渠(きょ 彼の意)が 一伍一什(いちぶしじゅう)を 話さんとす。
渠とは アメリカ人の日本文学者 デイブ・マッコーリー(46)。
田山花袋の小説『蒲團』を "ふとんの打ち直し" と称して 原作では 妻もしくは細君と呼ばれる 主人公竹中時雄の伴侶に 美穂という名を与えて デイブは 美穂の視点で書き直します。
その小説を挟んで 日本人の教え子 エミに対する気持ちも表すのです。
日本に行くエミを追うように デイブも学会で日本へ行く。
滞在中に 2001年のツウィンタワー事件が起こり 足止めを食らう 逸話もあります。
エミの曾祖父ウメキチの 関東大震災、東京大空襲 の回顧も挿入されます。
田山花袋の『蒲團』が書かれたのは 明治40年(1907年)、 ウメキチ の生まれたのが明治39年。 (この『FUTON』が書かれたのは2003年)
花袋、ウメキチ、デイブ 三人の 若い女に対する 勝手に執着 の物語。
作者の男への観察眼が 冴え渡ります。
田山花袋の『蒲團』は 主人公が 弟子芳子が二年間使った蒲團に包まり その汚れた天鵞絨(ビロード)の襟の 臭いをかいで泣く ところで終わっています。
ところがどっこい "蒲団の打ち直し" では マッコーリーは 棄てたいであろう女弟子の蒲團を 美穂に 打ち直して使うのを前提に 干させるのです。
女は亭主の気持ちを知っても あくまで現実的です。
直木賞受賞作『小さいおうち』 も面白かったけれど 私はこっちの方がもっと面白く思えました。
田山花袋の『蒲團』も 読み直したりして。
若い時は 何のことかさっぱり分からなかった事が 分かる解る。
夫に「オマエニハワカラン」 と言われ続ける 妻の気持ちも 何と良く解ることか。
途中から二冊並行して読んだので 時間がかかってしまいましたが 面白かった、デス。
風呼r
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