鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

ハシジロアビ(その1) <em>Gavia adamsii </em>1

2012-03-08 22:05:34 | 海鳥写真・アビ目、カイツブリ目、カモ目
Photo
All Photos by Chishima,J.
(以下比較画像除きすべて ハシジロアビ冬羽 2011年2月27日 北海道十勝郡浦幌町)


 アビ類中最大の種で、全長は89cm、体重は4.6~6.4kg。体重はオオワシやオジロワシともオーバーラップするといえば、その巨大さが実感できるだろうか。種小名は英国の軍医で探検家のEdward Adams(1824-1856)に献名されたもの。以前はかなり稀な鳥とされたが、北日本の海上には冬鳥として少数が定期的に渡来する。道東では主に冬鳥として10月後半より海上に渡来し、漁港に入ることもあるが、数少ない鳥であることに変わりはなく、シーズン中に1~数度出会いがある程度。大型で個体数も少ないせいか、一度に見られるのはたいてい1、2羽である。春の渡り期間は長く、4月下旬から6月上旬まで海上を渡る個体が観察される。南千島沿岸では少数の若鳥が越夏する。
Photo_2


 一連の写真は同一個体で、色合いや雨覆の各羽に淡色の羽縁がないこと等から幼羽ではなく、第2暦年以降の冬羽と思われる。海上で出会った時に識別の助けになるのは、大きさ、嘴、色合い等。最大の特徴は黄白色の嘴だが、角度や光線、距離によっては意外と目立たない。本個体もかなり近付いた時点で嘴を認識できたが、曇天の夜明け直後という条件が発見を遅らせたのであろう。基本的に警戒心は強く、このように船の近くに浮いていても警戒して体を沈めているし、一度潜るとかなりの長時間になり、その間に距離も稼ぐ。


Photo_3


 顔のアップ。上に反って見える嘴は、アビ同様下嘴角が大きいことによるもので、上嘴は直線的であるのがわかる。黄白色で厚みのある嘴は、光線条件さえ良ければ遠距離からも有用な特徴となる。顔、頭部から首にかけては褐色で、喉と目の周囲は白い。額はオオハムより更に切り立って見える。成鳥の虹彩は赤っぽいが、画像で暗く見えるのはおそらく光線条件のせい。首の下部で後頚から前頚にかけて襟巻き状に広がる暗色部は、飛翔中も含め本種やハシグロアビに特徴的だが、オオハム類でも時にこのように見える個体がいるので注意が必要である。


Photo_4


 背後より。


Photo_5


 アビ類4種の顔の比較。嘴の形状や顔から首にかけての配色等に注目。ハシジロアビ以外の撮影データは下記の通り。

アビ(第1回夏羽):2008年4月30日 北海道中川郡豊頃町
オオハム(幼羽):2007年12月20日 北海道幌泉郡えりも町
シロエリオオハム(成鳥冬羽):2009年2月10日 北海道幌泉郡えりも町


(2012年3月8日   千嶋 淳)

*一連の写真は、日本財団の助成による十勝沖海鳥調査での撮影。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿