2026年の核不拡散条約(NPT)再検討会議に向けた第1回準備委員会が11日ウイーンで開かれたが、各国の対立が続き、議長総括草案を公式文書として残せないという異例の事態で閉幕した。これもウクライナ戦争の影が色濃い。ロシアの核の脅しに対する批判が巻き起こると同時に、ロシアによる反発が起こったからである。世界はロシアによる核使用の危険性に直面している。ロシアの著名学者で外交防衛評議会の名誉議長を務めるセルゲイ・カラガノフ氏(70)が、戦術核の限定的使用の必要性を訴える論文を発表した。カラガノフ氏は「世界規模の核戦争を回避するため、侵略行為の全てに報復する先制攻撃の用意がある」と、核による先制攻撃を主張する。また、彼はこの核使用でも米国主導による西側の報復はないと強調したのである。これまではロシアが核を使用すれば、西側が報復の核を使用するから、それが核の抑止力になっていたと多くの人が思っていたのである。だが、ウクライナ戦線におけるロシア軍の敗退の様相に、ロシアは限定核使用論を持ち出したのである。これは極めて危険な考えである。これが正当化されれば、北朝鮮などの追い込まれている国がいつ、核を使用するか分からないのである。(くちなし亭、2023.08.13)
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