鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

6月20日(金)十勝沖海上調査スライド上映会のお知らせ

2014-06-13 15:29:25 | お知らせ
Img_0002

 今年度で5年目を迎えた十勝沖海鳥・海獣調査。四季折々に様々な海の動物たちと出会ってきました。当日はこれまで撮り溜めた海鳥・海獣はもちろん、海上や調査の風景、釣りや食事の楽しいひと時などの写真を上映します。入場無料、申し込み不要ですので、皆様お誘いあわせの上、是非ご参加下さい。

日時:2014年6月20日(金) 18時~
場所:十勝川インフォーメーションセンター(帯広市大通北2)
入場無料 申し込み不要

*19時より同じ会場でNPO法人日本野鳥の会十勝支部の総会が開催されますが、総会に参加されない方、野鳥の会十勝支部会員以外の方もスライド上映会には参加いただけます。
*当日は「十勝の海の動物たち」、「北海道の海鳥1 ウミスズメ類①」も購入いただけます。

(千嶋 淳)




霧多布沖の海鳥・海獣?鳥山

2014-06-13 15:20:54 | 海鳥
Img_6241a
All Photos by Chishima, J.
オオミズナギドリなどの鳥山 以下すべて 2013年10月 北海道厚岸郡浜中町)


NPO法人エトピリカ基金会報「うみどり通信」第8号(2014年3月発行)掲載の「2013年度霧多布沖合調査(その2)」を分割して掲載、写真を追加 一部を加筆・削除)


 午前5時半、霧多布岬と帆掛岩の間からのご来光を拝みながらの出航となりました。ただし、その後は雲が広がってしまい、最後まで天候に恵まれない今年度でした。季節の変わり目にしては穏やかな海で、帆掛岩周辺では15隻ほどの昆布船が操業し、沖合の所々でも漁船やそれに群がるカモメ類やアホウドリ類が観察されました。圧巻は何と言っても、小島からケンボッキ島の沖合に見られた鳥山でしょう。約1500羽のオオミズナギドリを中心に少数のハイイロミズナギドリやアカアシミズナギドリが次々と海面に飛び込み、それらを襲撃するトウゾクカモメの姿もありました。カマイルカの小群も周囲を泳ぎ回っていたことからイワシかサバか、何らかの浮き魚の群れがいたのは間違いありません。ヒトも鳥も、長い冬を前に海からの恵みを享受していた秋の一日でした。

オオミズナギドリ
Img_6322


(2014年3月   千嶋 淳)


*本調査は地球環境基金の助成を得て、NPO法人エトピリカ基金が実施しているもの


霧多布沖の海鳥・海獣?オオトウゾクカモメ(9月10日)

2014-06-07 13:35:44 | 海鳥
Img_2010
All Photos by Chishima, J.
オオトウゾクカモメ 以下すべて 2013年9月 北海道厚岸郡浜中町)


NPO法人エトピリカ基金会報「うみどり通信」第8号(2014年3月発行)掲載の「2013年度霧多布沖合調査(その2)」を分割して掲載、写真を追加 一部を加筆・訂正)


 相変わらず不機嫌な空の下、港を出航しましたが後に好転し、秋晴れを映した海の青さが目に眩しい、今年度では稀な調査でした。鳥ではありませんがサメがやたらと目につき、試しに数えてみたら117頭にもなりました。ネズミザメ科のアオザメやネズミザメと思われ、クロアシアホウドリやカンムリウミスズメの増える、海水温の高い時期によく見られるものの、これほどの数は初めてで驚きました。

 鳥はオオミズナギドリが増えて来たほか、オオトウゾクカモメが度々現れ、6羽を数えました。7月以降度々出現し、前回(8月26日)も5羽を記録しましたが、過去3年の調査では2012年に2回、1羽ずつ現れただけの珍鳥ですので、今年は当たり年だったといえます。このオオトウゾクカモメの故郷は遠く南極大陸。ペンギンのヒナを襲っている映像をテレビ等でご覧になった方もいるかもしれません。南半球の夏(こちらの冬)に繁殖を終え、太平洋を北上して来るのです。この鳥を日本で初めて記録したのが松平頼孝です。子爵で鳥類学者であった彼は今から100年近く前、神奈川県の相模湾で漁師が「蛇の目」と呼ぶ大型で風切に白斑のあるトウゾクカモメ類を、カツオ漁船を改良した自前の採集船から苦労して採集し、後に別の学者によって「カタラクタ・マツダイラエ」の学名が献名されました。実はそれより先に外国で記載されており、残念ながらその名は使われなくなりましたが、硫黄列島で繁殖するクロウミツバメの学名「オケアノドロマ・マツダイラエ」に現在でも彼の名前が活きています。


コアホウドリ
Img_1783


ハイイロヒレアシシギ
Img_1237


(2014年3月   千嶋 淳)


*本調査は地球環境基金の助成を得て、NPO法人エトピリカ基金が実施しているもの



霧多布沖の海鳥・海獣?シロハラトウゾクカモメ(8月26日)

2014-06-06 11:51:22 | 海鳥
Img_0352
All Photos by Chishima, J.(シロハラトウゾクカモメの幼鳥 以下すべて 2013年8月 北海道厚岸郡浜中町)


NPO法人エトピリカ基金会報「うみどり通信」第8号(2014年3月発行)掲載の「2013年度霧多布沖合調査(その2)」を分割して掲載、写真を追加 一部を加筆・訂正)


 ここ数年の調査で、夏の霧多布沖に多くのカンムリウミスズメのいることがわかってきたため、同種の保全に取り組む日本野鳥の会の職員2名が同乗され、共に沖を目指しました。相変わらずの曇天は後半、青空が覗くまでに回復したものの、秋風の吹き始めた海上は舳先が時折波を被るほどでした。肝心のカンムリウミスズメは6羽と例年より少なめでした。波浪で小型の海鳥が見えづらかったせいもありますが、この夏は海鳥の分布がいつもと異なり、アホウドリ類が例年になく多い一方、ウミスズメ類は少なめでした。


 大黒島を望む西側の海域は漁場を目指すサンマ船団と、それに付き従うアホウドリ類で賑わっていました。トウゾクカモメ類が多かったのも季節の移ろった証でしょう。その大半はトウゾクカモメでしたが、船の脇を飛び去って行った写真の鳥。現場では観察時間も短く「トウゾクカモメの一種」としましたが、写真を検討した結果、体や嘴が細くて華奢、嘴の前半が黒い、初列風切の白い羽軸が2~3本などの特徴からシロハラトウゾクカモメ幼鳥と同定できました。本調査では初の出現種です。トウゾクカモメ類は尾羽に特徴のある成鳥夏羽での識別は容易ですが、幼鳥や若鳥の識別は難しく、謎な部分も多くあります。調査でも何割かは「トウゾクカモメの一種」と記録せざるを得ません。手軽に多数の画像の撮影が可能になったデジタル時代だからこそ多くの写真を残し、比較や議論を重ねれば新たな発見に繋がるはずです。デジカメの普及によって海鳥業界(んなモノあるのか?)は新たな局面を迎えました。
 この日撮影された2羽のカラーリング付きクロアシアホウドリを山階鳥類研究所に照会してもらったところ、小笠原諸島の聟島、母島の各列島でヒナの時に放鳥されたことが判明しました。


カラーリングの付いた小笠原諸島生まれのクロアシアホウドリ
Img_0435


水平線に浮かぶ大黒島
厚岸沖にある、ゼニガタアザラシコシジロウミツバメの重要な繁殖地。10年ほど前までは漁師の夫婦が住んでいた。
Img_7727


(2014年3月   千嶋 淳)


*本調査は地球環境基金の助成を得て、NPO法人エトピリカ基金が実施しているもの



霧多布沖の海鳥・海獣?ウミスズメ(8月5日)

2014-06-05 19:26:06 | ゼニガタアザラシ・海獣
Img_7983
All Photos by Chishima, J.
ウミスズメの親子 以下すべて 2013年8月 北海道厚岸郡浜中町)


NPO法人エトピリカ基金会報「うみどり通信」第8号(2014年3月発行)掲載の「2013年度霧多布沖合調査(その2)」を分割して掲載、写真を追加 一部を加筆・訂正)


 今年は中々好天に恵まれず、写真も鉛色のものばかり溜まってゆきます。この日も厚い雲に覆われた霧多布港を出ました。そして海鳥も少ない…例年なら記録が追い付かないくらい立て続けに現れるウトウやハイイロミズナギドリの姿もぽつりぽつりと寂しい限り。

 そんな中、岸から5~6km、水深にして50m弱の沿岸部で成鳥1羽、ヒナ1羽のウミスズメ家族群と出会えたのは幸運でした。ヒナは鳥らしい羽が生えて来た一方、背中には未だぽわっとした綿毛を残し、「チィー」と弱々しい声で鳴いて親鳥の後を追っていました。孵化から約2日で巣を離れ、1ヶ月以上海上で親鳥の世話を受けながら育つウミスズメの繁殖については、国内ではほとんどわかっていません。前回(7月21日)も2組を観察し、今年の霧多布では計3組の家族群が出現しました。これらは単に記録を増やしただけでなく、今まで不明だったヒナの成長段階を繋ぐ、大切な役割を果たしてくれました。これらと、野鳥の会十勝支部などによる十勝沖調査と合わせて道東から8例の家族群の記録が得られたので、9月に名古屋で開かれた日本鳥学会2013年度大会で「道東太平洋におけるウミスズメの家族群観察記録ならびに洋上分布」と題してポスター発表を行いました。洋上分布の方は省略しますが、家族群の記録で重要なのはヒナの成長度合から6月末か7月上旬に孵化すると考えられ、6月上旬の孵化が多い日本海側の天売島とは異なる繁殖集団のある可能性が高いことを示せた点です。道東か南千島にあるはずの営巣地や育雛海域での生態をいつか垣間見たいという、ハードルの高い夢を持たせてくれた調査でした。


ウトウ
Img_7718a


ゼニガタアザラシウミウ
Img_7523a


(2014年3月   千嶋 淳)


*本調査は地球環境基金の助成を得て、NPO法人エトピリカ基金が実施しているもの