カクレマショウ

やっぴBLOG

「キレる」老人

2007-11-20 | ■社会/政治
そもそも「キレる」という言葉自体が嫌いです。やくざの世界を思い起こさせます。一般人がふつーに使うべき言葉ではないと思う。

しかも、「キレる」という言葉を使う、あるいはあてはまるのは血気盛んな若者の特権かと思っていたら、そうでもないらしい。最近は「キレる老人」も多いのだそうです。

朝日新聞の連載「キレる大人たち」への反響の中で、60~70代の人から暴言や暴力を受けたという訴えが多いという記事(2007年11月14日付け)には考えさせられました。

カーブでバックしてきた軽トラックにクラクションを鳴らしたら、運転していた70代くらいの白髪の男性が信号待ちでクワを持って威嚇してきた、とかスーパー内に犬を放していた60~70代の男性に外に出すようにお願いしたら、「バカじゃねえの」といきなりこづかれた、といった「事例」が紹介されています。私自身はそういう「被害者」になったことはありませんが、とある窓口で、突然怒り出した高齢者を目撃したことはあります。本人の落ち度らしいのに、決してそれを認めようとしない。とにかく自分の主張(というよりわがまま)を押し通そうと、公共の場で声を張り上げる。このうえなく醜い光景ですね。

まあ、これが「老人」でなかったらありがちな光景かもしれない。しかし、現実には、そうやって「キレ」る姿をさらす老人が増えているというのです。「何が起こっても悠然と構え、決して声を荒げることなく穏やかに余生を送る」というイメージからほど遠いお年寄りの姿。そういう姿を日常的に見てしまうなんて世の中、歴史的にもあまり見られなかったのではないでしょうか。

漫画に出てくるような近所の「カミナリおやじ」は確かに昔からいました。でも、彼らは子どもたちを叱ることはあっても、大人社会の中では節度をわきまえた老人だったのではと思います(多少「偏屈で変わり者」という印象はあったとしても)。今の「キレ」る老人は、節度どころか世間に醜態をさらしているという自覚さえない。

私たちの心の動きや感情に関わる脳内物質には、ドーパミン(「快」に関わる脳内物質)、ノルアドレナリン(ネガティブな気持ちを引き起こす脳内物質)などがよく知られていますが、もう一つ、セロトニンというのがあって、これは平常心をもたらす脳内物質なのだそうです(All Aboutより)。セロトニンの分泌が少ないと、ストレスに弱く、ちょっと嫌なことがあると平常心を失ってしまう。逆に多ければ、ストレスに耐えることができ、冷静な心を維持できるのだとか。つまり、「キレ」る人というのは、セロトニンの分泌が悪い人なのかもしれません。セロトニンは、「不規則な生活を送っていたり、日光に当たる機会が少ない」と、分泌が少なくなるのだそうです。そりゃ、若者がそういうことならわかるような気もしますが、早寝早起きで規則正しい生活を送っているはずの高齢者までが「キレ」やすくなっているというのは、どういうことなのか。

記事では、『暴走老人!』の著者・藤原智美氏が、「言葉の力」が弱まったせいだと指摘しています。つまり、

 1 他者や社会のことを考える
 2 自分の感情のありか(例えば、なぜ、怒っているか)を理解する
 3 人とかかわる

このいずれの言葉も弱まってしまったために、人に怒りを伝える適切な言語的スキルがない分、感情が激しく露出して、「キレ」るのだと言います。う~ん、やっぱり言葉の力か! 言葉の使い方については、一番得意とするのは年寄りだろうと思っていましたが、それもそうでもなくなってきたか。そうだとすれば、子どもたちはいったい誰から言葉の使い方を学んでいったらいいのか。

「キレ」る老人の出現、実は根は深いのかも。


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