風塵社的業務日誌

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塀の中の経済事情

2009年08月01日 | 出版
極北の地にいる友人から手紙が届いた。以下、その抜粋。

 さて、今回は塀の中の経済事情まず収入源である作業報償金制度についてです。前回報告したように、一日約七時間くらいの私たちの労働は、就労時間に対する時間給として支払われます。その際の時給は、作業の種類及び原則的には習熟度を踏まえた(実態は就業期間を基準にした)作業等工によって決定しており、さらに月々の報償金はこうして算定された(等工基本時給×実労時間、運動や入浴、面接や面会、学習、宗教行事の時間は除かれます)基本給に、作業成績(-4~+7)、就業態度(0~+4)の評価に基づいてその点数ごとに一割が加減算されます。
 例えば私の五月の報償金は、B四等工、時給二二・八〇円、一〇三時間で基本給二三四八円、それに作業成績(0)、就業態度(+1)で基本給の一割が加算されて二五八三円となります。六月は、B四等工、二二・八〇円/時、一二七時間、作業成績(+1)、就業態度(+1)で計三四七五円です。多分私のいる工場では中の上的な額です。
 作業等工は、職種と習熟度(実は就業期間)によると書きました。当所では職種としてA作業(炊場、洗濯などのいわゆる経理作業と各工場の雑役、作業係など)、C作業(昼夜間独居、及び懲罰調査中の室内作業)と、一般工場出役者のB作業があります。ちなみに、給食の主食の量も、この区分に従ってABCと三ランクあります。A作業は一等工まで、B作業は三等工、C作業は五等工が上限で、各等工に要する標準期間もそれぞれ違います。
 また、各等工の時給も年度によって変化しますが、この四年間の私の例を示します。B十等工、一ヵ月約五・二円、九等工二ヵ月約六・四円、八等工二ヵ月約一〇円、七等工三ヵ月約一二円、六等工四ヵ月約一三円、五等工約一六円(〇八年一七・七〇円、〇九年一八・四〇円)、四等工六ヵ月〇五年は一九・二〇円(〇六年は二〇・四四円、〇九年は二二・八〇円)、三等工は上限が〇六年二四・八〇円、〇七年二五・七〇円、〇八年二六・七〇円といったところです。ちなみに〇八年度、A等工は三三・一〇円でした(Aは三等工までに二二ヵ月を要し、その後三等工七ヵ月、二等工八ヵ月、一等工上限となっています)。
 私の場合、移監後四年半以上経っているのにいまだにB四等工なのは、昨年暮れの懲罰により転業・等工の降下(A二からB五等工に。五ヶ月後の今年六月にB四に昇等)したためです。通常何もなければ、作業能力、出来高とは関係なく、等工は上昇します。しかし、この間の職員の説明では、職種を変わった場合、その理由が受刑者責任(懲罰あるいは仕事や工場があっていないなどの理由)による場合には等工が二前後(理由、ケースによる、私の場合二等工下がった)降下する。しかし理由が当局の都合(人材調整や仕事が減ったなど)による場合は変化しない。また、懲罰を受けた者については罰後同じ作業に復帰しても(習熟度に変化はない)等工は下げる、と言われています(懲罰は無条件に等工降下の理由とされ、重複不利益処分がおこなれています)。
 また、「評価」によって基本給に加減算する作業成績、就業態度の評価基準は明瞭ではなく、あくまで「担当職員が判断して決めている。相対評価ではなく絶対評価なので、工場によって高評価が多かったりマイナス評価が多かったりと違いはある」ということです。ちなみに私の場合、現在の仕事に転業した昨年一二月、一ヵ月に二五〇くらいしか製品(それもヘタクソ)を作れなかった時も、五月六〇〇を上手に作れるようになった時も、作業成績は同じ+1でした。一二月私の三倍上手に作っていた友人(二年以上のベテラン)も+1でした。この矛盾を質問すると、「イヤ、出来高だけじゃなく、作業の態度とかも~」と口を濁していましたが、態度は「就業態度(いかにも刑務所らしい評価です)」として、別に採点されています。要するにシステムの主旨であろう生産能力級のパーツをも当局にとって「おりこう度」で評価し、それを公平公正であるべき報償金額に反映させてやるという図式かと思われます。等工もそれに伴う報償金の額も、労働に対してではなく、「当局の覚え」によって左右されるというわけです。
 そうしてささやかに受け取れる報償金ですが、全額自由に使えるわけではありません。現在は、最終額の二分の一を自弁購入などにあてることができます。例えば一〇等工なら二七〇円程度、受刑半年の七等工なら八五〇円程度、受刑一年の五等工で一一〇〇円程度です。加えて「釈放時の報償金の支払いはその年度の刑務所予算に含まれるため、多額な報償金を支払わなければならない長期受刑者の釈放者数は、予算面からも限定されることになる」と入所時の説明を受けました。何年刑務所で働いても、社会で自立して生活できるだけの資金をためることはできないのみならず、それさえもまとまった額になれば、今度は「大金である」が故に、仮釈社会復帰を拒まれるというのです。
 次回は、経済事情、支出の部について報告しましょう。


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