風塵社的業務日誌

日本で下から258番目に大きな出版社の日常業務案内(風塵社非公認ブログ)

深大寺へ

2015年06月22日 | 出版
ある日妻に「肖像写真でも撮るか?」と聞いてみると、満面の笑みを浮かべて「それはいいねえ」と答える。女の自意識というのはよくわからんねえと思いつつも、調布に住む元カメラ屋のAさんに撮影をお願いしてみることにする。二つ返事でOKだったので、某日、つつじヶ丘へ妻と一緒に行くことになった。
副都心線で新宿三丁目に出て、そこから京王の新宿駅まで歩き、快速に乗ってつつじヶ丘に着いてみたら1時間ほどだ。ずいぶん便利になったねえと感心してしまった。改札前で待っていたAさんと落ち合い、バスでまずは神代植物園へ。千歳烏山から深大寺にかけてたくさん寺社仏閣が並んでいるらしい。Aさんの説明によると、関東大震災のとき被災して江戸の町から逃げてきたものが多いそうだ。
神代植物園に着いてみれば、想像していた以上に立派なところで、これまたびっくり。高い木が生い茂っていて、おそらく武蔵野の風情を残しているのだろう。そこそこお客さんも入っているけれど、新宿御苑ほどのにぎわいではない。のんびりできそうで、これはいいところがあったものだ、まさに隠れスポットである。入場料500円を払って中に入ってみる。
妻の写真を撮るのが第一義なのでさほど観光気分にはなれないのだけれど、園内の地図をボケッと眺めてから、三人でぶらぶら歩き始めた。そろそろアジサイの季節なんだろうけれど、まだ満開というほどではない。歩きつつ、適当なスポットで妻の写真を撮ってもらっていたら、ハス池の前に出た。ちょこちょこ咲いているハスもあり、立派なカメラをもった初老の人たちが熱心に撮影している。
その姿を眺めつつ、「おれさあ、花の写真とか大ッ嫌いなんだよ」とAさんが小声でささやくから笑ってしまった。小生もまったく同様で、エロ写真くらいしか関心がわかない。「ガキのころ、木とか愛でるやつって理解できなかったんですよ。裏山には木がたっぷり茂っているんだから、それ見ていたら充分なのに、なんでわざわざ庭先で木なんか育ててんのかなあと、不思議に思っていました」と小生が言うと、「歳取るとさあ、そういうことに愛着が湧くんだよなあ」とAさん。
ところで、Aさんはカメラ屋を畳んだときに、機材は売り払ってしまったそうだ。そのため、その日はわざわざ某A映画監督からデジカメを借りてきたらしい。カメラを眺めつつ「A監督、ずいぶん立派なカメラ持っているんですねえ」と小生が聞くと、「そうなんだよ。生活保護のくせに生意気だよなあ」「うん、生意気だ」と相槌を打つことになる。しかし、A監督の撮影もそれなりに進んでいるようなので、それはなによりである。しかし、A監督のカメラである。美しいものは醜く、醜いものは美しく写ることだろう。
ハス池を抜けるとバラ園に出る。その向こうにある大温室は現在改修中とのことで、職人さんの働いている姿が見える。バラ園の左手には大きなコンクリのテラスがあって、なんだかローマ時代の風景のようだ。テラスに上がってみると、風の吹き抜けが気持ちいい。そこでゲームを楽しんでいるおばあちゃんもいる。ここで酒を飲みながら囲碁でもやったら気持ちいいだろうなと思う。
少しそこで腰掛けてから、今度は芝生広場へと向かってみる。もぐらの穴があったので、妻がなにやら言っている。久しぶりに見るもぐらの穴だ。Aさんも「これもぐらの穴だろ」と言うので、「どうせ我々、陽の当たらないもぐらみたいな人生じゃないですか」「まあ、そうだよなあ。モグラ叩きはしたことがあるけど、しかし、もぐらの穴は久しぶりだなあ」
芝生広場には売店があったので、妻に缶ビールを買ってもらうことにする。その売店の脇に、ニュートンの木やハンカチの木が植えられている。おそらく小石川植物園から移植したものだろう。ハンカチの木がどういうものか、知ったかぶりの知識を妻がAさんに偉そうに説明している。ほんまにこいつはなんで説明の仕方が偉そうなんだろうねえと、ビールを飲みつつ聞きながら、そう思わざるをえない。
小生がビールを飲み終えてから、深大寺に向かうことになる。神代植物園の南側の出口を出れば、すぐ深大寺の裏側につながっているのだ。そういえば、その日の朝の朝日新聞朝刊の東京版に深大寺そばの記事が出ていた。小生のような信州人にしてみれば、深大寺そばをどう評価すべきかは難しい問題である。決して、信州そばを凌駕するほどにうまいものでもない。じゃあ、バカにできるかといえばそうでもない。したがって、どうなのよということになる。
とりあえずお寺を一回りし、妻は賽銭を投げてなにやら一生懸命に拝んでいる。Aさんと小生には縁遠い精神性ではあるが、それはそれで妻の勝手である。境内にウルトラマンのポスターを掲げた売店がある。どうしてウルトラマンなのと疑問に感じて眺めれば、須賀川のPR店のようだ。その地の出身である円谷英二にちなんでウルトラマンということなのだ。
売店をのぞいてみたら、彩りの鮮やかな野菜を安価で販売している。美味しそうだけれど、野菜を背負って帰る気にはなれない。申し訳ないけれど、買うのはやめた。そこで空いていそうなそば屋に入ることにする。

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