![Img_8084 Img_8084](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/21/71/4483b40ca8a1aecaa6e00d5e82b983e8.jpg)
All Photos by Chishima, J.
(ツノメドリの若鳥 以下すべて 2014年7月 北海道十勝沖)
今年度の十勝沖調査は月1回のペースで行っていますが、7月19日の調査で通常は出ても1、2羽のエトピリカが9羽も確認され、その数日前には衰弱したエトピリカが海岸で保護される(後に死亡)など何らかの海の異常が発生していると考えられたため、その状況を記録しておくべく有志を募って緊急調査を実施しました。ただし、予算の関係で調査範囲は水深100m以浅までとし、実際には波の影響もあって水深60mまでの沿岸域での調査となりました。降雨にくわえて波も高くなることが予想される天気予報で実施が危ぶまれましたが、幸い、雨はごく短時間ぱらっと降った程度で、波も多少のうねりはあったものの被るほどではなく、むしろ霧が無くて快適なクルーズでした。
懸案のエトピリカは計9羽(すべて若鳥)が観察されました。前回と同じ数ですが、前回は水深400mまで調査して9羽だったのに、今回は60m以浅の沿岸域だけでこの数でした。このことから、引き続きエトピリカ若鳥が例年以上に多く、かつ沿岸域に集中的に分布していると考えられます。最も陸地から近い出現地点の水深は18mでした。エトピリカの若鳥は通常、外洋に分散して分布しています。他の海鳥が著しく少なかったことから察しても、豊富な餌に惹かれて集まっているわけではなさそうです。今回は特段衰弱してそうな鳥はいなかったものの、警戒心は通常より薄く、船で接近してもあまり逃げませんでした。千島列島沖等本来の分布域で十分な餌が捕れず、漂流しているうちに沿岸親潮に乗って道東太平洋沿岸に到達してしまうのかもしれません。霧多布周辺海域では、1回の調査で30羽を超える本種の若鳥が観察されています。この「異常事態」については引き続き調査を続けると同時に、北海道から千島にかけての海洋に関する情報も合わせて収集して分析する必要があるでしょう。
エトピリカの若鳥
![Img_7631 Img_7631](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/40/4d/7e7392fcfb0d45b7f64dcbbd85842dd6.jpg)
前回と比べて、アカエリヒレアシシギの群れが目立ちました。極北の短い夏に繁殖したヒレアシシギ類は7月下旬には早くも秋の渡りを開始しますが、例年、早い時期の海上ではハイイロヒレアシシギが卓越するので珍しい現象といえます。ちなみに、この時期に観察されるのは成鳥ばかりで、幼鳥はまだ繁殖地に残っているようです。ヒレアシシギ類以外に、数は少ないもののトウゾクカモメ類や港でキアシシギが観察される等、盛夏の中にも徐々に秋色を帯びて来た海上でした。ただ、いつもの年であれば優占種となるハイイロミズナギドリやウトウは依然として少なく、全体的には鳥の非常に少ない状態が続いています。調査終了後は番屋で魚のフライや汁、煮ツブ等の魚介類に舌鼓を打ちながら、親睦を深めました。十勝だけではなく旭川や由仁、釧路等遠方からいらして下さった有志の皆様、どうもお疲れ様でした。次回調査は8月下旬を予定していますが、今回のような参加者で船代を頭割りする形でのチャーターは可能ですので、希望される方はご相談下さい。
確認種:シノリガモ クロガモ コアホウドリ クロアシアホウドリ ハイイロミズナギドリ ハイイロウミツバメ ヒメウ カワウ ウミウ アオサギ キアシシギ アカエリヒレアシシギ ハイイロヒレアシシギ ウミネコ ワシカモメ オオセグロカモメ オオトウゾクカモメ トウゾクカモメ ケイマフリ カンムリウミスズメ ウトウ ツノメドリ エトピリカ ハシボソガラス ハシブトガラス ハクセキレイ 海獣類:カマイルカ ネズミイルカ
海上で羽ばたくカンムリウミスズメ・非生殖羽
![Img_7866 Img_7866](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0f/80/777471f8e1e84f9e045b5fcd7a121bbf.jpg)
(2014年7月27日 千嶋 淳)
*十勝沖調査は、NPO法人日本野鳥の会十勝支部、漂着アザラシの会、浦幌野鳥倶楽部が連携して行っているものです。参加を希望される方はメール等でご連絡下さい。