カクレマショウ

やっぴBLOG

「スティング」─これぞ「映画」。

2009-05-14 | ■映画
"THE STING"
1973年/米国/129分
【監督】 ジョージ・ロイ・ヒル
【脚本】 デヴィッド・S・ウォード
【出演】 ロバート・レッドフォード/ジョニー・フッカー
    ポール・ニューマン/ヘンリー・ゴンドルフ
    ロバート・ショウ/ドイル・ロネガン
    アイリーン・ブレナン/ビリー
    ディミトラ・アーリス/ロレッタ

最近、やたらと「スティング」のテーマソング(「エンターテイナー」)を使っているコマーシャルが多いような気がします。キリンの「一番搾り」とか日通の「エココンポ」とか。テレビで耳にするたびに、映画を思い出してしまう。

わざと音程をずらしたピアノ(ホンキートンク)による演奏と言われているあの軽快なメロディーは、あの頃(1930年代)の米国(="Good Old Days")の「明」の部分を象徴しています。じゃ、「暗」の方はと言えば、私にとっては、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」の、エンニオ・モリコーネによる楽曲に代表させたいところ。同じ時代を描いているのに、この二つの映画の時代の切り取り方の違いはどうだろう!

「スティング」には、「暗」の部分は微塵も出てきません。そもそも、当時、暗黒街を銃の力で仕切るギャングがはびこる一方で、「コンマン」と呼ばれる詐欺師たちも活躍していた。こちらは「頭脳派」を自認し、大がかりな詐欺の手法で張り合っていました。この映画は、彼らが暗黒街のボスをまんまとカモにする話ですが、したがって、派手な銃撃戦も、麻薬の取引も一切出てきません。

ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードは、あの名作「明日に向かって撃て!」以来の共演。このコンビは最高ですね。ポール・ニューマンが演じるヘンリー・ゴンドーフは、30年のキャリアを持つ伝説的詐欺師。かつての友人(詐欺仲間)を殺された怒りから、フッカーの頼みを聞き入れ、一世一代の大仕事に着手する。ポール・ニューマン、渋い。渋すぎる。その一挙手一投足がすべて格好いいのです。

対するロバート・レッドフォードが演ずるのはジョニー・フッカー、こちらはまだ駆け出しの詐欺師。冒頭、けっこう手の込んだ詐欺で金を奪った相手がたまたまギャングのボスだったことから、師匠と慕う仲間を殺されだだけでなく、彼自身も、命を狙われる羽目になる。

女性陣では、まずアイリーン・ブレナン演じる「女伯爵」ビリー。表向きは屋内遊園地の経営者だが、実は娼婦の元締め。ゴンドーフをそこに住まわせ、彼から「女伯爵」と呼ばれて信頼されている。

そして、ディミトラ・アーリスフッカー演じるのがロレッタ。町の小さなレストランで働いている。常連のフッカーがさりげなく誘っても、つれないそぶり。ところが、明日はいよいよ大仕事という夜、不安にさいなまれるフッカーが彼女の部屋を訪れる。その時のフッカーのセリフ、男なら一度は口にしてみたい言葉ですなア…。

ビリーもロレッタも、決して人目を引く容姿ではないけれど、ゴンドーフとフッカーを支え、助ける重要な役回りです。

さて、映画の「章立て」は次の通りです。

The Players - "プレイヤーたち"
The Set-Up - "段取り"
The Hook - "引っ掛け"
The Tale - "作り話"
The Wire - "電信屋"
The Shut Out - "締め出し"
The Sting - "とどめの一撃"

列車内でのポーカーゲームのだまし合い、そして、競馬中継を使った大がかりな「仕掛け="sting"」は、あまりにも見事すぎて、よくできた芝居を感じさせます。壮大な作り物。その舞台にカモを乗せて、エンディングに向かって芝居は進む…。そのカモがもし善良な一市民だったら、もちろんこの映画は成立しません。だまされてカネを奪われたボス(=ロネガン)が詐欺師の仲間を殺す。彼への復讐に燃える詐欺師たちが、昔の仲間を含めて、続々と集まってくるのです。

ところで、人をだまして金品をかすめ取るのが「詐欺」ですが、「だます」って、いったいどこまでが犯罪なのだろう? 悪い奴を懲らしめるために「だます」のは、犯罪とは言えないのでしょうか?そんなことはありませんよね。この映画は、まさに、そんな悪い奴をとっちめる「勧善懲悪もの」なのですが、考えてみれば、懲らしめる側(主人公側)がしていることも「詐欺」には違いない。そういう意味では、単純に勧善懲悪といえないところも、この映画の魅力ではある。

「義侠心」による復讐作戦と並行して、フッカーに目をつけ、執拗に追ってくるスナイダー刑事の存在が、この映画のストーリーをさらに豊かなものにしています。ゴンドーフにとっては、また一つ仕掛けなければならないことが増え…。しかし、そういう何重もに張り巡らされた伏線が、最後のどんでん返しに生きていくのです。

そう、最後は、観客自身も強烈な"sting"にしてやられる。これは全く罪にならない「だまし」。胸のすくような鮮やかさで観客を煙に巻いて、スクリーンは閉じられる。あまりにもシンプルな言い方ですが、「映画見たなあ!」と思わせるような映画、それが「スティング」です。

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