鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

十勝の自然3 ガン類とオオハクチョウ

2015-04-28 22:18:17 | 鳥・春

Photo by Chishima, J.
オオハクチョウヒシクイなどの大型水鳥 2013年4月 北海道中川郡豊頃町)

(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん)

 浦幌町、豊頃町から池田町にかけての十勝川下流域は、春と秋に多数のガン類やオオハクチョウが羽を休める、国内でも有数の大型水鳥の中継地です。オオハクチョウは帯広川や十勝川温泉でも見られるので、ご存知の方も多いでしょう。ガン類はカモとハクチョウの中間くらいの大きさで、カムチャツカなどロシア極東で夏に繁殖し、東北や北陸で冬を越す行き帰りに十勝へ立ち寄り、渡りに向けたエネルギーを蓄えます。
 1万羽を超えるマガン、5000羽以上のオオヒシクイ、2000羽以上のオオハクチョウにくわえ、近年では希少種のハクガンやシジュウカラガンも群れで飛来し、沼や川、農耕地はこれらの水鳥で賑わいます。一方で、畑のコムギやジャガイモを食べてしまうこともあり、農業に携わる方からは害鳥視されることも少なくありません。
 警戒心の強い鳥なので、観察の際には近寄りすぎない、車から降りないなどの注意が必要です。同時に、牧草地を含め農地へ立ち入らない、農作業の邪魔になるような車の止め方をしないといった地域への配慮も忘れないようにしましょう。NPO法人日本野鳥の会十勝支部のホームページでは、この地域での鳥の見方やマナーも紹介しておりますので、是非参考にしてください。


(2015年4月8日   千嶋 淳)


十勝の自然2 フクジュソウ

2015-04-28 22:04:34 | 自然(全般・鳥、海獣以外)

Photo by Chishima, J.
フクジュソウハナアブ類 2014年3月 北海道中川郡池田町)

(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん)

 早春、雪が解けて真っ先に花を咲かすのがフクジュソウです。残雪や枯野の中で天を仰ぐ鮮やかな黄色の花には毎年ワクワクし、元気をもらいます。北国の長い冬の後だからでしょうか。元日草の別名もあり、本州では冬のうちから花を咲かせますが、十勝では3月後半から4月前半が開花期です。
 いくつにも分かれた花びらで花の中心に熱を集め、ハナアブなどの昆虫を呼び寄せて花粉を運んでもらいます。そのため、晴れた日中に目一杯開いている花は、夜や悪天候の時には閉じてしまいます。公園や庭先にも多い花ですので、よかったら実際に確かめてみてください。
 アイヌ語名は「クナウノンノ」。ノンノは花を意味し、霧の女神クナウが肉食獣テンとの結婚を拒んだがため草にされてしまい、テンがまだ不活発な早春に雪の間から顔を出し、父のいる天を懐かしんでいるという伝説に因んだ名前です。
 見た目もきれいで思わず山菜として食べたくなってしまうかもしれませんが、全体に毒があり、嘔吐や呼吸困難を起こすこともあるので、気を付けましょう。美しい花を愛でたのが水辺なら、近くに同じく早春を告げるエゾアカガエルやその卵があるかもしれず、それらを探すのもまた一興です。


(2015年4月7日  千嶋 淳)

十勝の自然1 ヒバリ

2015-04-28 21:51:14 | 鳥・春

Photo by Chishima, J.
囀りながら天に昇るヒバリ 2013年4月 北海道中川郡豊頃町)

(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん)

 冬の寒さが厳しい北海道では春から夏に繁殖のため渡ってくる「夏鳥(なつどり)」が圧倒的に多く、その先駆けがヒバリです。年によってはまだ雪や氷の残る3月20日過ぎにはもう、本州より南の越冬地から十勝に帰ってきます。
 帰ってきてすぐは酪農家の堆肥場に群がって餌を食べているか、「ビュルル」と地味な声で鳴くだけで目立ちませんが、一週間もすると複雑な、歌のようなさえずりを奏でながら上空を上ってゆくようになります。俳句で春の季語にもなっている「揚げひばり」というやつです。
 畑、河川敷、牧場など草丈の低い草原に住み、全国的にはそうした環境が減っているため、絶滅のおそれのある動物リスト(レッドデータブック)にリストアップされている都府県もあります。郊外に農耕地や牧場の広がる十勝ではまだまだ多く、帯広市の鳥にも指定されています。
 四季の自然と関わりの深かったアイヌは、ヒバリにもいくつかのアイヌ語名を残していますが、釧路地方などでは「チャランケ・チリ(談判する鳥)」と呼ばれました。賑やかにさえずりながら空を上ってゆく姿が、あたかも天に物申しているように見えたのでしょう。
 ヒバリに始まった夏鳥の渡来は4月後半から5月にピークを迎え、6月はじめのエゾセンニュウまで続きます。


(2015年4月6日   千嶋 淳)

150408 十勝川下流域

2015-04-28 21:24:25 | 鳥・春

Photo by Chishima, J.
一斉に飛び立つハクガンの群れ 2015年4月 北海道十勝川下流域)


 晴天にほだされて、またしても半日鳥見に出かけてしまいました。この2日で湖沼の解氷が飛躍的に進み、大部分の箇所で開水面が広がっていました。氷漬けとなった魚を求めてワシ類が集まり、狭い水面にガン類が群がる、早春ならではのミラクルは既にそのピークを越えたようです。
 季節の移ろいはタンチョウからも感じることができました。今日だけで4巣、特に探したわけでもないのに抱卵中の巣が見つかりました。ヒナの孵る5月まで、卵が水没してしまうような大規模な出水の無いことを願いたいものです。
 このところ気になっていることにカモ類の少なさがあります。例年、3月末から4月上旬は多くのカモ類で賑わい、特にオナガガモやヒドリガモは数千から万を超える群れが入ることもあるのですが、今年は種類は一通り見られるものの、数が桁違いに少ないのです。越冬地の本州以南での大量死のニュースは聞いていないので、暖かさにかまけて早く北上してしまったのでしょうか。
 沼の氷はほぼ解けましたが、ガン類やオジロワシは今月末まで楽しむことができますので、お時間の取れる方は是非見にいらして下さい。ハクガンやシジュウカラガンの大群を目の当たりにするのは、本当に夢のような気分です。ただし、車の止め方や鳥との接し方に関して、いくつかの注意事項があります。詳しくはNPO法人日本野鳥の会十勝支部のホームページを参照下さい。また、これは個人的な思いですが食事や給油、宿泊などは地元である浦幌町、豊頃町、池田町の店や施設を利用いただけると幸いです。現時点では無価値もしくは害鳥とみなされている鳥たちに、地域を潤すポテンシャルを示すことができるかもしれないからです。


確認種:ヒシクイ マガン ハクガン シジュウカラガン オオハクチョウ オカヨシガモ ヨシガモ ヒドリガモ マガモ カルガモ オナガガモ コガモ キンクロハジロ スズガモ クロガモ ホオジロガモ ミコアイサ カワアイサ ウミアイサ アカエリカイツブリ ドバト カワウ アオサギ オオバン カモメ オオセグロカモメ トビ オジロワシ ハイタカ アカゲラ ハシボソガラス ハシブトガラス ハシブトガラ シジュウカラ ヒバリ ヒヨドリ ゴジュウカラ スズメ ハクセキレイ カワラヒワ シメ


(2015年4月8日   千嶋 淳)

150404/06 十勝川下流域半日鳥見

2015-04-19 12:25:32 | 鳥・春

Photo by Chishima, J.
日高山脈を背にマガンの群れ 2015年4月 北海道十勝川下流域)


 室内作業が溜まっていますが、好天と氷の状態が良いのに耐え切れず、一昨日と今日は昼前後に室内仕事を切り上げ、十勝川下流域に繰り出しました。一応、「観察会や講演のネタ&画像集め」という名目にしていますが、ほとんど遊んでいるようなモンです(笑)。
 4日は土曜日だったこともあって、三日月沼周辺には帯広はもちろん道内各地のナンバーの車が集結して、ハクガンを追いかけていました。取付道路のキャパには限界があるので、当然、路上駐車の列ができ、車から降りて三脚と大砲を広げて仁王立ちになるなどマナーの悪い方もいらっしゃいました。やはり、駐車帯と観察スペースを整備して、マナーについての啓発も図る必要があると感じました(これに関して、助成金を一つ申請していたのですが、残念ながら不採択でした)。
 今日(6日)は平日だったためか人もほとんどおらず、のんびりと鳥見を楽しめました。マガンがかなり増えてきていて、群れの中にはカリガネの姿もありました。よく利用する沼が道路側のわずかな部分しか氷が解けてないので、群れの賑やかさを近くで味わうことができ、至福の時間でした。別の沼にはアカエリカイツブリが帰って来てました。
 来週には湖沼の解氷がさらに進み、水鳥たちはより分散してしまうと思います。早春のみに楽しむことのできる、大型水鳥たちとの近距離での出会いや群れの迫力を、是非いまのうちに体験して下さい!

 2日間(どちらも半日ですが)で確認されたのは、以下の61種でした。

確認種:ヒシクイ マガン カリガネ ハクガン シジュウカラガン オオハクチョウ オシドリ オカヨシガモ ヨシガモ ヒドリガモ マガモ カルガモ ハシビロガモ オナガガモ コガモ キンクロハジロ スズガモ シノリガモ クロガモ ホオジロガモ ミコアイサ カワアイサ ウミアイサ アカエリカイツブリ カワラバト(ドバト) キジバト ヒメウ カワウ ウミウ アオサギ タンチョウ ツルシギ カモメ ワシカモメ シロカモメ オオセグロカモメ トビ オジロワシ オオワシ ノスリ コアカゲラ ハヤブサ モズ ハシボソガラス ハシブトガラス ハシブトガラ ヒガラ シジュウカラ ヒバリ ヒヨドリ エナガ ゴジュウカラ ムクドリ ツグミ スズメ ハクセキレイ アトリ カワラヒワ ベニマシコ シメ オオジュリン 


(2015年4月6日   千嶋 淳)