人生”。だが俺はご免だ。豊かな人生なんか興味ない。理由なんてない。ヘロインだけがある…」
「トレインスポッティング」はイギリス映画ですが、実は舞台はスコットランドです。スコットランドは、現在は「イギリス」(United kingdom of Britain)の一部ですが、もともとは「イングランド」とは別の国。かつてイングランドがスコットランドを攻めてきた時には、ウィリアム・ウォレスというスコットランドの英雄がイングランド軍に勝利したこともありました(>>「ブレイブハート」)。
だから、今でもサッカーやラグビーでは「スコットランド・チーム」として戦うし、「スコットランド人」は「イギリス人」と呼ばれることを嫌ったりするわけです。この映画の原作者アーヴィン・ウェルシュも監督のダニー・ボイルも、キャストのユアン・マクレガー、ロバート・カーライルもみんなスコットランド出身。シックボーイ(ジョニー・リー・ミラー)が好きな007シリーズのショーン・コネリーもスコットランド出身。「スコットランドで一番汚いトイレ」ってのも出てくるし(実際ハンパじゃなく汚いので要注意!)、その逆に、悲しいほど美しいスコットランドの荒野の景色も登場する。
仲間をそんな荒野に連れ出したトミー(ケヴィン・マクキッド)が「この国を誇れ!」と叫ぶ。レイトンはスコットランドを徹底的に罵倒する。「こんな国クソッたれだ。最低な国民、人間のカスだ。みすぼらしくて卑屈でミジメで史上最低のクズだ。みんなはイギリスをバカにするが、そのイギリスの領土だ。何の価値もない国を占領するような落ちぶれた国の子分だ。そんなドツボで新鮮な空気を吸って何になる?」 イギリスの「子分」であるスコットランド、そのスコットランドの最底辺にいるレントンの心の声。実に興味深いセリフです。
ロバート・カーライルは、この映画ではすさまじい「キレっぷり」を見せる飲んだくれのケンカ大好き男ベグビーを演じています。決して好きにはなれそうもないキャラクターですが、彼はヘロインには手を出していません。トミーも最初はヘロインはやっていませんでしたが、恋人に振られてから手を出し、「ドツボ」にはまっていったばかりか、最後にはエイズで死んでいきます。人の良いスパッド(ユエン・ブレンナー)は、筋金入りのヘロイン中毒者。
そんなストレートな生き方を見せる仲間たちの中で、レントンだけはなんとなく「どっちつかず」で中途半端なような気がしてなりません。ヘロインを絶つと宣言したくせに、「睡眠薬で眠くなるまで」のつなぎでヘロインを打っているような具合ですからどうしようもない。地獄のような禁断症状に耐えた末にロンドンで「まっとうな仕事」にありついたのに、仲間たちが押しかけてきて居候をはじめても、それをきっぱり拒めない。ヘロインも「これで最後」と言いつつ、完全にはやめることができない。最後の最後に、彼はようやく自分で自分のドアを開けて、新しい一歩を踏み出していくのですが…。にこやかな笑顔を浮かべて…。
“Trainspotting”とは、列車のナンバープレートの収集、いわゆる「鉄道オタク」を指しているのだそうです。原作者によれば、「駅の構内でキョロキョロと列車を確認する姿」がドラッグ中毒者のしぐさに似ている、のだとか。この映画の主人公は「ヘロイン」なのですね。
「トレインスポッティング」>>Amazon.co.jp
そういえば、ダニー・ボイルって、「ザ・ビーチ」ですよね。「ザ・ビーチ」はあまり期待しないで見ましたが、ディカプリオがいい演技してて、掘り出し物の映画でした。「トレインスポッティング」があまりにも衝撃的で、以後の作品はいまいちパッとしなかったもので。
主演はユアン・マクレガー。今やスター・ウォーズのオビワン・ケノービ役にはまっていますが、そもそもはこの「トレインスポッティング」で一躍スターダムにのしあがったのでした。丸坊主でヤク中毒。社会に背を向けて生きる若者。そんな役の方がユアン・マクレガーには合う…と思ってしまうのは、この映画のレントン役が強烈な印象を残していたからでしょう。イギー・ポップの“Lust For Life”をバックに、冒頭で街を突っ走るレントンの姿に彼自身のモノローグがかぶさる。「人生を選べ、キャリアを選べ、家族を、大型テレビを、洗濯機を、車を選べ。健康を、低コレステロールを、保険を選べ。友人を選べ。未来を選べ。 それが“豊かな人生”。だが俺はご免だ。豊かな人生なんか興味ない。理由なんてない。ヘロインだけがある…」
「トレインスポッティング」はイギリス映画ですが、実は舞台はスコットランドです。スコットランドは、現在は「イギリス」(United kingdom of Britain)の一部ですが、もともとは「イングランド」とは別の国。かつてイングランドがスコットランドを攻めてきた時には、ウィリアム・ウォレスというスコットランドの英雄がイングランド軍に勝利したこともありました(>>「ブレイブハート」)。
だから、今でもサッカーやラグビーでは「スコットランド・チーム」として戦うし、「スコットランド人」は「イギリス人」と呼ばれることを嫌ったりするわけです。この映画の原作者アーヴィン・ウェルシュも監督のダニー・ボイルも、キャストのユアン・マクレガー、ロバート・カーライルもみんなスコットランド出身。シックボーイ(ジョニー・リー・ミラー)が好きな007シリーズのショーン・コネリーもスコットランド出身。「スコットランドで一番汚いトイレ」ってのも出てくるし(実際ハンパじゃなく汚いので要注意!)、その逆に、悲しいほど美しいスコットランドの荒野の景色も登場する。
仲間をそんな荒野に連れ出したトミー(ケヴィン・マクキッド)が「この国を誇れ!」と叫ぶ。レイトンはスコットランドを徹底的に罵倒する。「こんな国クソッたれだ。最低な国民、人間のカスだ。みすぼらしくて卑屈でミジメで史上最低のクズだ。みんなはイギリスをバカにするが、そのイギリスの領土だ。何の価値もない国を占領するような落ちぶれた国の子分だ。そんなドツボで新鮮な空気を吸って何になる?」 イギリスの「子分」であるスコットランド、そのスコットランドの最底辺にいるレントンの心の声。実に興味深いセリフです。
ロバート・カーライルは、この映画ではすさまじい「キレっぷり」を見せる飲んだくれのケンカ大好き男ベグビーを演じています。決して好きにはなれそうもないキャラクターですが、彼はヘロインには手を出していません。トミーも最初はヘロインはやっていませんでしたが、恋人に振られてから手を出し、「ドツボ」にはまっていったばかりか、最後にはエイズで死んでいきます。人の良いスパッド(ユエン・ブレンナー)は、筋金入りのヘロイン中毒者。
そんなストレートな生き方を見せる仲間たちの中で、レントンだけはなんとなく「どっちつかず」で中途半端なような気がしてなりません。ヘロインを絶つと宣言したくせに、「睡眠薬で眠くなるまで」のつなぎでヘロインを打っているような具合ですからどうしようもない。地獄のような禁断症状に耐えた末にロンドンで「まっとうな仕事」にありついたのに、仲間たちが押しかけてきて居候をはじめても、それをきっぱり拒めない。ヘロインも「これで最後」と言いつつ、完全にはやめることができない。最後の最後に、彼はようやく自分で自分のドアを開けて、新しい一歩を踏み出していくのですが…。にこやかな笑顔を浮かべて…。
“Trainspotting”とは、列車のナンバープレートの収集、いわゆる「鉄道オタク」を指しているのだそうです。原作者によれば、「駅の構内でキョロキョロと列車を確認する姿」がドラッグ中毒者のしぐさに似ている、のだとか。この映画の主人公は「ヘロイン」なのですね。
「トレインスポッティング」>>Amazon.co.jp
わかりやすい解説ありがとうございます
コメントいただきありがとうございます。
いい映画ですよね。
こんなはじけた映画を、また見たいです。