鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

150308 第5回ワシ類越冬個体数等調査(十勝)

2015-04-14 16:56:55 | 鳥・冬


Photo by Chishima, J
調査中に見たハギマシコ(右)とベニヒワ 2015年3月 北海道十勝郡浦幌町)


 調査を担当された皆様が迅速に報告してくださったおかげで、集計が終わりました。10名が9区間を調査し、オオワシ成鳥43羽、若鳥・幼鳥23羽、オジロワシ成鳥26羽、若鳥・幼鳥15羽、不明1羽の計108羽の海ワシ類を確認しました。前回調査時にオオワシ成鳥の減少を、暖冬で早めに北へ渡ったという仮説を提示した私の浅はかさを嘲笑うかのように、オオワシ成鳥は18羽も増えました(笑)。
 今回、最も多くのワシが観察されたのは浦幌町山間部(34羽)で足寄・陸別(28羽)がそれに続き、内陸のこの2区間で十勝全体の57.4%が記録されました。「海ワシ」とはいいますが、十勝では冬の前半はサケを求めて十勝川中流域に40~60%が集中する「川ワシ」、後半にはエゾシカ残滓の多い山間部が分布の中心となる「山ワシ」としての側面も持っていそうです。前回までは0~数羽の確認しかなかった浦幌町山間部で30羽以上出現したのは、ワシたちの探餌・移動能力の高さを反映したものといえるでしょう。
 前回まで10羽以下だった十勝川下流域で19羽確認されたのも興味深い点です。暖冬気味で十勝川本流はもちろん、支流や旧河川もかなり氷が開いてきているので、ウグイなどの魚や、早くも戻り始めたカモ類などの水鳥を狙って集まってきたのでしょうか。
 このあとデータを取りまとめて事務局に返送すれば、今季の調査は無事終了です。地道なカウントは鉛中毒や風力発電への衝突による死亡、海鳥繁殖地への過度の攪乱など人間やほかの生物との間に多くの問題を抱える海ワシ類との共存へ向けた基礎データとなるでしょう。時に吹雪や悪路に悩まされながらの厳冬期の調査を引き受けていただいた野鳥の会十勝支部・浦幌野鳥倶楽部有志の皆様、どうもお疲れ様でした。


(2015年3月9日   千嶋 淳)

150308 第5回ワシ調査(十勝川下流域)

2015-03-20 16:49:31 | 鳥・冬

Photo by Chishima, J.
ヒシクイ(亜種オオヒシクイ)の群れ   2015年3月 北海道十勝川下流域)


 今季最後となるワシ一斉調査。私は十勝川下流域を担当させていただき、オオワシ成鳥8、若鳥・幼鳥3、オジロワシ成鳥6、若鳥・幼鳥2の計19羽の海ワシ類を数えました。オオワシのうち10羽は同じ場所で樹上に止まっていましたが、地上で採餌する素振りはなく、なぜそこに集まったのか不明です。オジロワシ成鳥の何羽かは巣のすぐ近くの樹上で観察されたものの、まだ抱卵には入っていないようです。
 ワシ以外では路肩や堆肥場に小鳥が多く、ハギマシコ、ベニヒワ、アトリ、ミヤマホオジロなどを観察できました。これほど多様な小鳥で賑わう冬も久しぶりなのではないでしょうか。調査中であまりゆっくりできず、なおかつ霧混じりの曇天だったのが残念。
 ガン類も思いのほか多く戻って来ていました。マガンとヒシクイが各1000羽は下らないでしょう。一面の雪原でどう生きてゆくのだろうと心配になってしまいますが、堆肥場などで餌を取り、雪原や不凍河川で休息しながら何とか急場をしのいでいるようです。おそらく近日中にはハクガンやシジュウカラガンの群れも到着し、十勝川下流域は秋と並んでバードウオッチングのベストシーズンに突入します。今日も半日ほどでタンチョウ、オオワシ、オジロワシ、マガン、ヒシクイの天然記念物5種をばっちり観察できました。カモ類もコガモなど厳冬期にはいなかった種類が、漁港や十勝川本流の開水面に群れていました。春の足音が着実に近付いています。
 冒頭写真で鳥たちの手前に見えている線は酪農家の電気牧柵です。


確認種:ヒシクイ マガン オオハクチョウ ヨシガモ ヒドリガモ マガモ オナガガモ コガモ ホシハジロ キンクロハジロ スズガモ シノリガモ ビロードキンクロ クロガモ ホオジロガモ ミコアイサ カワアイサ ウミアイサ ハジロカイツブリ アビ カワウ タンチョウ カモメ シロカモメ オオセグロカモメ トビ オジロワシ オオワシ ノスリ アカゲラ コチョウゲンボウ ハヤブサ カケス ハシボソガラス ハシブトガラス ハシブトガラ シジュウカラ ヒヨドリ エナガ ゴジュウカラ キバシリ ツグミ スズメ ハクセキレイ アトリ カワラヒワ ベニヒワ ハギマシコ ベニマシコ シメ ミヤマホオジロ カワラバト(ドバト) (52種)


(2015年3月8日   千嶋 淳)

150225 プライベートガイド

2015-03-20 16:07:20 | 鳥・冬

Photo by Chishima, J.

タンチョウ 2015年2月 北海道中川郡幕別町)

 縁あって、本州から帯広畜産大学を受験された方とその母上を、滅多にないことですが妻と二人体制で午後の半日ほどガイドさせていただきました。
 畜大・農高ではアカゲラ、ヒガラなどを観察しながらドラミングや囀りも楽しみ、その後に訪れたカモポイントでは何故かカモがもぬけの殻だったものの、オオハクチョウやこの時期としては珍しいカワセミも見ることができました。例年、年明けにはほとんどいなくなってしまうワシポイントにダメもとで行ってみると、オジロワシ成鳥がサケを食べており、それを同幼鳥、さらにはオオワシ成鳥が略奪する一幕も!十勝川温泉を経て帯広への帰路。今日は無理かと諦めかけていたタンチョウがつがいで畑におり、目の前でしばしダンスを披露してくれました。
 北海道の自然の魅力の片鱗を垣間見ていただけけたかな?

確認種:オオハクチョウ ヒドリガモ マガモ カルガモ マガモとカルガモの雑種 オナガガモ ホオジロガモ ミコアイサ カワアイサ カイツブリ カワラバト(ドバト) アオサギ タンチョウ トビ オジロワシ オオワシ カワセミ コゲラ アカゲラ ハシボソガラス ハシブトガラス ハシブトガラ ヒガラ シジュウカラ ヒヨドリ エナガ ゴジュウカラ キバシリ スズメ ハクセキレイ セグロセキレイ


(2015年2月25日   千嶋 淳)

150222 第4回ワシ類越冬個体数等調査(十勝)

2015-02-24 15:03:27 | 鳥・冬


 NPO法人日本野鳥の会十勝支部では14名の会員が10区間で調査に当たり、オオワシ成鳥25羽、幼鳥8羽とオジロワシ成鳥32羽、幼鳥12羽ならびに識別不明12羽の合計89羽の海ワシ類を確認しました。
 前回までと数は大きく変わらないものの、分布には変化がみられました。11~1月は十勝全体の40~60%の個体数が集中していた十勝川中流域で3羽(十勝全体の3.4%)と激減した一方で、足寄・陸別では50羽(十勝全体の56.2%)と大きく数を増やしました。2~3月の足寄・陸別での個体数増加は過去の調査でも確認されており、足輪や発信機による裏付けはありませんが、冬の前半に十勝川中流域でサケを食べ尽くしたワシが、その後シカ残滓を求めて山間部へ入ってゆくようです。
 去年の同時期の調査と比較して興味深い点がありました。オオワシ幼鳥、オジロワシの数は大差なかったのですが、オオワシ成鳥は半分以下だったことです。未調査区間に餌があってそこに集まっていた、今冬は暖冬気味のため北への渡りが早く進んでいる、観光目的の餌付けを行っている根室や羅臼に集まっているなどの仮説が考えられますが、正確なところは不明です。
 私は十勝川下流域を担当し、オオワシ1羽とオジロワシ5羽を数えました。オジロワシはすべて成鳥かつ営巣地付近での観察で、まだ雪の積もった巣の上に立つつがいもいました。早くも繁殖の季節が始まっているのです。ゴマフアザラシやタンチョウ、キタキツネなども観察でき、わずか半日のドライブでこれだけの野生動物を見られる場所に住んでいることの幸せを改めてかみしめました。
 冒頭写真は河口付近の砂浜に打ち上がっていた氷です。流氷ではなく、十勝川から海に流れ出したものです。


堆肥場のタンチョウキタキツネ



(2015年2月23日   千嶋 淳)

150221 戸蔦別川河畔林観察会

2015-02-23 15:30:40 | 鳥・冬

Photo by Chishima, J.

 帯広市郊外の戸蔦別川河畔林での自然観察会(主催:十勝の森とひとを結ぶ会)でした。今回は遠く釧路からも参加いただき、ありがたい限り。いつものように防風林での冬芽や哺乳類痕跡の観察がメインでしたが、風もなく雪が比較的締まっていたことから、河畔林を見下ろす河岸段丘の縁まで歩きました。積雪後では初めてのことです。河畔林では陽気につられてかハシブトガラやゴジュウカラが賑やかに囀り、シマエナガやコゲラの声も聞かれました。雪が溶けたら段丘の下まで降りて林内を歩きたいものです。
 帰り道、参加者の方が枯れたカシワの幹に止まったまま死んでいるキバシリを発見されました。地表から1mくらいの隙間に張り付くようにいたその鳥に外傷はなく、寒さか飢えに耐え切れなくなってのことかと思います。めったにない機会なので手に取って、細い嘴やキツツキのように硬い中央尾羽をじっくり観察しました。今後は標本として有効活用させていただくつもりです。
 写真は段丘上から見た河畔林です。


観察種(鳥類のみ):コゲラ アカゲラ カケス ハシブトガラス ハシブトガラ ヒガラ シジュウカラ ヒヨドリ エナガ ゴジュウカラ キバシリ(死体)スズメ


(2015年2月23日   千嶋 淳)