鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

150828 午後鳥見(十勝川下流域)

2015-09-27 17:07:55 | 鳥・夏

Photo by Chishima, J.
エリマキシギ幼鳥(手前)とタカブシ 2015年8月 北海道十勝郡浦幌町)


 昼前から夕方まで十勝川下流域を巡りました。小さな湿地でエリマキシギ(写真手前)やタカブシギ(写真奥)を観察していると、上空を一列に通過する大型の鳥。オオヒシクイです!例年9月第1週の初認が多いのですが、今年はいち早く渡来したようです(僕が見たのは6羽でしたが、午後には数十羽の群れも観察されたとのこと)。

 河口には1000羽以上のウミネコに混じって、40羽ほどのセグロカモメの姿もあり、沼ではハジロカイツブリやコガモも観察されるなど、北海道より北で繁殖するシギチ以外の旅鳥・冬鳥の渡来が一気に始まったなぁという印象でした。

 夕刻、数年前までカウント調査を行っていたカワウの集団ねぐらに立ち寄ったところ、ヤナギが伸びて見づらくなってはいるもののウの姿はなく、葉や枝が白くなっていないことからも利用されていないようでした。昼間の流域では普通に観察されるので、どこかへ移ったと思われます。探せるかな…。

確認種:ヒシクイ(亜種オオヒシクイ) オシドリ ヨシガモ マガモ コガモ キンクロハジロ シノリガモ ハジロカイツブリ ドバト キジバト アオバト オオミズナギドリ カワウ ウミウ アオサギ タンチョウ バン タカブシギ キアシシギ ミユビシギ トウネン エリマキシギ ウミネコ ワシカモメ セグロカモメ オオセグロカモメ アジサシ トビ オジロワシ チュウヒ オオタカ カワセミ チゴハヤブサ モズ ハシボソガラス ハシブトガラス ハシブトガラ シジュウカラ ヒバリ ツバメ ヒヨドリ ウグイス コヨシキリ ゴジュウカラ ムクドリ ノビタキ スズメ ハクセキレイ カワラヒワ ベニマシコ イカル アオジ オオジュリン


(2015年8月28日   千嶋 淳)

150827 ちょこっと十勝川中流域(幕別町)

2015-09-27 17:03:00 | 鳥・夏

Photo by Chishima, J.
カワセミ 2015年8月 北海道中川郡幕別町)


 散髪の帰り道、近所の十勝川中流域を覗いてみました。浅瀬には早くも遡上して来たサケ(シロザケ)が所々走っていました(「泳ぐ」というより「走る」という言葉が相応しい気がします。実際に見てみてください。)ただ、オオセグロカモメはまだ2羽だけで、オジロワシの姿は見当たらないなど、本当に走りなのでしょう。

 この夏は増水が少なかったようで河原にはかなり草が茂ってしまっており、シギはイソシギを2羽認めたのみ。河原から高水敷にかけて植生のある部分ではホオジロやノビタキの巣立ち幼鳥が目立ちました。アオジの多い十勝では、ホオジロはあまり多くないのですが、5年程度のヤナギやシラカンバが下草とともに潅木林を形成するこの場所は、ホオジロのお気に入りの環境
のようで、アオジより多い印象でした(もう少し堤防よりの河畔林では普通にアオジが卓越します)。

 帰路、築堤を超えて堤内側に入ると、刈り取りの終わった畑にタンチョウのつがいがいました。つがいとはいえ1羽は去年生まれの若い鳥。もう1羽へ向けて一生懸命踊っていました。中流域で日高山脈や帯広市街を背に見るタンチョウも、すっかり普通の光景となりつつあります。

確認種:キジバト アオサギ タンチョウ イソシギ オオセグロカモメ トビ カワセミ ハシボソガラス ハシブトガラス シジュウカラ ヒバリ ヒヨドリ ノビタキ スズメ セグロセキレイ カワラヒワ ベニマシコ ホオジロ アオジ


(2015年8月27日 千嶋 淳)


十勝の自然61 ウスバキトンボ

2015-09-26 22:25:14 | 十勝の自然

Photo by Chishima, J.
ウスバキトンボ 2007年8月 北海道十勝郡浦幌町)


(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん 2015年8月26日放送)


 海や川に生息する動物が、発育段階や季節によって住む場所を変えることを回遊(かいゆう)と言います。身近なところではサケの稚魚が川を下り、北の海で4年ほど過ごした後に生まれた川へ戻る行動がそれに当たります。冬に北海道の沿岸にトドが群れをなしてやって来るのも回遊です。ところが、回遊する生き物の中には海流や気流に乗って本来の分布を大きく超えた場所まで行き、そこで命尽きてしまうものもおり、「死滅回遊(しめつかいゆう)」や「無効分散(むこうぶんさん)」と呼ばれます。陸上での死滅回遊を行うのが、ウスバキトンボです。
 体長5cm弱、全身黄色っぽいトンボで春に東南アジアや南日本で発生を始め、世代交代を繰り返しながら日本列島を北上します。広い翅(はね)で風を捉え、グライダーのように飛ぶことができる上に、体の強度を落としてまで飛ぶことに適応したのがこのトンボを、北海道に到達する7月頃には沖合で目にすることもあります。
 池や水溜りの底へ、メスは腹の先で水面を叩くようにして卵を産み、数日で孵化した幼虫は1ヶ月ほどで成虫となります。しかし寒さに弱く、10月中旬には死に絶えてしまいます。結局、北海道では子孫を残せないのです。何とも儚い感じですが、いま地球に生きる生き物は、こうした涙ぐましい努力を重ねて分布を広げて来たのでしょう。それは私たち人類も一緒かもしれません。


(2015年8月18日   千嶋 淳)

十勝の自然60 サバ類

2015-09-26 22:19:33 | 十勝の自然

Photo by Chishima, J.
サバ類 2013年7月 北海道十勝郡浦幌町)


(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん 2015年8月25日放送)


 海の動物と関わっていて嬉しいことの一つに、漁師さんから新鮮な魚介類をいただけることがあります。夏から秋に旬を迎えるのがサバ。温帯・亜熱帯の海に分布するサバも、海水温の高くなる6~10月にはマサバとゴマサバの2種が北海道近海まで北上して来ます。鮮度の落ちやすいサバですが、新鮮なものを刺身で、あるいは塩と酢で軽く〆ていただくと晩酌が進みすぎて困ります。定番の味噌煮や塩焼きが美味しいのは言うまでもありません。
 北海道では釧路沖などで主にまき網によって漁獲され、ピーク時の1970年代には25万トン以上の水揚げを誇りましたがその後獲れなくなり、まき網漁の対象はマイワシへと移行しました。そのマイワシも1980年代をピークに減少し、その後はサンマ、スルメイカなどが増加しました。最近ではまたサバやマイワシが増えて来て、2012年には道東沖でのサバ漁獲量が34年ぶりに4000トンを超えました。サバやイワシ、サンマといった浮魚類は餌や生態がよく似ているものの、同時に増えることはなく、資源量の多い種が次々と入れ替わることを繰り返し、これを「魚種交替(ぎょしゅこうたい)」といいます。ただ、なぜこのようなことが起こるのか、詳しいメカニズムは明らかにされていません。
 サバの来遊する、海水温の高い時期にはマンボウ、サメ類、カマイルカなど、暖かい海からの動物が十勝沖にも多く顔を見せ、シマウマみたいな白黒模様を持つイシダイが採集されたこともあります。


(2015年8月18日   千嶋 淳)

十勝の自然59 講演会「片翼のオオハクチョウ駒ちゃん」

2015-09-26 22:09:52 | 十勝の自然

Photo by Chishima, J.
オオハクチョウの親子 2013年6月 モンゴル国)


(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん 2015年8月24日放送)


 オオハクチョウはロシア極東で繁殖し、日本で冬を越す大型の水鳥です。十勝でも春と秋に多くが通過し、一部は冬を過ごします。十勝川温泉や帯広川、あるいは郊外のデントコーン畑などでその姿をご覧になったことのある方も多いでしょう。日本で冬を越したハクチョウたちの中には事故などで怪我をして、故郷に帰れなくなってしまうものもいます。
 新潟県新発田市(しばたし)の升潟(ますがた)という湖で越冬していた1羽のオオハクチョウも、おそらく電線にぶつかって片翼を失い、渡りができなくなってしまいました。そのハクチョウを温かく見守りながら、「駒ちゃん」と呼び親しみ、「駒ちゃんは片翼のオオハクチョウ」の著書を書かれた浜田実弥子さんの講演会が今週土曜日の8月29日、14時から帯広市図書館の1階多目的視聴覚室で開催されます。駒ちゃんを観察した日々や著書に込めた思いを語られ、講演後には千嶋とのゲスト対談も予定しています。
 駒ちゃんは単独で、また時にはアヒルと一緒に過ごしているようですが、渡れなくなったハクチョウが繁殖する例が、北海道や本州の数ヶ所から知られています。これらに対して新たな「外来種」としてしっかり保護収容すべきとの意見もあります。また、ハクチョウに関しては、過剰な餌やりによる個体や生態系への影響が各地で懸念されています。
 ゲスト対談の際には会場からの質問も積極的に受け付けますので、お時間のある方は足を運んでいただければ幸いです。


(2015年8月18日    千嶋 淳)

→8月29日、無事終了いたしました。会場に足を運んでいただいた方々、どうもありがとうございました。