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All Photos by Chishima,J.
(路肩で採餌するカシラダカ 2007年2月 北海道広尾郡大樹町)
史上稀にみる暖冬はこの地にも影響を与えているようで、先日早すぎる飛来を報じた北帰のガン類の群れは日増しに大きくなりつつある。この冬は気温、積雪とも厳しさを欠き、気温に関しては何度か「今朝はシバれたなぁ」という日はあったものの、深夜のテレビ画面に「明朝は水道管の凍結に注意」の字幕を見た回数はずいぶん少なかったように思う。雪も正月が開けた時点で平野部にはほとんど無く、帯広など内陸部では1月上旬の降雪で銀世界と化したが、海岸部では降っても降雨や暖かさですぐに融け、雪の少ない状態が続いていた。それでも、2月に入ってからの数回の本格的な降雪は、海岸部をようやく真冬らしい光景に塗り変えた。
降雪後の海岸部に鳥を見に出かけて印象的だったのは、それまで非常に少なかった小鳥の多さであった。その小鳥がユキホオジロやベニヒワ、ツメナガホオジロなどいかにも冬の北海道らしい極北からの客だったら喜びもひとしおなのだが、大部分はホオジロやオオジュリンなど従来夏鳥でごく少数が越冬するだけのもの、アトリやカシラダカなどのように多くは旅鳥として更に南を目指すものだった。ここ数年冬にも見る機会が増えているベニマシコがこの冬も多いのは降雪の前から感じていたが、実に多くの鳥が温暖さと積雪の無さに渡りを忘れて北海道にとどまっていたようで、それが雪により採餌場所を奪われたことによって、急に人目につく所に出てきたといえそうだ。
アトリ(冬羽)
2007年2月 北海道中川郡豊頃町
普通に越冬もするが、数は秋・春の渡り時が多い。
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ベニマシコ(右:メス 左:オス)
2007年2月 北海道中川郡幕別町
本来は夏鳥であるが、雪の少ない川原、海岸などでは少数が越冬する。
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こうした小鳥がよく集まる場所が2つある。一つは道路の端。除雪された道路の端には雪が積まれるが、その雪と道路の間、路肩や路側帯の部分には地上が露出し、この狭い地面に生えている草本植物の種子をつまみに、あるいは地上に落ちた種子を拾いに、種子食の強いカシラダカ、ミヤマホオジロなどのホオジロ類やアトリがやって来る。年によってはツメナガホオジロなども道路脇に現れる。また、降雪の直後はよほど餌に困ったのか、シジュウカラが小群で飛来して、やはり地上で種子を探す姿があちこちで見られた。これらの鳥の多くは腹が減っていて採餌に夢中なので、道路を車が通っても一旦は飛び立つものの、またすぐに戻って来て食事に専心する。したがって、そっと近付いて気配を隠していれば、相当な至近距離で観察できるのが特徴である。先日観察したカシラダカの群れでは、多くの個体が車の接近によって飛び立ったが、中に1、2個体、車が通り過ぎる間軽く体を伏せるか、雪の影に隠れるだけで飛ばず、車が通り過ぎた瞬間に脇目も振らず食べ始めるものもあり、図太いのか飢えているのか思わず苦笑したものだ。
ホオジロ(上:オス 下:メス)
2007年2月 北海道中川郡豊頃町
十勝では繁殖期にもあまり多い鳥ではないが、越冬個体を時々見かける。
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ミヤマホオジロ(上:オス 下:メス)
2007年2月 北海道広尾郡大樹町
西日本に多い鳥で、北海道、特に道東では少ない。
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もう一つの場所は、酪農家の庭先にある堆肥や牛舎の周辺である。発酵などの熱により融雪が進み、地面が露出して餌を取りやすくなる上に、堆肥では昆虫などの無脊椎動物、牛舎付近では牛用の配合飼料のおこぼれといった付加的な餌もある。これらの場所には大抵留鳥のスズメやカラス類が群れで居着いているが、降雪で餌が逼迫した時には堆肥にツグミやムクドリが、また牛舎周辺にはカワラヒワやアトリ、ホオジロ類もよく飛来する。こちらも道路と同様、鳥は警戒よりも目先の餌に心を奪われているので接近可能だが、観察する場所や時間を弁えないと、人様の庭先を覗き見る不審者となりかねないから注意が必要だ。
牛舎に飛来したカワラヒワ
2007年2月 北海道中川郡豊頃町
厳冬期には北方より渡来する大型の亜種オオカワラヒワと思われるものが多い。
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10年前の1996-97年の冬はベニヒワの大当たり年で、それ以外の小鳥も非常に多い贅沢な冬だった。聞けばその10年前、20年前もベニヒワの当たり年だったという。何となくの10年周期に期待を膨らませた今冬だったが、現在のところそのような気配はまったく無いばかりか、小鳥は全般的にやや低調気味ですらある。それでも、暖冬とはいえ日によっては0度を上回ること無い寒さと雪氷のもたらす厳しい飢えを、道路や人家の軒先にまで現れてしたたかに生き抜く小さな鳥たちの勇姿は、たとえ普通種ではあっても出会う度にささやかな感動と喜びを与えてくれる。
ウソ(オス)
2007年2月 北海道河東郡音更町
関東ほどではないが、今冬は平地で見る機会が多く、アトリなどとともに牛舎や道路へ姿を現すこともあった。
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チョウゲンボウ(メスか幼鳥)
2007年2月 北海道十勝郡浦幌町
雪で小鳥が増えた朝、それを餌(の一部)にするつもりか本種の姿もあった。
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(2007年2月26日 千嶋 淳)