さぶりんブログ

音楽が大好きなさぶりんが、自作イラストや怪しい楽器、本や映画の感想、花と電車の追っかけ記録などをランダムに載せています。

【読書録】消えた屍体 ~ 死と消失と発見の物語

2020-11-18 23:49:20 | 読書録

ジャンニ・デイヴィス[著]/堀口容子[翻訳・著]

これは、若い頃に入っていた合唱団で知り合った、私が尊敬してやまない先輩の訳書で、発売された直後にすぐに購入したのだが、サイズが大きくて持ち運べなかったことから、なかなか読めずにいたが、あらためて読み直し、最後は加速度的に読むスピードが上がり、このほど読み終わった。

読み終わって、まるでヨーロッパと南北アメリカ大陸を中心とする古今東西のいろんな時代を旅しているような不思議な感覚にとらわれ、最後は訳者自身の加筆部分である織田信長を読んで、まるでオデュッセウスがふるさとに帰れた時のような気分になった。

本書に採り上げられた28人のうち、有名な人もいれば、そうでない人もいる。私は、あまり知られていない人の稿を読んだ時の方が、より一層不思議な感覚にとらわれたような気がする。まるで新しい人生との出会いがあったかのように。

個人的には、アムンセン(アムンゼン)を採り上げてもらえたのがすごく嬉しかったかなぁ。南極探検におけるスコット隊の悲劇はあまりにも有名で教科書にも採り上げられていたが、アムンセンに関する情報は学校ではほとんど教えてもらえなかった。

私はつねづね、スコット隊の悲劇を知ることは教育上大事なことであるが、アムンゼンのことももう少し採り上げるべきではないかと考えており、以前、雑誌でアムンゼンの勝因を採り上げたものを読んだ時は、非常考えさせられたものである。

▼アムンゼン隊の勝因は?

https://blog.goo.ne.jp/y-saburin99/e/9f02a5dbc99d143232d7e176ddeec539

ただ、アムンセンその人を考えた場合に、南極だけの人ではないことから、この本を読んで、その人となりに接することが出来て本当によかった。

南極では探検に成功したアムンセンにも、やがて最期の日は来るのであって、それはかつての仲間(仲たがいしていた)の救出に向かう中で行方不明になったものであった。その生きざまは最期までノルウェーの国民的英雄と呼ばれるにふさわしいものであったと私は思う。

アムンセンに限らず、行方不明になった人の最期というのはミステリアスであり、さまざまな思いをかきたてるものである。サン=テグジュペリにしてもグレン・ミラーにしてもしかり。志に向かって突っ走っている中での消息不明というのは、やりきれない思いがつのる。

他、初めての動画撮影者に関わるエジソンの影、以前ミュージカル映画「エビータ」にも採り上げられたエバ・ペロン、死んだのに墓から引きずり出されて裁判を受けさせられた教皇フォルモスス、復元されたリチャードIII世の顔などがとても印象的だった。

最後の織田信長は、ちょうど「麒麟がくる」でも、新しい信長像が示され、とてもHOTな人であるが、信長の経済や事業のセンスは間違いなく父から受け継いだもの・・・という箇所に、感嘆した。また、確かに本能寺の変の時、信長の遺体が見つからなかったことで、きっとすっかり燃えて分からなくなってしまったんだろう・・などと安易に考えていたが、その後の可能性について細かく言い伝えを調査されているところが、他書で採り上げられることのほとんどない部分だけに、大変価値があると思った。


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