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音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
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HERRMANN / Hitchcock Movie Thrillers

2007年05月09日 23時58分57秒 | サウンドトラック
 バーナード・ハーマンが担当したヒッチコック・スリラーの中から特に傑作を集めたアルバムです。指揮はハーマン自身、オケはロンドン・フィルという組み合わせですが、ハーマンは「き裂かれたカーテン」でヒッチコックと決別して以来、イギリスに移り住み、なかば悠々自適な生活の傍ら、自作その他の指揮活動をしたりして60年代後半~70年代前半あたりを過ごす訳ですが、その中の一枚がこれという訳です。ハーマンの作品はここ20年くらいくらいの間、再評価の機運が高くかなり作品がサントラ起こしやスコア再演という形でCD化が進みましたが、思えば60年代からこうした形で再録をしていたところをみると、ほぼリアルタイムで揺るぎない評価を得ていた人なのだなぁ....と改めて思ったりします。

 収録されている作品は、「サイコ」「マーニー」「北北西に進路をとれ」「めまい」「ハリーの災難」の5作品で、「北北西」だけはメイン・テーマしか演奏していませんが、他は10分以上のスペースをとり映画の主要な部分を集めた組曲という形で再演されていますから、聴き応えはありますし、作品の概要を知るには十分なものがあると思います。私はハーマン/ヒッチコックの作品というと、確かこれが最初だったと思いますが、このコンビによる作品を入門するには絶好なアルバムであり、まさに幸福な出会いだったと思います。当時の私は映画オタクでしたから、ヒッチコックの作品はけっこうな数みていましたが、「めまい」や「ハリーの災難」は当時まだ未見でしたので、おそらく映画音楽の方を最初に聴いてしまい、その後に映画を観るというパターンを経験したのはこれが初めてだったと思います。

 ことに「めまい」の方は、そもそも音楽そのものが「トリスタンとイゾルデ」を思わせるロマンティックな音楽だったせいもあって、映画を観る前から音楽だけでも十分に楽しめたですが、なにしろ映画そのものが私のベスト1ともいえる作品だったせいで、音楽の相乗効果も相まって、例のキム・ノヴァクが幻のようにかつての姿になって登場する後半のハイライト・シーンでは、それこそ身体がぶるぶると震えるくらい感動したものでした。ともあれ、この後、「めまい」を筆頭にバーナード・ハーマンと名が付けば、なんでも買いあさる日々が来る訳ですけど、とにかくそのきっかけになったのがこの一枚なんですね。

 ちなみに2年ほど前にレビュウしたサロネンのハーマン集も選曲的にはこれをベースにして他の作品をプラスしていたという感じでしたが、サロネンが今風に流れるように演奏していたのに比べると、さすがにこちらは本家本元だけあって、非常にドラマチックで重厚、とても濃い演奏です。また、フェイズ4によるデモ効果満点の音質もあって、今聴いても古びてないですから、このアルバム、これまで何度も再発されてきましたが、おそらくこれからも長い生命を保つのではないでしょうか。
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