![1 1](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/57/5212933e1e1dc32b2b1af45f1a8a5906.jpg)
All Photos by Chishima,J.
(以下すべて ツノメドリ若鳥 2012年7月15日 北海道十勝沖)
一連の写真は比較画像のエトピリカを除き、十勝沖約15kmで観察された同一個体。「北海道東部鳥類目録」(日本野鳥の会十勝支部,2010年)に十勝からの本種の記録はなく、十勝初記録と思われる。釧路航路では釧路からえりも沖にかけて時々観察されていたので記録はあるだろうが、GPSのない時代なので海域の特定が困難であろう。
本種は日本では冬鳥とされるが、道東では夏期、特に7月の記録が圧倒的に多い。沖合で若鳥が観察されるほか、ユルリ島、モユルリ島、霧多布岬等エトピリカ繁殖地へ成鳥、亜成鳥も含めて時々飛来し、陸地付近を旋回したり、コロニー付近に着陸した記録もある。1987年8月にはモユルリ島周辺海上で巣立ち直後の幼鳥が観察されたというが、付近で繁殖したかは不明である。本来の繁殖地は中部以北の千島列島やオホーツク海北部、ベーリング海等、北海道よりずっと北である。
例年より低めの水温が良かったのか、2012年6月下旬から7月前半の道東海域では本種の記録が相次いだ。少なくとも数十羽か、それ以上が来遊していたと思われる。同時期にはキタオットセイの若獣も、季節の割に多く観察された。
![2 2](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/33/8f09f915c1d420a8b43c01681677a8c7.jpg)
![3 3](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/d5/38df29f8c26768d0cc5c90847f22c63f.jpg)
背後からの画像2枚。顔の白色部は若鳥のためやや不明瞭だが、その部分の形状は既に本種独特の、目後下方の後頭部に向かって鋭角的に収束するパターンを示している。以前、本種かエトピリカの幼鳥と思われる鳥を背後からのみ撮影したことがあるが、体下面が沈んでいて判別できなかったその鳥も顔の淡色部が同様のパターンなことから本種だろうか。顔の白色部は濁った感じだが体下面の白色は既に純白に近く、下尾筒や胸腹部が見えれば背後からでも、あるいはウトウやエトピリカと一緒にいても違和感を覚えて気付くことができる。
![4 4](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/27/55/6f3b8f29bc42a6fc3e6673fcee8b7528.jpg)
潜水前に水面下を覗き込む。ケイマフリやウミガラス等中型以上のウミスズメ類やアビ類、ウミアイサ等の潜水性海鳥に広く見られる行動。上面の黒色はエトピリカ成鳥同様の炭色で、褐色みの強いウトウとは一線を画する。
![5 5](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/42/8b/abaefc79ca71bd88bb96619215e844f9.jpg)
エトピリカ若鳥との、顔の比較画像。エトピリカの撮影データは画像中を参照。どちらも若鳥だが、エトピリカの方が若干年上かもしれない。シルエットはよく似るが、本種の方が嘴端から下嘴にかけての勾配が急なように思う。両種とも顔に淡色部があるが、本種の方が白っぽく、またその形状は上述の通り目の後下方に向かって鋭角的に収束する。本種の喉から胸にかけては上面同様の黒色を呈するが、エトピリカの若鳥では同部分が灰黒色でこの色が胸部から体下面へも続く。
![6 6](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/18/27d227f028d07b669b88c23de4fdd0a3.jpg)
いずれにしても、これまで観察経験のあまりにも乏しかった本種を、短期間で10個体以上観察できたのは私には大変幸運な夏だったといえる。
(2012年8月10日 千嶋 淳)
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