鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

「北海道の海鳥2 ウミスズメ類② アホウドリ類」発行のお知らせ

2014-12-31 16:09:08 | お知らせ


 昨年の「北海道の海鳥1 ウミスズメ類①」の続刊をNPO法人日本野鳥の会十勝支部より発行しました。こちらではエトロフウミスズメ族、ツノメドリ族のウミスズメ類とアホウドリ類を扱います。

著者:千嶋淳 イラスト:鈴木瑞穂 ISBNコード:978-4-9907411-1-2 判型/総ページ数: B5判/56ページ オールカラー 定価: 1,000円(本体)+税 発売年月日: 2014年10月31日 発行:NPO法人日本野鳥の会十勝支部

 太平洋、日本海、オホーツク海とそれぞれ性質の異なる3つの海を持つ北海道近海には、四季を通じて様々な海鳥が飛来しますが、それらの生態や識別について参照できる本は多くありません。「北海道の海鳥」シリーズでは豊富な写真と文章でそれらを紹介します。
 2作目となる本書「ウミスズメ類②、アホウドリ類」の前半では、アメリカウミスズメ、ウミオウム、コウミスズメ、シラヒゲウミスズメ、エトロフウミスズメ、ウトウ、ツノメドリ、エトピリカの8種を扱います。アメリカウミスズメとシラヒゲウミスズメはイラストのみ1ページですが、それ以外は各種について9~14枚の写真と3ページの解説を割いています。写真は若鳥や飛翔、群れ、他種と一緒なども含む多様なカットで実際の識別や観察に役立つようになっており、冬のウミオウムやウトウ巣立ち幼鳥、エトピリカ若鳥などは、載っている図鑑も少ない貴重なものです。解説は各羽衣や類似種との識別、北海道周辺での分布や現状などを、最新の知見も交えて盛り込みました。
 後半はアホウドリ類について、分類や生態、人間との関係などを含む総論の後にコアホウドリ、クロアシアホウドリ、アホウドリの各論となります。こちらも各種13枚の写真と3ページの解説で、洋上での様々な生態をビジュアルとともに楽しめるようになっております。
 購入はHobby's World、日本野鳥の会インターネットショップ、NPO法人日本野鳥の会十勝支部Internet shopで可能なほか、野鳥の会十勝支部などのイベントでも販売予定です。どうぞよろしくお願いいたします。

(ページ見本)


エトピリカ写真ページとアホウドリ類総論



クロアシアホウドリ写真ページとアホウドリ解説ページ


(2014年11月17日   千嶋 淳)

141224 十勝川ワシ観察クルーズ

2014-12-29 15:39:38 | 鳥・冬

All Photos by Chishima, J.
河畔林に止まるオジロワシ 以下すべて 2014年12月 北海道十勝川中流域)


 およそ半月ぶりのクルーズ。いつものように陸上から表情を含めてオオワシやオジロワシを観察後に繰り出した川面は薄曇りで、風も無いためしんと静まり返り、セキレイ類の声やホオジロガモの羽音(whistle)をいつもに増してよく聞くことができました。
 雪ががっつり降って人が入らなくなったためか、出航直後から5羽のオオワシを河畔林に見つけたのを皮切りに2種の海ワシ類を次々と観察でき、タンチョウも2つがいが相次いで出現してくれました。セキレイ類やカモ類も降雪前より数が増えたようです。本来は旅鳥や夏鳥のタヒバリ、オオジュリンなどを観察できたのも成果でした。雪の少ない河原は思わぬ鳥たちが残っていることがあり、過去にもクサシギやビンズイを観察していますが、降雪後は陸からのアプローチが困難なので、ゴムボートで川面からアクセスできるこのクルーズならではの発見です。
 2組のお客さんのうち1組は同じ池田町在住のご夫婦、もう1組は現役の畜大生とそのご家族で不思議なご縁を感じました。同じ町内の方々や大学の後輩のご家族に、鳥を通じて十勝の魅力をお伝えできるのはたいへん光栄なことです。
 1月中旬までのワシクルーズ。残すところも半月あまりです。ワシやタンチョウとの遭遇頻度も良好で、景色も本格的な真冬の雰囲気を帯びて来ました。是非お越し下さい。十勝川ワシ観察クルーズの詳細については、十勝ネイチャーセンターのHPを参照下さい。
 冒頭の写真は猿別川合流点下流にあるJR鉄橋のすぐそばで川を見下ろしていたオジロワシ。どこにいるかわかりますか?


観察種:オオハクチョウ マガモ コガモ ホオジロガモ ミコアイサ カワアイサ ドバト タンチョウ トビ オジロワシ オオワシ ハイタカ アカゲラ ハシボソガラス ハシブトガラス ハシブトガラ シジュウカラ ヒヨドリ ミソサザイ スズメ ハクセキレイ セグロセキレイ タヒバリ カシラダカ オオジュリン


木から飛び立つオオワシ成鳥



雪原となった河原に佇むタンチョウのつがい



(2014年12月25日   千嶋 淳)

141221 第2回ワシ類越冬数等個体数調査

2014-12-29 15:18:29 | 鳥・冬

Photo by Chishima, J.
十勝川千代田新水路 以下すべて 2014年12月 十勝川中流域)


 今シーズン2回目の調査は風がややあるものの、晴天に恵まれました。ただし、前夜夜半に雨が降ったようで、路面や車周りはあまり良い状況ではありませんでした。十勝は野鳥の会支部会員が分担して9ルートを調査し、全体ではオオワシ成鳥34羽、幼鳥13羽、オジロワシ成鳥27羽、幼鳥16羽の計90羽の海ワシ類が確認されました。
 私の担当した十勝川中流域では、オオワシ成鳥24羽、幼鳥9羽、オジロワシ成鳥11羽、幼鳥10羽の計54羽が観察され、十勝全体の6割に相当する海ワシ類が、千代田新水路を含む十勝川中流域に集中している様子を明らかにできました。
 その一方、前回ワシ類の確認のなかった、あるいは少なかった十勝川上流域や足寄方面での記録数が微増し、早くも山間部への分散の始まった様子も見えてきました。これから3月まで、ワシ類がどのような個体数の推移を示すのか、大いに楽しみなところです。
 悪路の中、調査に参加いただいた皆様は、どうもお疲れ様でした。


サケを掴んで飛ぶオオワシ成鳥



激しくぶつかり合うオオワシの成鳥と幼



(2014年12月25日   千嶋 淳)


141211 海ワシ類の季節

2014-12-17 15:44:22 | 鳥・冬

All Photos by Chishima, J.
小雪舞う河原に集うオオワシオジロワシ 2014年12月 以下すべて 北海道十勝川中流域)


 朝から小雪が降り続き、世界がうっすらと白くなりました。冬気分を味わおうと、近所の川でワシを観察してきました。視界不良と個体の動きが激しかったため正確に数えていませんが50羽は優に超え、十勝川中流域のオオワシ、オジロワシはピークを迎えつつあるようです。ここでは21世紀に建設された人工水路の巨大なコンクリート壁を背に、かつて北海道中で見られただろう産卵後のサケに群がるワシを観察できます(詳しく知りたい方は拙著「北海道の動物たち 人と野生の距離」の「人工水路に蘇る原風景 オオワシとオジロワシ」の章を参照下さい)。観察に当たっては車をブラインド代わりにする、遠くから望遠鏡で観察するなど、ワシ類の採餌を妨害しないよう配慮をお願いいたしますまた、交通手段の無い方やポイントが分からないという方は、NPO法人日本野鳥の会十勝支部のプライベートガイドもご利用下さい。帯広から半日コースで十分堪能できます。


対峙する2羽(オオワシ成鳥)
2014年12月
サケを食べていた成鳥に、右側から亜成鳥が身を屈めながら近付き、成鳥は激しく鳴いて応酬する。



ワシのなる木
2009年12月
樹氷を纏ったドロノキオオワシオジロワシが20羽以上群がる様は圧巻。



(2014年12月11日   千嶋 淳)

141206 十勝川ワシ観察クルーズ

2014-12-17 11:52:09 | 鳥・冬

All Photos by Chishima, J.
青空に柱となって舞うオオワシ 以下すべて 2014年12月 北海道十勝川中流域)


 本日のお客様4名は、いずれも地元十勝の方々。乗船前にお話していると、「帯広の近くでオオワシが見られるなんて…」とのこと。そうなんです。わざわざ遠出しなくても、帯広から半日程度の範囲でワシもタンチョウも楽しめるんです。
 まずは出艇地点近くの陸上からオオワシを観察。近すぎず遠すぎずの距離で表情や爪を含む詳細を堪能した後は、いざ川へ。冬にしては珍しく細波の一つも立たず、陸上の風景を水鏡に映した川面を滑るように下るだけで、俗世間から切り離されたような、スペシャルな感じに包まれます。
 オジロワシやカモ類、セキレイ類などを見ながら放談を楽しんでいると、河畔林から飛び立って旋回・上昇を始めたオオワシが1羽また1羽と数を増し、最終的には10羽が「ワシ柱」を作っていました。この時期の十勝川中流域には30羽以上のオオワシが飛来しているとはいえ、このクルーズでのこんな出会いは初めてで、参加者もスタッフも大興奮!!そして青空を背にしたオオワシの美しいこと。半口を開けての「すげ~、すげ~…」以外に言葉が見つかりませんでした。

真上を飛ぶオオワシ・成鳥
くさび形の尾羽の形状がよくわかる瞬間。



 オオワシが一段落した後は、オジロワシのつがいを至近距離で観察でき、終点間際でも若鳥がサケを、カラスやトビと争いながら食べるシーンも目撃するなど、ワシ類の連続に、寒さを感じる間もない一時間余りでした。
 いよいよワシ類も増えてきて、これからピークを迎えることと思います。川面という非日常空間から雄大なワシ類はじめ水鳥や小鳥、その時々の気象や川の条件が織り成す景観を楽しむことのできる十勝川ワシ観察クルーズに、是非お越し下さい。ただし、ワシ類への過度の負荷を避けるため、水、土、日の週3日の運航としておりますのでご理解・ご協力をお願いいたします。十勝川ワシ観察クルーズの詳細については、十勝ネイチャーセンターのHPを参照下さい。


河畔林に止まるオジロワシの成鳥



(2014年12月6日   千嶋 淳)