東京タワー

昨日は、すでに禁煙してしまったかのようなニュアンスで述べてしまったけれど、決して、まだそういうわけではない。これから、タバコをやめるところなのである。そのうえ、こちらの意志の弱さには、なんぴとの追随も許さないだけの自信がある。そういう卑しいタバコ飲みなので、この先のことは小生にもわからない。
タバコ料金大幅値上げ直前の9/30、会社への行き帰りの朝と晩に、コンビニでそれぞれ１個ずつタバコを買ってしまう。これでハイライト290円時代ともおさらばかと思うと、涙があふれ出てきそうだ。そこから吸い始める１本１本が、かなりいとおしい。30年分の記憶が走馬灯のようによみがえってくる（わけがない）。
10/1（金）は、買いためたタバコを10本ほど吸って、いよいよ土日に突入。この間も会社に出てきて仕事をしていたのであるが、ガムを噛んでタバコを吸わないよう必死の努力が繰り返される。しかし、買いためたうちの一箱はすぐに消費してしまう。消費というものは、なにごとも早く感じてしまうという世間の教訓を味わうことになった。
休み明けの10/4、寝起きの一服と朝食後の一服を終えてから会社に向かうことになる。残りの本数は、いよいよ10本を切ってしまった。まさに、雲散霧消していくわがハイライト。あると思うな、思うが負けよ。まるで人生の縮図のようだ。おかげでガムの消費量が増えていく、増えていく。これなら、タバコを買った方が経済的には安上がりなのではないだろうか。
夕方、仕事を終えてから酒を飲み出すと、急にタバコがほしくなり、Ｐ舎の灰皿に残っていたシケモクに火をつける。体内に染みこむニコチンに、タバコってこんなにうまかったのかと、改めてタバコの偉大さを感じた次第。ついつい、シケモクの消費量と酒の消費量が増えてしまった。
翌10/5、またまた、寝起きの一服と朝食の一服を終えてから会社に向かう。池袋駅で、版元ＭのＳ氏と遭遇。四方山話をしながら後楽園駅で下車し、二人トボトボと会社へと歩いていく。Ｓ氏は、別に禁煙する気はないそうだ。そこでふと、小生の左手が、唇の左側をなでていることに気が付いた。しかも人差し指と中指の二本で唇をなでている。意識していなかったけれど、まるでタバコを口に運んでいるような格好である。ウ～ム、タバコがほしいなあ。
Ｓ氏と壱岐坂下交差点のところで別れる際、「ところでタバコ持ってない？」とたずねたら、「今はあと１本しかないんだよ。クワッハハハハ。自分で買えばいいじゃん」と高笑いで返されてしまう。人間のくずとはああいう奴のことを指すのだろう。しかたがない、我慢するか。
昼過ぎ、Ｙ印刷Ｙ氏がご来社。Ｙ氏は電子タバコを持っていた。試しに吸わせてもらうと、甘い香りが口中に広がるけれど、それほど気持ちのいいものでもない。この味には何種類かあるそうだが、これよりもリアルタバコがほしいなあと、ついつい思ってしまう。ところがＹ氏は普通のタバコも持っている。当然、それもいただくことにし、軽く一服。タバコはうまいなあとしみじみ感じ入ってしまう。
その夜、酒を飲みながらまたシケモクに火をつけていると、Ｐ舎大大社長が哀れんで、ハイライトを一箱恵んでくれた。ありがたや、ありがたや。酒が入ると、どうしてタバコを吸いたくなるのだろうか。これは、大変に困った問題である。もったいないので、そのタバコは会社に置いて帰宅することにした。
そういえば本郷村の村長さんが、昔、こんなことを言っていた。「タバコは健康に害があるから、やめたほうがいいですよ」と親切心から指摘されると、「お前なあ。東京タワーのてっぺんで作業をしている鳶職人のことを考えてみろ。そこで作業をして地上にもどって来たら、やれやれとタバコの一服くらいしたくなるだろ。オレたちも、そのくらい緊張感をもって仕事をしているんだよ！」。ところがご本人、心臓を患ったら、すぐにタバコをやめてしまった。言うことが、いちいち大げさなのだ。だいたい、そんな緊張感をもって仕事に臨んでないし、なんて書いたら村長さんに怒られてしまうだろう。
そこで本日、出社前に本郷三丁目駅前の薬局をのぞいてみると、ニコレットの禁煙ガムを販売しているが、高い。しかも財布の中には日銀の印刷物は入ってなく、銀貨と銅貨ばかりだ。しょうがない、またの機会にしようと、購入を見送ることにした。会社について、とりあえずは、昨日買ってもらったハイライトを一服。よせばいいのに、さらに一服。生きている充足感を味わうことができる。どうせなら、禁煙するのを禁止にしようかしらと思わなくもない。
それよりも、一発当てて、葉巻に変えようかしら。キューバ産の高級葉巻を吸っていたら、気分はチェ・ゲバラで、きっと革命的な企画を思いつくことだろう。嗚呼、ぶっとい葉巻がほしい。
それでもこの数日、かなり節煙にはなっているようだ。