風塵社的業務日誌

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ウシジマくん

2020年03月25日 | 出版
月末も近づきつつ、金欠で発狂しそうなきょうこの頃、R社M社長から電話がある。なんでも、M社長が以前お世話になったことのある弁護士さんの事務所にあいさつに行ってみたら、弊社で復刊した方の『反日革命宣言』(元はR社刊)が飾られており、「これはいい本だから、獄中のヤクザ屋さんに差し入れしているんだ」と、その弁護士さんがおっしゃっていたとのことだ。わざわざ、そのご報告のお電話である。
もちろん、ありがたい話だとは思うし、小生にしてみればうれしいものではあるものの、しかし、ヤクザ屋さんがあれを読んでどうするのよ?とも考えてしまう。また一方で、そんな読者がいるのならば、いっそのこと『腹腹時計』の技術編も全部掲載してやればよかったとも想像する。それでBの作り方を覚えれば、ヤクザ屋さんにとっても都合のいい話じゃないのだろうか。ただし、『腹腹』の記述には、何ヶ所かミスがあり、そのとおりにやると誤爆するとも言われている。それがどこなのかを小生は知らないが、ヤクザ屋さんがもしもそのとおりにBを作ってみたら、さらに指がなくなっているかもしれない。
冗談を記している場合なんかではまったくなかった。『反日革命宣言』に感動したヤクザ屋さんがいれば、お金でも借りに行きたいところである。もっともそんなことをしたら、『闇金ウシジマくん』(小学館)の世界に陥ってしまい、そのうち小生は東京湾でお魚のエサにでもなってしまう。そういえば10年ほど前だったか、ヤミ金のおにいさんに『ウシジマくん』のことを聞いてみたら、やはり読んでいるとのことで、さもありなんと思ってしまった。彼らはいまも元気だろうか。なかなか面白い人たちであったのだ。
この面白いという表現が妥当かどうかはさておき、弊社が彼らからお金を借りていたわけではなかったので、わりとフラットな付き合いであったと思う。当時はあまりにドタバタしすぎていて経緯を明確に思い出せないのだけれども、彼らからP舎がお金を借りていた。それで、弊社がその保証人のような形になっていたんだっけな。とにかく、P舎の借入状況が滅茶苦茶で、ヤミ金会社は彼らを含めて2、3社、そこに詐欺師がからみ、そのうえ合法なんだけどヤミ系の会社、さらには合法であり合法系の会社と入り込んでいて、最初はなにがなんやらわけがわからんという状況となる。
そんな世界に引きずり込まれてしまったので、その後弊社が立ち行かなくなるのも当然といえば当然ではあるが、それにしても、あのときの危機をくぐりぬけ、現在までよくも生き延びたものよと自身をほめたくなるというものだ。しかし、それを小生の如才なさによるものだと自慢してもいいのだけれども、これには裏がある。実は、小生の前任者で弊社の創業者であったやつが、街金ちゃんからお金を借りるのが得意としていたのであった。お金に困ると、小切手を持っては街金に飛び込んで借入を起こすことになる。最初のうちはまだ質のいい貸主であったとしても、そんなことを繰り返すうちに資金繰りはドンドン悪化するに決まっているし、貸主の質は悪くなっていく。つまりは金利が高くなっていくという意味である。
そして最後は、当然ながらドン詰まる。たしか、12万いくらだったかのお金の調達ができなくなるのだけれども、その保証人が小生であったのだ。そのため、ある街金ちゃんの事務所に小生が一時監禁されることになった。そのときに起きたある出来事を、弊社刊『水平線の向こうに』に実は少しだけ記していて、「この金を持って、おまえ逃げろ」と某氏に言われ、それを断るのだけれども、そのくらい切羽詰った状況に追いやられたのだ。そんなこんなでヤミ金さんとは縁があり、P舎の問題が生じたとき彼らがどういう手口を使うのかとか、どういう口上をするのかというのは学習ずみであったというだけである。
さらには、そうして弊社がつぶれそうだとなると、あちこちの街金ちゃんから営業の電話がジャカスカかかってくるのである。そんなものにいちいち対応するのも面倒でしょうがない。そこで「すみません、社長はいま出ていますので、出先の03-3581-4321に電話してもらえませんか」と、警視庁の番号を伝えることにする。すると、ある街金業者からの折り返しで、「営業がいらないなら、いらないと断ればいいだろ。なんで警視庁なんかに電話させるんだよ」と泣きの電話がかかってきたので、これには笑いが止まらなかった。
そこで、最初に触れたヤミ金のおにいさんたちにもどる。酒を飲みつつだったかどうかはさておき、彼らに説明した記憶がある。「あなたがたは、私がヘンに落ち着いているのが不思議でしょ」と前置きを述べてから、ここまで綴った体験があるので、今回もその焼き直しとしか受け止めていないのだと説明し、彼らの理解もそれなりに得られたのではないかと想像する。そしてP舎が倒産したあと、彼らにグッバイを告げることになった。それは池袋の飲み屋であったのだけれども、その後彼らはどうしていることだろうか。低利ならばお金を借りたいところではあるけれども、ただし、借りても返すことはないだろう。しかし、その彼らはなかなか面白い人たちであったと、語弊を恐れず再び記しておく。

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