金属疲労を起こしたケインズ先生。

私たちの世代が大学で学んだ重要な経済学はケインズ理論でした。不況期に有効需要を創出し、つまり、じゃぶじゃぶと財政を出動し、不況を脱出する。これは経済が落ち込むたびに、政治家により発せられる言葉です。けれど、そのケインズ理論が機能しなくなりました。日本では失われた10年の間、政府は大量に国債を発行し、有効需要を作り続けました。日銀も異常な金利政策を採り続けたのですが、全く効果を発揮しませんでした。なぜでしょう。日本がやっと回復の兆しを見せ始めたのは、小泉政権によるケインズ政策の放棄以後のことです。ケインズ政策が有効なのは不況のときに財政出動し、好況時には不況のときに支出した財政の回収を行うバランス政策なのですが、日本の政府も、諸外国の政府も、これまで好況時であったとしても、税収のすべてを使ってしまうということを繰り返してきたわけです。だから、高速道路が造り続けられ、橋がかけ続けられたわけです。つまり、ケインズ政策をゆがめてきたわけです。その結果、各国政府の発行する通貨量は天文学的な規模にふくらみ、多少の出し入れで調整できる限界を踏み越えてしまったのです。

Y-FP Office Japan