鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

二山型

2009-02-16 23:46:01 | 鳥・冬
Photo
All Photos by Chishima,J.
ツグミ 2008年1月 北海道帯広市)


 ツグミは、日本の多くの地域で冬鳥の代表格のような鳥である。本州から九州では農耕地や市街地で普通に見ることができるし、先月訪れた沖縄本島でも、数はぐっと少なくなるが南国的な風景の中で本種に出会ったものだ。北海道でも年による渡来数の増減はあるものの、最も馴染み深い冬の小鳥の一つといえる。ただ、その渡来パターンは本州以南とは若干異なるようである。

 本州の、少なくとも私が生まれ育った北関東の平野部では、ツグミは毎年11月上旬に渡来し、それから一月以内の間くらいに数を増し、冬期は概ねその状態が続いたように記憶している。


ツグミ
2008年2月 群馬県伊勢崎市
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 より高緯度に位置する北海道では渡来はもっと早く、道北では9月下旬には早くも第一陣がやって来る。十勝地方の平野部でも例年9月末か10月の頭には、澄み切った早朝の青空から、あるいは十五夜の月が照らす夜空から聞こえてくる「クィクィ」の声に、その初飛来を知る。しかし、年にもよるがその後ツグミの数が大きく増えることは少なく、むしろ秋の深まりと共にまた少なくなってゆくような印象がある。
 根雪が降って本格的な冬を迎えた後、慌ただしい年の瀬あたりから再びツグミが増え始める。そして年が明けた1月から2月頃にかけてその数は最大となり、多い年には市街地の街路樹などでも至る所で群れを見かける。庭先の餌台に姿を現して、最初のおどおどした様が嘘の様に日々図太くなってゆくのもこの頃である。


街路樹のナナカマドに飛来したツグミ
2006年2月 北海道帯広市
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 どうやら、十勝の平野部におけるツグミの渡来数には、秋の渡来当初と厳冬期の1~2月と2つのピークがあるようで、数は後者の方が圧倒的に多い。本州以南とは渡来する集団が異なるのか、渡りコース、あるいはその核心からの距離が異なるのかはわからないが、このような違いが存在する。北陸から東海にかけての山岳地帯には秋期本種が大挙して飛来し、かつては霞網猟でその名を轟かしたくらいだから、大陸から日本海を渡って直接本州に飛来するのかもしれない。もしかしたら北海道でも第一次ピークの時点で山地に飛来して、そこで木の実などの食糧を食い尽してから厳冬期に下界に降りてくるのかもしれないが、その割には晩秋や初冬に山でツグミの大群を見たことはないし、そうした話を聞いたこともない。


ツグミの飛び立ち
2006年2月 北海道帯広市
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(2009年2月16日   千嶋 淳)