鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

異種間攻撃

2009-09-09 12:37:22 | 鳥・夏
Photo
All Photos by Chishima,J.
ハクセキレイを攻撃するイソヒヨドリの幼鳥 2009年8月 北海道中川郡豊頃町)


 余りにも脆くて頻繁に土砂が流失してしまうためか草も生えない海岸の砂崖に、1羽のイソヒヨドリが止まっていた。全身が褐色のメスみたいに見えるが、雨覆等各羽の先端は淡色なことから、今年生まれの幼鳥と思われる。付近で繁殖したのだろうか?道南や本州以南の海岸線では普通なこの鳥も、襟裳岬を回って道東に入るとぐっと少なくなる。それでも、渡りの時期に稀にしか記録されない釧路や根室の太平洋側とは異なり、十勝では少数が夏期に生息し、広尾町や浦幌町では繁殖も確認されている。

イソヒヨドリ(幼鳥)
2009年8月 北海道中川郡豊頃町
Photo_2


 イソヒヨドリは崖を跳躍しながら、餌となる昆虫等の無脊椎動物を探しているようだ。時折嘴を地面に打ち付けているが、それが成功しているかどうかは、双眼鏡越しではよくわからない。観察していてふとハクセキレイが1羽、1~2mの微妙な距離を保ちながらイソヒヨドリに付きまとうかのように行動しているのに気が付いた。イソヒヨドリは気になるようで、しきりに微移動を繰り返すが、ハクセキレイはやはり付いて来る。何度目かの移動の後、すぐにまたやって来たハクセキレイに向かって、イソヒヨドリは身をかがめ、両翼と尾羽を開いて、威嚇・攻撃の姿勢を示した。大きく開かれた嘴の中では、口角の黄色と港内の赤色が鮮やかだ。ハクセキレイは独特の身軽さでひらりと飛び上がってこれを交わした。これでこの寸劇もお開きかと思われたが、ハクセキレイはやはりイソヒヨドリの後方を付いて歩き、じきにイソヒヨドリは飛び去ってしまい、そこで初めて終了となった。


近接するイソヒヨドリ(右)とハクセキレイ
2009年8月 北海道中川郡豊頃町
Photo_3


 イソヒヨドリによる他種の鳥への攻撃的な行動は、ヒヨドリ、モズ、ホオジロ、スズメ等に対して知られており、ハクセキレイへの攻撃例もある。ただ、そうした敵対的な攻撃の多くは巣や縄張り、或いは餌場の付近等で成鳥が示すことが多い。今回の観察は幼鳥であり、また執着する必要の特に無い場所に思われる。人間の目にはしつこく付きまとうハクセキレイを嫌がってのように見えた。そもそもハクセキレイは何故付きまとったのだろう?イソヒヨドリが地面をつつくと多くの虫等が撹乱されて出て来る、幼鳥ゆえ餌の取り方が下手で虫は出て来るものの逃がすのでそれを掠め取るなど色々考えられるが、いずれも想像の域を出ない。


イソヒヨドリ(オス)
2009年1月 沖縄県沖縄市
Photo_4


ハクセキレイ(オス夏羽)
2008年4月 北海道中川郡幕別町
Photo_5


 崖とは反対側の海上に目を向けると、所々で間もなく始める秋サケ定置網の船が作業をしている。網や漁具の最終調整といったところだろうか。その更に沖、望遠鏡の視野の中に10頭強のカマイルカが、その名の通り鎌状の背びれを見せながら泳いでいるのを捕捉した。


カマイルカ
2008年7月 北海道目梨郡羅臼町
海中に飛び込んだ個体の左から、別の個体が浮上しかけている。道東海域では初夏から秋に多い。
Photo_6


(2009年9月9日   千嶋 淳 ;観察は8月31日)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿