![1_116 1_116](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/54/62/57d48810cc5738da80dafd8a8518ebd5.jpg)
All Photos by Chishima,J.
(イワツバメ・左側の幼鳥は餌をねだっているのか? 2007年8月 以下すべて 北海道河西郡中札内村)
イワツバメの集団繁殖地となっている、山間のダム湖を凡そ一月ぶりに訪れると、夥しい数のイワツバメで賑わっていた。3000羽を下らないであろうとことはわかるものの、正確な数はとても把握の仕様が無い。幼鳥が続々巣立つこの時期、数が増えるのは当然なのだが、これまでの繁殖期に見られていた成鳥数やカラスによる繁殖失敗の多さを考えると、このコロニーの幼鳥が全て巣立ったとしても、それを遥かに凌いでいる。範囲は不明だが、近隣のいくつもの繁殖地から集って来たと考えるのが妥当であろう。
巣から顔を覗かせる成鳥(イワツバメ)
2007年7月
本種の巣は、ツバメの半椀型とは異なり、壷型をしている。
![2_115 2_115](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/78/df/2aad532159c5ad26332c7d49ba362f66.jpg)
落差100mを超える巨大なコンクリートのダム堤体の溝や斜面にびっしりと群がり、何かの弾みに一斉に飛び立つその様は鳥類というより昆虫のそれに近く、「蠢く」という表現が相応しい。堤体に収まりきらなかった個体は、堤体上を走る道路のすぐ脇にあるコンクリ製の構造物や潅木にも止まっていて、こちらはすぐ間近に観察することができる。
堤体を埋め尽くす大群(イワツバメ)
2007年8月
![3_113 3_113](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/32/0e/21bdd4f00a85b0a7570114bd45596d17.jpg)
口角・口内が黄色の幼鳥が多い。その殆どは地面に座り、暑さに喘いでいる。何しろ残暑が厳しかったこの日は、山地の此処も気温は平地より穏やかだったとはいえ、強い日差しが容赦なく照り付けていた。もっとも、中にはこの日射を無駄にしまいと翼や尾羽を開いて日光浴に励む強者もいた。羽毛は鳥類にとってのライフライン。傷や寄生虫で痛んでしまうことは、空を主たる生活の場とし、長距離の渡りを行う本種にとっては命取りになるのだろう。それでも時と共に痛んでゆくことを、所々に混じっている成鳥の、磨滅しきって褐色になった翼が醸し出す疲弊した雰囲気が物語っている。
残暑に耐えるイワツバメ
2007年8月
左側の幼鳥は、暑さに耐えかねる感じで大口を開けていた。
![4_107 4_107](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/79/a1/61b9ec6fbeb68eac7b5b91b90e15635a.jpg)
日光浴(イワツバメ)
2007年8月
![5_108 5_108](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/6b/f0441988a2fffff7396b440e74fef7a3.jpg)
成鳥(イワツバメ)
2007年8月
こちらも座り込んで暑さに喘ぐ。翼や尾羽は磨滅による褪色が顕著。
![6_103 6_103](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/38/59/8682f0dca238034d90d160cd72013f38.jpg)
何を考えているのか、幼鳥にマウントを試みる成鳥がいた。少なくとも2回は見た。無論、幼鳥にはすぐ拒否されて失敗に終わるのであるが。もうじき渡去というこの時期に、それも未成熟の個体に対してこのような行動を示すのは何故だろう?繁殖に失敗したオスによる、一種の転位行動みたいなものか。
幼鳥にマウントしようとする成鳥(イワツバメ)
2007年8月
この事例では失敗したが、直前には別の幼鳥に対し、完全にマウントしていた。
![7_94 7_94](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/55/cd/ab9ecde82c187e85ffed4cf58b3ba509.jpg)
平和で長閑な時間は、長くは続かなかった。午後になると、おそらく繁殖期にもここでイワツバメの卵や雛を襲っていたという噂の、2羽のハシブトガラスが攻撃を掛け始めた。群れは撹乱されて散り散りになり、再び集まることを繰り返した。何度目かの突入の後、1羽のカラスの嘴には、イワツバメ幼鳥の変わり果てた姿があった。動きの鈍い巣立ち雛だったのか、あるいはまだ巣にいた雛だったのか。カラスは堤体上のフェンスに止まって、雛を脚に持ち変えると、慣れた感じで解体しながら一瞬で貪った。後でこの直前に、フェンスに嘴を擦り付けていたカラスの写真を拡大したところ、嘴にはイワツバメのものと思われる大量の羽毛が付着していたから、これが最初の襲撃ではなかったようだ。
イワツバメの幼鳥を捕食するハシブトガラス
2007年8月
写真ではわからないかもしれないが、どちらかの脚とその周辺を嘴にくわえている。
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それでも、イワツバメたちはカラスの攻撃を交わしながら、9月末の渡去前までこの場所で休息しながら栄養を付け続けるだろう。和名の由来となった崖や岩場から、建物の壁や橋桁等の人工構造物にも生活の場を広げ、都市鳥にも名を連ねるようになった鳥である。そして、10数年前、美しかったであろう(生憎、当時を知らない)山中の渓谷を削って造られたこのダム湖でも逞しく生きてきた鳥である。
潅木で休息中(イワツバメ)
2007年8月
枝に止まるというよりは、このように葉の上に乗っている感じ。また、暑さを避ける目的か、木陰になっている部分に多かった。
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(2007年8月29日 千嶋 淳)