鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

ウミアイサ(その2) <em>Mergus serrator </em>2

2012-02-08 23:46:52 | 海鳥写真・アビ目、カイツブリ目、カモ目
Photo
All Photos by Chishima,J.
(以下すべて ウミアイサ 2012年1月17日 北海道厚岸郡厚岸町)


 褐色と灰色を基調にした体色は一見メスを思わせる。しかし、①頭部、特に目より上のそれは黒色みが強い、②本来灰色であるはずの胸は褐色で、最前面ではその中に細かい縦斑が認められる、③胸後方の側面に数個の白斑がある、④背の黒色みが強い、⑤暗灰色を基調とする脇の一部に灰白色の明るい部位が見られるといったオス的な特徴が見受けられる。一連の写真は同一個体。
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 20cmは優にあろうかというギンポ類と格闘中。背の後半から腰にかけて、またその下方の脇は明るい灰白色で、黒みの強い前方とコントラストを成す。


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 魚を無事食べ終えた後での羽ばたき。翼上面のパターンはメスに近いが、小、中雨覆の特に下方の白色部に近い辺りは、カワアイサに近い明るい灰白色であるように思う。以上見て来た特徴から、本個体は前年生まれのオス幼鳥と考えられる。アイサ類のオスは成鳥でも生殖羽への移行が遅い(それでも本種の場合、12月までには概ね移行している)が、成鳥のエクリプスであればオス様の翼上面パターンを示すはずである。


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 潜水性海鳥の潜水には何通りかの方法がある(詳しくは「潜り方」の記事を参照)が、本種は翼を閉じて放物線を描きながら跳躍する、スズガモ属やクロガモ等多くの種類に見られる方法で潜水する。水面に突入する瞬間にも目を大きく見開いている。本種は顔を水面に付けたまま、獲物を探すように泳いでいることがよくあり(アビ類やウミガラス類でも見られる行動)、水面下の探餌において視覚が重要な役割を果たしているものと思われる。


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 ギンポ類と思われる魚をくわえて水面を走る。冬の漁港で本種が捕食しているのはギンポ類やカジカ類等、沿岸底性魚類が多い。その一方で岸からかなり離れた海域で見かけたり、ウ類、カモメ類やアビ類等とともに海面近くで採餌混群を形成していることもあり、それらは表層性の浮魚を捕食していると考えられる。多くの魚食性の動物と同じく、強い選好性は無いのであろう。


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 ギンポ類を呑み込む。魚体はまだ嘴から溢れているにも関わらず異常に膨れた喉が、獲物の大きさを物語っている。アイサ類の嘴には鋸歯状突起という嘴が変形した歯のような突起があり、魚を効率よく捕食するのに都合良くなっているが、流石に大きくてぬめりの多いこの魚を呑み込むのは難儀だったようだ。鳥類は獲物を丸呑みするため、このように捕食直後の喉が異常に膨れているのはウ類やサギ類でもよく見られる。


(2012年2月8日   千嶋 淳)


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