みなさんもご存知のように7月1日にバングラデシュのダッカで日本人7人がテロ事件に巻き込まれ殺害されました。この事件、未だ定かではありませんがISの組織が関係しているのではないかと言われています。
この事件に関して、7月5日の朝日新聞(夕刊)が、政府専用機で日本人の犠牲者の棺が日本に運ばれたという記事が掲載されており、一枚の写真が付されていました。
今日お見せする写真はこの記事に付されていた写真を撮ったものです。よろしければクリックしてご覧ください。
この写真には「政府専用機で帰国した日本人犠牲者の棺に黙祷を捧げる政府関係者ら:5日午前6時59分、本社ヘリから」というキャプションが付されています。
高い位置から撮られた写真であり、地上に七つの棺が並べられ、何人もの関係者が黙祷を捧げる姿が画面の中央に写っています。そして右下の部分に日の丸が描かれている政府専用機の尾翼が写っています
この写真、目にした瞬間、ある種のインパクトのようなものが感じられまるようにGGIは思いました。なぜこのように感じられたのでしょうか・・・
遺体の棺が日本に到着したことを報じるのであれば、キャプションで写真の説明が行われているのだから、別に写真の画面に政府専用機の尾翼がわざわざ入れなくても十分ではないかと思われるけれど、なぜカメラマンは、あるいは記事の編集者は、日の丸が描かれている政府専用機の尾翼が右下に写っている写真を選んだのか、何らかの理由があったはすだ、というのが、GGIがこの写真を目にして最初に思ったことです。
理由はいろいろあるでしょう。まず考えられるのは地上に並べられた棺と黙祷を捧げる関係者の姿だけでは写真の構図として平凡であり物足りない、それよりも政府専用機の姿を入れたほうが、臨場感もありインパクトもつよい、とでもカメラマンや編集者が考えたのではないかということです。
このような事情はGGIにも十分理解できます。しかし政府専用機の尾翼を写真に入れたのは、このような構図上の理由だけではないかもしれません。
たとえば、政府専用機の尾翼に描かれた鮮やかな日の丸を写真の構図に含めることにより、このテロ犠牲者の棺の帰国は、あるいはバングラデシュでのテロにおける日本人の犠牲者たちの存在は、単に不運にも日本人が海外で犠牲者になってしまったという事実に留まるるものではなく、何かしら日本という「国家」(日本政府)が、何らかの形で直接または間接に関係している事柄であるということを読者に感じ取ってほしいと、カメラマンあるいは編集者がと考えたのではないかというのがGGIの考えです。
でも「何かしら日本という《国家》が関係している」としても、国家が関係していることの具体的な意味内容は、この写真だけからは推し量ることはできません。
このようなことを何となく考えておりましたら、7月6日の朝日新聞朝刊、「オピニオン&フォーラム」という欄に「日本人も敵の時代、《援助で貢献》も通用せず」と題された特集記事が掲載されていました
この記事の中で、中東調査会上席研究員の高岡豊氏が以下のように述べていました。
「かつて普通のイスラム教徒は、日本について、よく知らないけど、ドラマ《おしん》や電化製品などから素朴な親近感を抱いてきた。しかしイスラム過激派はちがう。2001年の米同時多発テロ後のアフガニスタン攻撃、03年のイラク戦争を経て、イスラム過激派は日本を《十字軍同盟》の一員、つまり「敵国」に分類している。もはや日本人であるからといって、イスラム過激派が容赦することは一切ない・・・」
「十字軍同盟」とはアフガン・イラク戦争やその後のイスラム圏における戦争に関わってきた米国をはじめとした欧米諸国のことを指しているのでありませう。
「十字軍同盟」という表現、いささかオーバーな言い方のように思えないこともないが、日本が約1兆円もの戦費を負担した湾岸戦争のとき、当時のローマ法王ヨハネ・パウロ2世が「これは新たな十字軍である」と必死に戦争に反対していたことを考えるならば、この高岡氏の指摘、違和感を抱く人もいるかもしれないが、あながち的外れでなく、かなりの程度、妥当性を有しているのではないかなどとGGIは思いました。
そんなことを考えておりましたら、7月7日の朝日新聞朝刊に「イラク参戦、《最後の手段ではなかった:英調査委報告、ブレア政権批判》と題した、英国のブレア政権がイラク戦争に参戦した経緯と侵攻後の占領政策の検証を行った英国の独立検証委員会に関する記事が一面に、また「英国、問われた米追従:イラク戦争、調査委報告書」と題された記事が三面に、「資料15万件検証、イラク戦争、《法的根拠》ほど遠い状況」と題して記事が8面に掲載されていました。
これらの記事によりますと、英国の情報機関はイラク戦争開始直前の2016年2月に「イラクで軍事行動をとればアルカイダなどテロ組織の脅威が高まり、イラクの兵器がテロリストの手に渡る可能性がある」と警告していたとされています。開戦後の事態はほぼこの情報機関の予測どおりに展開しました。また同記事では、在英アラブ紙「ライ・ヨウム」のISに詳しい編集主幹は「米英のイラク進攻でイラクが失敗国家にならなければISは組織されなかったはずだ。ブレア氏とブッシュ氏には混乱の種を巻いた直接の責任がある」と指摘しているとされています。
このイラク戦争、ご存知のように当時の小泉首相は開戦後、世界に先駆けてただちに米国への「支持」を表明しただけではなく、自衛隊をイラクの「非戦闘地域」へ派遣しました(しかかし日本では小泉政権がイラク戦争支持しことの責任について、英国におけるような検証はまったくといっていいほど行われていません)。
上記のような専門家の指摘や記事の内容などをつなぎ合わせますと、日本政府がアフガン・イラク戦争の前哨戦とも言うべき湾岸戦争に際して当時のローマ法皇がいうところの「十字軍」への支持支援を行ったこと、最終的にISという過激な組織の出現へと至ってしまった、国連決議を経ずにはじめられたイラク戦争を積極的に支持・支援したこと、その後も《十字軍同盟》の一員としてシリア・イラクへの空爆などイスラム圏への攻撃を支持してきたことが、すなわち、日本政府が米国などによる大義なき戦いを終始支持支援してきたことが、結局は回り回ってバングラデシュにおけるテロ事件で日本人の犠牲者を生み出してしまった、ということになるのではないかとGGIは考えます。
今日の写真に写っている日本政府専用機の日の丸は、このように日本が中東における米英を中心とした戦争に終始深く関わってきたこと、今もかかわりつつあることを象徴しているようにGGIは思います。
このたびのテロの日本人犠牲者が政府機関であるJICAによる事業に関わってきた企業の関係者などであることから、政府は決して口にはしないものの、このたびテロ事件で日本人に犠牲者が出たことは、日本政府のこれまでの湾岸戦争、アフガン・イラク戦争やシリア・イラク空爆などに関する方針や姿勢が関係していることを感じているものと思われます。
集団的自衛権や新安保法制、改憲に反対のみなさんも、賛成のみなさんも、日本は将来ではなく、以前から、そしてこの今も、21世紀になって始まった大きな戦争にまぎれもなく関わっているのだという事実から目をそらさないことが、この事実から出発して問題を考えることがとても大切ではないでしょうか?・・・・
以上、ダラダラと書きましたが、この政府専用機の尾翼に描かれている日の丸を構図の一部とした、犠牲者の棺の帰国に関する報道写真は、読者にいろいろなことを考えさせるものであり、その意味で優れた報道写真であるというのがGGIの乾燥です。
グッドナイト・フッドラック!