・落語名人会 、夢の勢揃い/京須偕充
後に落語専門?のプロデューサーとなる著者が、寄席通いつめて少年時代や、レコーディング・プロデューサーとなってからの落語家との関わり、伝説の名人たちの高座や楽屋での姿などを非常に味わい深い文章でつづった一冊。非常におもしろく、出張の帰りの電車で一気に読んでしまった。私は落語が大好きだが、いにしえの巨人たちのことをCDでしか知らないことが多いため、それを補完する意味でも興味津々だったし、昭和の時代を描写した読み物としても一級品だと思った。特に円生にレコーディングを持ちかけにマンションで赴き、かの大家と対峙する場面は文章は落語的な視点による人物描写が実にすばらしく本書の白眉となっている。
・他人を見下す若者たち/速水敏彦
現代の若者が持つ、他人を軽視しする、すぐにキレる、尊大といった特徴を、現実世界での裏付けのない自尊心という視点で読み解こうとしている本。著者はこれを「仮想的有能感」と名付けている。これがはなはだ根拠薄弱な仮説ということを著者は良く知っていて、まぁ、仮説の前の仮説みたいな感じで書いているのだけれど、その仮説を敷衍するために持ち出される事例はなかなかおもしろく、この仮説を説得力があるものにしている。ただし、ただしここでいう若者は、むしろ現代人と読み替えてもいっこうにおかしくないくらい現代人の特徴をとらえているとも思った。
・人蟻/高木彬光
名探偵神津恭介を一旦退場させ、弁護士百谷泉一郎を登場させた昭和32年の作品。時は松本清張ショックが探偵小説界に吹き荒れている頃だから、それを意識したストーリー自体は本格探偵小説というより、経済ミステリーという感じで、それまでの神津物とはかなり違った趣になっている。もっとも、同時期の神津恭介がまるで百谷泉一郎みたいに行動する「死神の座」でもこうした変化が鮮明にでているから、とってつけた感じはしない。ストーリー的にはキャノン機関、政界の大物、そして百谷の恋愛とけっこう読み飽きないで最後までもっていく。高木作品というと文章があまりに直球ストレートで今読むとちょっと気恥ずかしいようなものが多かったけど、この時期の作品ともなると小説としてもけっこうこなれてきたことを感じさせる。
実はまだまだ読んでいるのだが、とりあえず今夜はこんなところで....。
後に落語専門?のプロデューサーとなる著者が、寄席通いつめて少年時代や、レコーディング・プロデューサーとなってからの落語家との関わり、伝説の名人たちの高座や楽屋での姿などを非常に味わい深い文章でつづった一冊。非常におもしろく、出張の帰りの電車で一気に読んでしまった。私は落語が大好きだが、いにしえの巨人たちのことをCDでしか知らないことが多いため、それを補完する意味でも興味津々だったし、昭和の時代を描写した読み物としても一級品だと思った。特に円生にレコーディングを持ちかけにマンションで赴き、かの大家と対峙する場面は文章は落語的な視点による人物描写が実にすばらしく本書の白眉となっている。
・他人を見下す若者たち/速水敏彦
現代の若者が持つ、他人を軽視しする、すぐにキレる、尊大といった特徴を、現実世界での裏付けのない自尊心という視点で読み解こうとしている本。著者はこれを「仮想的有能感」と名付けている。これがはなはだ根拠薄弱な仮説ということを著者は良く知っていて、まぁ、仮説の前の仮説みたいな感じで書いているのだけれど、その仮説を敷衍するために持ち出される事例はなかなかおもしろく、この仮説を説得力があるものにしている。ただし、ただしここでいう若者は、むしろ現代人と読み替えてもいっこうにおかしくないくらい現代人の特徴をとらえているとも思った。
・人蟻/高木彬光
名探偵神津恭介を一旦退場させ、弁護士百谷泉一郎を登場させた昭和32年の作品。時は松本清張ショックが探偵小説界に吹き荒れている頃だから、それを意識したストーリー自体は本格探偵小説というより、経済ミステリーという感じで、それまでの神津物とはかなり違った趣になっている。もっとも、同時期の神津恭介がまるで百谷泉一郎みたいに行動する「死神の座」でもこうした変化が鮮明にでているから、とってつけた感じはしない。ストーリー的にはキャノン機関、政界の大物、そして百谷の恋愛とけっこう読み飽きないで最後までもっていく。高木作品というと文章があまりに直球ストレートで今読むとちょっと気恥ずかしいようなものが多かったけど、この時期の作品ともなると小説としてもけっこうこなれてきたことを感じさせる。
実はまだまだ読んでいるのだが、とりあえず今夜はこんなところで....。