高知発 NPO法人 土といのち

1977年7月に高知県でうまれた「高知土と生命(いのち)を守る会」を母体にした、47年の歴史をもつ共同購入の会です。

食べる日々(7)

2024-03-17 09:00:00 | 連載
会員の丸井一郎です。

食べる日々(7)

今回からの数回は、
中部欧州の基層文化から見た
飲食生態をより具体的に紹介する。
この地域に焦点を絞るのは、
筆者が長期的かつ実地に見聞し
調査したのがその理由である。
文献などで追究できる限りは、
かつてのフランク王国に
相当する範囲にも眼を配る。
スラブ語圏の大部分と
ブリテン島及び北欧は
記述の周辺に退く。

現代の消費社会では
「金さえ出せば何でも手に入る」わけで、
フランスやドイツで
ラーメンが日常化していて
何の不思議もない。
近代化バイアス下の日本では
「欧米化」などというが、
彼らは豆腐や味噌を常食し、
生姜や山椒を評価し、
umamiなどという表現を使っても
「ニッポン化」とは言わない。
以下では歴史の堆積
(=環境適応的生産と共同体形成の試行錯誤)に
裏付けられた飲食生態に注目する。 

中欧および欧州の飲食生態について、
例えば日本などと比較して、
共通する事は、
飲食生態の非均質性(階層性)、
及び制度によって保証され仲介される
保存食の優勢ということである。
ここでは、まず
飲食への制度の介在と
保存食の優勢から見ていく。

欧州諸地域では、
「人はパンだけで生きるのではない」にせよ、
特権層以外では、
食事の中心は
様々な種類のパンなど穀物食品であった。
日本との重要な差異は、
とくに歴史的な自治都市で、
パンは家庭で作るのでなく、
ツンフト(ギルド、コルポラシオン)に
高い地位を占める専門業者が
公的に供給し(パン購入は市民の特権の一部)、
かつそれ自体が保存食であった、
という点に見られる。
一定の期間皆で分かち合うべきパンは
それなりの大きさでなければならない。

ハイデルベルク近郊の伝統的な工房にて、
若きマイスターが
5Kgの家庭用ライ麦パンを手に
微笑むの図。


ミュンヒェン市内のオーガニック食品店にて
3kgと4kgの製品。
軍隊などでは30kgが規格であるという。


パンは、
粉と塩と水と酵母だけで出来ている、
という基準に照らせば、
日本の量販店の製品は
ほぼ全て「菓子」になる。
彼の地には
もちろんパン生地の菓子もある。

※ この記事は、NPO法人土といのち『土といのち通信』2024年3月号より転載しました。

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