鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

ウミアイサ(その1) <em>Mergus serrator </em>1

2012-01-29 20:34:43 | 海鳥写真・アビ目、カイツブリ目、カモ目
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All Photos by Chishima,J.
(以下比較画像のカワアイサを除きすべて ウミアイサ 2012年1月17日 北海道厚岸郡浜中町)


 翼開長は69~82cmで、サイズ的にはビロードキンクロに近く、マガモよりは少し小さい。一緒にいればカワアイサより明らかに小さいが、単独でいるとわからないことも多い。アイサ類は潜水して魚類を捕食することに特化した結果、細長くて流線型の体、細くて先が鉤型の嘴、体の後半に位置する翼等、ウ類やアビ類、カイツブリ類と共通した特徴を多く持つ。ただし、羽ばたきはカモ類に特有の速いものであり、羽衣と合わせて良い条件で観察できれば見誤ることは殆ど無い。道東へは冬鳥として10月に渡来し、翌5月まで滞在する。漁港や岸近くの海上で見られることが多いが貝類食性のクロガモ類等とは異なり、かなり沖合へも群れで出現する。また、十勝地方海岸部の海跡湖では4月から5月初めにかけて、日によっては100羽を超える大群が入る。また、渡りの時期には内陸部の河川や湖沼で観察されることもある。


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 オスは赤く細長い嘴と、黒色で光線によっては緑色の光沢を放つ顔を持つ点はカワアイサと共通するが、その後方にある白い首輪と褐色の胸部が異なる。背の前半は黒く、後半は灰色。翼上面は暗色だが次列風切から雨覆に及ぶ広い白色部があり、大雨覆、中雨覆先端の黒色部が作る2本の暗色線によって分断される。翼下面は白色部が広く、腹と合わせて翼を打ち上げた状態では全体的に白っぽい印象を作る。


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 メスは顔が赤褐色で上面が灰色、下面が白色で、上面から見た時は暗色の印象。次列風切が白色のため、中~大型カイツブリ類、特にアカエリカイツブリのように見えることがある。最も紛らわしいのはカワアイサのメスで識別点は後述するが、頭部の褐色が首や背の灰色と明瞭な境界を持たず、漸次的に変化してゆくコントラストの無さ、一様感は本種の特徴である。


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 カワアイサとの比較画像(オス)。基本的に生息環境が異なるが、漁港や内湾では同所的に観察されることがあり、渡りの時には両種ともあらゆる環境で観察されうる。頭部の黒緑色は共通するが、その後ろの白い首輪、胸の栗色はウミアイサに特有で、カワアイサは首から胸まで一様に白い。カワアイサの下面の白色は、初冬の前後にうっすらと桃色を帯びる。カワアイサでは、翼上面の白色部はウミアイサより広く、より前縁に達し、暗色線によって分断されない。


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 カワアイサとの比較画像(メス)。非常によく似るが、カワアイサの頭部の褐色はより赤みを帯び、背や翼上面の灰色はより明るい。カワアイサでは、頭部の赤褐色と首や喉の白色との境界が明瞭で、全体的にコントラストの強い雰囲気を作り出す。翼上面のパターンも微妙に異なるが、本種の場合は顔から胸に着目した方が識別は容易。水面に浮いている状態ではウミアイサの嘴がやや反っているように見える点も重要な識別点であるが、飛翔時にはわからない場合が多い。


(2012年1月29日   千嶋 淳)



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