カクレマショウ

やっぴBLOG

「ベンチャーキッズ in 八戸」に見る起業教育の大切さ

2007-08-01 | └キャリア教育
昨年度から始まった、県の商工労働部主催による体験型起業家教育モデル事業。小学5年から中学2年までを対象とし、プログラム自体は、東京のセルフウィングという会社が作成したプログラム(「ベンチャーキッズ」)を利用しています。

要するに、会社を立ち上げ、事業(製造・販売)計画を立て、必要な資金を銀行から融資してもらい、商品を製作して街頭で実際に販売してみるという、商業活動の一連の流れを体験してもらおうというものです。

今年は、7月27日(金)~28日(土)の2日間の日程で、八戸市で実施されました。1日目でマーケティング、事業計画作成から借入、材料の仕入れ、商品の製作までを行い、2日目に販売と決算を行うという流れになっています。1日目の様子を見に行ってみました。

一般募集で集まった24名の子どもたちが、まずは近くの中心商店街でマーケティング調査。そのあと5つのグループに分かれて、まずは「会社」を立ち上げます。限られた時間の中での取組ですので、「商品」については予め指定してあって、「八幡馬根付つきストラップ」、「えんぶり烏帽子のやじろべえ」、「木工パズル」、「南部裂き織りの壁掛け」、「コースター」の5種類。いずれも八戸(南部)地方の特産品をアレンジした商品で、簡単な作業ながら、「製作する」というプロセスもプログラムに組み込んであります。

社長や会計マネージャーといった社内での役割を決めたら、詳細な事業計画を立てます。テキストをのぞいてみると、原価計算やら利益率やら、やや小学生には難しいかなという感じもありましたが、ちゃんと教え合いながら進めていました。

で、事業計画に基づいて、いよいよ資金の借入。待ちかまえるのは、本物の銀行マン。依頼してわざわざ来てもらっているのです。緊張の面持ちで銀行の融資担当者の前で自分たちの事業計画を説明する子どもたち。しかし、「現実」は厳しい。この計画じゃとても融資できない、といったん突っ返されるのです。

再度知恵を絞って、修正した計画書をおそるおそる提出します。今度はOK!融資してもらえることになりました。銀行員の方が、厳しく優しく子どもたちに接している姿を見て、なんだかとてもじーんとしました。「大人が真剣に向き合ってくれている」ことを、子どもたちは敏感に感じ取っているようでした。100円単位、10円単位の金額を一つ一つチェックし、電卓を使って合計金額を確かめてくれる。本当の銀行で扱う金額とはケタが違っても、お金の大切さ、お金を借りて「仕事」を始めることの難しさが、そんな姿から十分に伝わってきます。



借用証書を書いて、利子を含めた事業費(だいたい1万円から2万円位でした)を借りて、仕入れ計画書を作って部品を仕入れたり、道具をレンタルする。商品を製作し、ポスターを書いて販売の準備が本格化していきます。

翌日の販売の様子は見られませんでしたが、担当の方に話を聞くと、どのグループの売れ行きも順調で、中には一人当たり2,000円以上の利益を得たところもあったという。このプログラムでは、利益は子どもたちに分配されることになっています。実は、販売して儲けて終わり、よかった~で終わらないところがこのプログラムの大きな特徴でもあります。たくさん利益を得られたグループ、そうでもなかったグループと、「差」が出ることを感じてもらうこと。なぜ「儲ける」ことができたのか、あるいはできなかったのかを、結構な時間をかけて子どもたち自身にふりかえってもらうのです。

こうした起業体験・商業体験活動は、「金儲け」のテクニックを学ぶ場ではありません。確かに、お金は職業生活を送る上で欠かせないものですので、その価値を学ぶ場としての意味はあります。しかし、決して「それだけ」ではない。たとえば、今回のプログラムでも、最初にやる「会社について知ろう」という部分では、「話を聞いて理解する・自分の考えを伝える」という能力、「商品を企画する」では「アイデア・発想力を磨く」、「お金を借りる」では「プレゼンテーション力をつける」、「借入金返済」では「約束を守ることの大切さを知る」といったように、社会人・職業人として必要な様々な力を身につけることができるような仕掛けになっています。

起業家教育、起業教育というと、まだまだその本当の目的が誤解されている向きがありますし、教育活動の中で「分け前をもらう」なんてとんでもないと眉をひそめる人もいるかもしれません。しかし、一人前の大人になるための教育活動が「机上の論理」だけで行われていいはずがありません。実践や体験を通して(この場合は本物のお金を使って、実際に販売をしてみて)しか身につけることのできない力もたくさんあるはず。何より、儲けた分は自分のものになるという、そのくらいの「遊び心」があってもいいと私は思います。

たった2日間の体験ですが、子どもたちには、とてもいい「大人体験」の機会になったのではないかと思います。決して、「楽しかった~」だけはなく。

 

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2 コメント

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Unknown (ライダー)
2007-08-06 18:22:48
やっぴさんこんにちは。
ベンチャーキッズに参加した現地サポーターの一人です。
ベンチャーキッズで検索してたどり着きました。

子供達にとってホントにいい体験になった以上に参加した大人の一人としてホントにいい経験をさせて戴いたように感じています。

参加された子供さんの感想に「儲けが少なかったが大切なのはプロセス」「だけど次はもっと儲けたい」的な感想があったのですが、単に儲けたいというのではなく、儲けるためにはどうすればいいかということを集団・組織で共同作業をするプロセスで体感できたことが貴重だったように思います。

私自身もこうした経験が社会人になる前にあればよかったと切実に思ったところです。

ブログ頑張ってくださいね。ではでは。
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はじめまして (やっぴ)
2007-08-07 12:48:30
ライダーさん
コメントありがとうございます。

当日、スタッフの皆さんとはあまりお話しできなくて残念でした。あのプロセスは、本当によく考えられていると思いました。さすがプロですよね。

また、「学校の先生」じゃない大人がああいう形で子どもたちに関わっていくのは、とても大切だと思っています。

また別の形でお会いすることになるかもしれませんね。その節はどうぞよろしくお願いします。

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