All Photos by Chishima,J.
(以下すべて コオリガモ 2011年2月17日 北海道十勝郡浦幌町)
北極圏を囲むように分布し、冬もあまり南下しない海ガモ類。道東へは冬鳥として11月上・中旬に渡来し、翌5月上旬まで滞在する。釧路以東では多く、漁港や岸近くの海上でも普通に観察される。十勝では、陸からは1~数羽が稀に観察される程度であるが、船を用いた調査では沿岸域でやや普通に観察される。それ以南でも室蘭港や青森県大湊周辺では群れを見ることがあり、局所的に分布するものと思われるが、東北地方中部以南では稀である。越夏記録はあるものの、数、頻度とも他の海ガモ類よりは少ない。
本種は3ステージの複雑な換羽様式を示すが、越夏個体や渡去直前を除き、観察される個体の多くは冬羽である。冬期のオス成鳥は、上の画像のように著しく長い中央尾羽(英語ではsteramer(吹き流し)と称される)をはじめ、全体的な体色や体型、嘴先端部のピンク色、首や頭部側面の暗色斑等、光線や距離に問題が無ければ容易に判別できる特徴を多く持つ。
オスだが中央尾羽は短く、嘴先端のピンク色を欠き、顔は白色。換羽が遅いか若い個体と思われる。渡り時には水平線高くを飛ぶことも多いが、越冬中の移動や逃避にはこのように海面近くを飛ぶ傾向がある。すべての羽衣において、翼の上下面とも暗色なのは本種の特徴。ただし、近距離では羽軸が白っぽく光ることがあり、また雨覆の先端はやや淡色。
メス。中央尾羽の突出を欠くためオスより寸胴な体型に見える。全体的な体色も、特に翼を打ち下ろした時には暗色な印象を受ける。首の側面にはオス同様暗色斑があり、その上部もやや暗色がかるので、首の下方はそれより後方の暗色部とのコントラストで首輪状に見える。胸を除く体下面は白っぽく、顔と同様、順光や暗い背景に対してはよく目立つ。両性とも首は短くて太めで、例えばシノリガモのような首から頭部にかけての顕著な膨らみは認められない。
海上を飛ぶオス(左)とメス。低い飛翔高度や速い羽ばたき、丸みのある体型、白黒の体色、特に腰の両側まで下面の白色が及ぶ点等から、メスや若鳥はウミガラス類やケイマフリ類といった中型以上のウミスズメ類のように見えることがある。これは海上に浮いている時も同様。
英国と米国で鳥名が異なるのは、アビ類、コクガン、トウゾクカモメ類、ハシブトウミガラス等海鳥の世界でも多く見られるが、本種も同様で英名はLong-tailed Duck、米名はOldsquaw。前者はオスの見たままの命名で、後者は白と褐色の混じる体を「老女」に見立てたものである。
(2012年1月22日 千嶋 淳)
*一連の写真は、日本財団の助成による十勝沖海鳥調査での撮影。
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