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日韓関係悪化の震源、徴用工問題裁判の韓国最高裁の判決書を読んでみるの記(その二)

2019-12-20 00:38:35 | 日記
前々回、12月15の日記で、最近の日韓関係の急激な悪化の震源になった韓国の最高裁である韓国大法院の判決書(2018年1月30日、「新日鉄住友金属韓国徴用工事件再上告審判決」)について、この判決に至る過程や、この裁判における主な争点などについてごく大雑把な説明を記したうえで、判決書を一度読んだだけではなかなか理解が容易ではなく、このため判決書の内容がどのように構成されているのか、判決書の目次のようなものを作りましたので次回に紹介するとお約束いたしました。

すこし退屈かもしれない話が続きますが、辛抱強い方はおつき合いくださいませ

この目次+説明を読んでいただきますと、この訴訟のこれまでの経過、争点、大法院による判断について大筋がが理解していただけるのではないかと思います。

「新日鉄住友金属韓国徴用工事件再上告審判決(2018年10月30日判決)」判決書は以下の内容から構成されています。各項目について、裁判におけるその意味合いをメモとして付記しておきます。判決書のページを示しておきましたので原文をご覧になる場合は記されている頁を参照してください

大法院による判決に至る過程は以下のとおりです
 
大法院による高等法院への差し戻し判決:2012年5月
原審判決(差し戻し後の高等法院による判決):2013年7月
被告上告後の大法院判決:2018年10月

p1~p17:
判決書の主要部分

p18~44:
韓国最高裁判事の個別意見、補充意見、反対意見

主文 「上告をすべて棄却する」

⇒ 上告を行っていたのは被告の新日鉄と住友金属。大法院は被告の主張を退け、原告ら による賠償請求(慰謝料請求)を妥当と認める。この大法院の決定で判決は確定。。

理由             ⇒ 「上告を棄却することの理由」のことです。

1 基本的事実 p2~p10 

⇒ 強制動員(徴用)による慰謝料請求の根拠となる人権侵害・非人道的行為が存在していることを裏付ける元徴用工らの証言、徴用にいたる歴史的過程など

ア 日本の韓半島侵奪と強制動員など ⇒韓国人の強制徴用に至る歴史的事実

イ 原告らの動員と強制労働被害および帰国の経緯⇒4人の元徴用工による証言
    (1)~(5) p2~p4 

⇒大事な部分です。ここだけでも判決書の原文をお読みなるようお勧めします。

ウ サンフランシスコ条約など  p4~5

⇒日韓請求権協定の基盤となったサンフランシスコ平和条約の規定についての説明。その第4条aにおいて「韓国と日本の間の財産上の債務・債権関係は両国当局の特別取極めにより処理する」と規定されています。

エ 請求権協定の締結に関する経緯と内容など p5~p7
    (1)~(3)
  
⇒数十回の予備会談などを経て1965年12月に日韓基本条約ならびに条約に付随した日韓請求権協定が締結されました。請求権協定の第2条の1には「両国は両国およびその国民(法人を含む)の財産、権利及び利益ならびに両国及びその国民の間の請求権に関する問題がサンフランシスコ平和条約第4条aに規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する」と規定されています。

⇒このたびの大法院の判決に安倍首相をはじめとした日本政府筋が強硬に異議を唱えているのは、この規定を根拠にしていると考えられます。すなわち安倍首相らは原告らの慰謝料請求の問題は請求権協定に従い解決済みと主張しています。
   
請求権協定の正式名称は「大韓民国と日本国間の財産及び請求権に関する問題の解決と経済協力に関する協定」であり、日本は経済協力として5億ドル(無償3億ドル、有償2億ドル)を支払うとされています(これは実行に移されています)

オ 請求権協定による両国の措置 p7~p8
    (1)~(3)

⇒請求協定締結後、両国は締結に関連して国内法を整備しています。韓国は「請求権資金法」(請求権協定により支給される資金を使用するための基本条項を定めるための法律)、「対日民間請求権申告に関する法律」「対日民間請求権補償に関する法律」を制定しています。一方、日本は「財産権措置法」という法律を制定しています。

カ 大韓民国の追加措置 p8~p10
    (1)~(4)

⇒また韓国は2000年代に入ってからさらに追加措置を講じており、2004年には「真相究明法(正式名称「日帝強占下強制動員被害真相究明法」を制定しており、「強制動員被害」に関する調査を実施しています。また、2007年には「2007年犠牲者支援法(正式名称「太平洋戦争前後国外強制労働員犠牲者等支援に関する法律」)などを制定しています。

上記のように大法院は事実関係を示した後、次に大法院は被告側(新日鉄・住友金属)による5項目の上告理由について一つ一つ検討を加え、上告理由は妥当性に欠けるとの判断を示しています。

2 上告理由第1点について p10~

⇒被告は日本における裁判で元徴用工らが敗訴していることを上告理由の一つとしていますが、この主張に対して大法院は以下のような判断を示しています

⇒過去に日本で行われた元徴用工たちによる裁判で、植民地支配は正当なものであるという「規範的認識」を前提に、当時の日本の法律「国家総動員法」などを徴用工に適用したものであり有効であるとして原告(元徴用工)らが敗訴していることを被告らが上告の理由に挙げていることに対して、大法院は日本の裁判所による判決をそのまま受け入れることは「韓国における善良な風速やその他の社会秩序に違反するものである」ため、日本での判決の効力を韓国が認めることはできないとしています。

3 上告理由第2点について p10~p11

⇒被告側が当時の旧日本製鉄の責任は自分たち新日鉄・住友金属には及ばないと主張していることに対して、大法院は旧日鉄が日本の法律で解散されていても、原告らは旧日本製鉄の事実上の後継会社であり、そのため被告の新日鉄・住友金属に対しても原告らは慰謝料に関する請求権を行使できるとしています。

4 上告理由第3点について p11~p16

⇒被告らは慰謝料請求権は請求権協定の対象に含まれるものであるため同協定の条文にしたがい、すでに解決済みであると主張しています。

⇒この部分はこの裁判で一番重要な争点です。このため、原告らの被告に対する損害賠償請求すなわち慰謝料の請求が請求権協定の適用対象に含まれているか否かという点に関して、以下の(1)~(5)において検討が加えられ、大法院の判断が示されています。

⇒請求権協定の対象に含まれるならば原告による慰謝料請求は請求権協定第2条1の規定(「両国とその国民の財産、権利および利益ならびに両国および国民の間の請求権に関する問題が完全かつ最終的に解決されたことになることを確認する」)に該当することになり、すでに解決済みのため請求は不当ということになりますが、該当しない場合は請求権が存在していることになります。この争点に関して大法院は下記の(1)~(5)における検討結果を総合すると「原告らが主張する被告に対する損害賠償請求権は請求権協定の適用対象に含まれているとはいえない」とする判断を下しており、その理由として以下の五項目を挙げています。

(1)大法院の判断:原告らの請求内容とその根拠は正当なものであると認められる。

⇒この基本的な点が日本のメディアがあまり伝えてないようですので、以下の判決書を原文のまま記しておきます。

「まず、本件で問題となる原告らの損害賠償請求権は日本政府の韓半島に対する不法な植民支配および侵略戦争の遂行と直結した日本企業の反人道的な不法行為を前提とする強制動員被害者の日本企業に対する慰謝料請求権であるという点を明確にしておかなければならない。原告らは被告に対して未払い賃金や補償金を請求しているのではなく、上記のような慰謝料を請求しているのである」

以上の前提の下に、旧日本製鉄は日本政府の労働力動員政策に積極的に協力しており、原告らは成年に達しない幼い年齢で家族と離別し労働内容や環境を良く理解できないまま組織的にだまされ動員され、身に危険が及ぶ可能性が大きい劣悪な環境で危険な作業に従事し、賃金額もしらないまま貯金させられ、外出を制限され、常時監視されており、脱出の試みが発覚した場合には殴打されるなど、かかる不法行為に原告らが精神的苦痛を受けたことは経験則上明白である、と大法院は判断しています
 
(2)大法院の判断:請求権協定は日本の不法な植民地支配に対する賠償請求のための協定ではない。従って原告らの慰謝料請求は請求権協定の対象外である。

⇒大法院は、「請求権協定は賠償請求のためのものではなく基本的にサンフランシスコ条約第4条に基づき日韓両国間の財政的・民事的な債権・債務関係を政治的合意によって解決するためのものであると考えらえる」としており、その根拠の一つして「実際に締結された請求協定文やその付属書のどこにも日本の植民地支配の不法性に関する言及はまったく存在していない」としています。

(3)大法院の判断:請求権協定第1条により日本が支払った経済協力資金(5億ドル)が第2条による権利問題の解決と法的な対価関係があると言えるの否かは明らかでない。

(4)大法院の判断:請求権協定の交渉過程で日本側は植民地支配の不法性を認めないまま、強制動員被害の法的賠償を根本的に否認していた。そのような状況において強制労働の慰謝料請求権が請求権協定の適用対象に含まれていたとは認めがたい。

⇒これが大法院判決が慰謝料の請求権は請求権協定の対象外であるしていることの最大の最も重要な理由です。このため最終的に、請求権協定の対象外であるから請求権協定に拘束されることなく、慰謝料を請求することが許されると結論づけられていまます。この部分、判決書の原文は以下のとおりです。

「請求権協定の交渉過程で日本政府は植民支配の不法性を認めないまま、強制動員被害の法的賠償を根本的に否認し、このため韓日両国の政府は日帝の韓半島支配の性格に関して合意に至ることができなかった。このような状況で強制動員慰謝料請求権が請求権協定の適用対象に含まれたとは認めがたい。
 請求権協定の一方の当事者である日本政府が不法行為の存在およびそれに対する賠償責任の存在を否認する状況で、被害者側である大韓民国政府が自ら強制動員慰謝料請求権までも含む内容で請求権協定を締結したとは考えられないからである。」

(5)被告が追加して提出した証拠について

⇒大法院の判断: 差戻し後の原審(高裁における審理)において被告が追加して提出した各証拠なども、強制動員慰謝料請求権が請求権協定の適用範囲に含まれないという上記のような判断を左右するものではない。


5 上告理由第4点について p11~p16
 
⇒被告は時効を理由に請求権は無効と主張しています

⇒この部分では被告側(新日鉄・住友金属)は消滅時効が完成しているとして原告らに対する債務履行を拒否していますが、大法院は債務の履行の拒否は著しく不当であり権利の乱用であるとしています。その理由として、日韓の国交が正常化された後も請求権協定関連文書がすべて公開されていなかったなど、この訴訟が提起される当時まで、原告らが韓国内で客観的に権利を行使できない障害事由が存在していたとみることが妥当であると考えらえることを挙げています。
  
6 上告理由第5点について p16~p17

⇒この部分では、原告は上告理由において、て慰謝料の算定において妥当性に欠いていると主張していますが、大法院は著しく妥当性に欠けるなどの違法性は認められないとしています。

7 結論 p17

 以上の審理結果に基づき、上告をすべて棄却し、主文通りに判決するとされています。

⇒これは大法院(最高裁)の判決であるため、原告らによる日本企業に対する慰謝料請求権は妥当であるとする判決は確定したことになります。韓国も三権は分立していますから、韓国政府といえでもこの判決を覆すことは法的に不可能です。

以下、裁判官の個別意見、補充意見、反対意見がp17~p44に記されていますが内容が複雑すぎてGGIの手に余りますので省略させていただきます。

いかがでしたでせうか?日韓関係の複雑さ、いくらか頭に入りましたでせうか?

なもあみだぶ・なもあみだぶ・なもあみだぶ・・・・

今日の写真は本文と関係ありませぬ。湖東平野は広いぞ!という写真です。よろしければクリックしてご覧くださいませ

グッドナイト・グッドラック!

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