鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

クロガモ(その1) <em>Melanitta nigra americana</em> 1

2011-11-29 21:34:12 | 海鳥写真・アビ目、カイツブリ目、カモ目
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All Photos by Chishima,J.
(以下すべて クロガモ 2011年1月23日 北海道十勝郡浦幌町)


 ヨーロッパ産の基亜種と北米産の亜種americanaから成り、日本へは後者の亜種が渡来する。近年ではそれぞれを独立種として扱う風潮も強く、その場合日本の個体群はM. americanaとなる。道東では冬鳥として10月から5月くらいまで海上で普通に観察されるほか、越夏するものも少なくない(「越夏群」の記事も参照)。概して砂質海岸の海上に多いが、ビロードキンクロほど同環境への依存度は高くない印象がある。1965年に阿寒湖で幼鳥の観察記録があるというが詳細は不明で、確認できる写真等の所在も不明である。

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翼開長は70~84cmで、ウミガラス類より少し大きく、大きい個体はアカエリカイツブリともオーバーラップするが、翼の拍動が早いためかそこまで大きな印象は受けない。丸みを帯びた頭部や腹部等独特のシルエットにくわえて、オスでは嘴基部の黄色い瘤、メスではツートンカラーの顔のパターン等が見えれば識別は容易。遠距離や逆光という悪条件下では、他のカモ類やウトウと見間違えることがある。また、しばしば他種と混群を形成するので注意が必要である。


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♂の飛翔。このような順光下では、嘴基部の黄色と全身の黒色によって識別はたやすい。初列風切の下面と上面外縁は銀白色で、飛翔時には遠距離からでも割とよく目立つ。


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♀の飛翔。大雨覆と次列風切の先端は白いが、これは近距離でもほとんど目立たない。最大の特徴は、頭頂部から後頸にかけての黒褐色とそれ以外の顔の淡色が作り出すコントラスト。初列風切の銀白色は♂ほどではないが、やはりよく目立つ。本個体の嘴は全体的に黒い。嘴基部に黄色の入る♀のような個体を、♂幼鳥とみる向きもあるが、そのような個体へのディスプレイやつがい形成を観察しており、♀でも個体によっては(例えば老齢個体)黄色が出るのかもしれない。


(2011年11月29日   千嶋 淳)


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