鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

十勝の自然40 拡大版 主に海鳥

2015-07-27 12:37:21 | 十勝の自然

Photo by Chishima, J.
アホウドリ若鳥 2014年6月 北海道十勝沖)


 FM-JAGA開局21周年記念特別番組 「21周年感謝祭!JAGAフェスタ2015!24時間つながるんだからぁ♪」中で、7月8日(水)午前4時から5時まで、 番組「KACHITTO」(月-木)内のコーナー「十勝の自然」の拡大版を1時間放送。ということで今回は番組に出演させていただき、主に十勝沖の海鳥、アホウドリ類、カンムリウミスズメ、エトピリカなどについてお話させていただきました。

 そして、8月1日(土)午後5時より再放送の予定です。FM JAGAが聴けないエリアでも、サイマルラジオなどのインターネットで聴くことができます。噛みまくってるし、後半は声がかすれてるしで、正直あまり聴いて欲しくないところですが、十勝沖の海鳥について興味のある方は是非どうぞ。

十勝の自然39 ノゴマ

2015-07-27 10:05:49 | 十勝の自然

Photo by Chishima, J.
囀るノゴマのオス 2012年7月 北海道中川郡豊頃町)


(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん 2015年7月7日放送)


 日本では北海道でしか繁殖しない鳥がいて、多くの内地のバードウオッチャーを北海道へ誘(いざな)っています。シマフクロウ、エゾライチョウなど定住している鳥だけでなく、エゾセンニュウやシマアオジといった夏鳥にもそれらは少なくありません。
 ノゴマも、岩手県の高山帯で少数の繁殖例があるものの、日本ではほとんど北海道だけで繁殖する小鳥です。「原野にいるコマドリのような鳥」が語源で、スズメより一回り大きな茶色い体の中で、ひときわ目立つ喉から胸の赤にちなんだ「日の丸」の俗名もあります。「赤い鳥」を意味するアイヌ語名「フレ・チカップ」も、その赤に由来するものでしょう。
 東南アジアや八重山諸島で冬を過ごし、5月上・中旬に北海道へ帰ってきます。湿原、河川敷、農耕地など海岸から平野部の、低い木が混ざった草原に多く生息しますが、面白いことに高い山の、森林限界を超えたハイマツ帯にも多数分布します。どうやら森林が苦手なようなのですが、山の広い範囲にある森林を飛び越えてハイマツの、背の低い林があるのを知っていることに驚きを覚えます。
 潅木やオオイタドリの上にあるソング・ポストで「ヒーヒョロチョロチュイ…」と澄んだ声で囀り、同じ声なのに、5月の薫風を受けた晴れた川縁で聞くと陽気に、7月の霧に包まれた海岸で聞くと物哀しく聞こえるから不思議なものです。長い脚で器用に地上を跳ね、餌の昆虫やミミズを捕まえている姿もまた、よく目にします。


(2015年7月5日   千嶋 淳)

十勝の自然38 ナキウサギ

2015-07-26 15:24:10 | 十勝の自然

Photo by Chishima, J.
ナキウサギ 2006年6月 北海道河東郡鹿追町)


(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん 2015年7月6日放送)


 夏山登山の楽しみの一つに、ナキウサギとの出会いがあります。汗を拭きながらイソツツジやコケモモのお花畑を進んでゆくと、岩の積み重なった「ガレ場」が点在します。その岩の上で、まるで瞑想するようにじっと天を仰いでいるのがナキウサギ。時々、思い出したように「ピチッ、ピチッ」と鋭い声で鳴いて、岩の間を走ります。
 ネズミを大きくした程度の大きさ、短い耳や足はウサギに見えませんが、れっきとしたウサギの仲間です。主に大雪山や日高山脈の岩場に暮らし、永久凍土があるなどで冷たい風の吹き出す岩場があれば、標高の低い場所にも生息します。
 日本では北海道にしかいませんが、同じ種はロシア、モンゴルなどに広く分布します。氷河期の間、水深の浅い宗谷海峡や間宮海峡は海面が下がって、大陸やサハリンと何度も陸繋がりとなりました。その時にやって来た祖先が、暖かくなってから高い山や寒い場所に取り残されました。「氷河期の落し子」などと呼ばれるのはそのためです。
 8月中旬。高山帯のナキウサギは草を刈り取って岩の下に貯えはじめます。9月には最も熱心に貯え、バケツ1~2杯分もの植物が乾燥野菜のようになって冬を迎えます。一年の半分から3分の2が草木の枯れている、厳しい環境を生き抜くためには、夏の間から頑張って食べ物を集めなければならないのです。


(2015年7月1日   千嶋 淳)

150706 プライベートガイド

2015-07-26 15:04:06 | 鳥・夏

All Photos by Chishima, J.
クロツグミのオス 以下すべて 2015年7月 北海道十勝管内)


 私の郷里でもある群馬県からのお客さん3名と、十勝での探鳥を楽しみました。群馬にいた時分には面識は無かったのですが、奥様の実家が十勝である縁で十勝支部会員になって下さったり、以前にワシクルーズやガイドを利用して下さった方々です。こうして、知己を得た方からもご用命いただけるのは本当にありがたい限り。

 事前の打ち合わせで「エゾライチョウとクマゲラを見たい」というご要望をいただき、クマゲラはともかく、エゾライチョウは親子で林道に出て来る可能性もあるので、午前6時、山へ向かいました。繁殖期も既に折り返し、最盛期に比べると寂しいもののオオルリ、キビタキ、ムシクイ類など森の歌い手が囀り、低い霧が垂れこめていたためかトラツグミの哀しげな「ヒー」も随所で聞かれました。それらにくわえ、ジュウイチ、ミソサザイなどの声が、ここが山であることを教えてくれます。

 エゾライチョウは幸運にも3組の親子と出会うことができました。特に3組目はいち早く発見して時間をかけて近付いたこともあり、近距離でじっくり観察できました。クマゲラは姿こそ見れなかったものの、遠くで鳴く声を一応聞きました。

 他にもオシドリの親子やアカハラの巣立ち雛などを観察し、来た道を引き返している途中、やけに小鳥が騒いでいる一角があって車を止めると、50mほど先の林内の地上(またはその近く)から大型の猛禽類がふわりと舞い上がって低い枝に止まりました。クマタカの若鳥です。生憎、枝が混んでいて全身は見えませんでしたが、精悍な目つきや圧倒的な存在感を感じることはできました。小鳥たちが騒いでいたのは、クマタカの存在を意識してのことだったのでしょう。


アカハラ幼鳥


 その後は昨日、除草直後で多くの鳥が地上で採餌していた公園を訪れ、アカゲラをはじめ身近な小鳥を堪能しました。アカゲラの幼鳥は落ち葉を跳ね除けながら夢中で地上採餌を繰り返していましたが、あれは果たして効率が良いのか悪いのか…。付近の湿地で草原性の小鳥を見た後は一気に海岸付近まで走り、ヒナが健やかに育つアカエリカイツブリの親子を観察してから出発地に戻り、解散しました。

 今回はご利用いただき、ありがとうございました。機会があれば、今度は群馬で一緒に鳥見をさせていただきたいものです。

確認種:エゾライチョウ オシドリ マガモ アカエリカイツブリ キジバト アオバト アオサギ タンチョウ ジュウイチ ツツドリ カッコウ ハリオアマツバメ トビ クマタカ コゲラ オオアカゲラ アカゲラ クマゲラ ヤマゲラ モズ ハシボソガラス ハシブトガラス キクイタダキ ハシブトガラ ヒガラ シジュウカラ ヒバリ ショウドウツバメ ヒヨドリ ヤブサメ エゾムシクイ センダイムシクイ コヨシキリ ゴジュウカラ キバシリ ミソサザイ ムクドリ コムクドリ トラツグミ クロツグミ アカハラ ノゴマ ノビタキ コサメビタキ キビタキ オオルリ ニュウナイスズメ スズメ キセキレイ ハクセキレイ カワラヒワ ベニマシコ シメ イカル アオジ オオジュリン (56種)


囀るキビタキのオス


(2015年7月7日   千嶋 淳)

150705 プライベートガイド

2015-07-26 14:28:04 | 鳥・夏

Photo by Chishima, J.
アカゲラ幼鳥 2015年7月 北海道中川郡池田町)


 兵庫からいらしたご夫婦を案内させていただきました。レンタカーで道内を回っていて、前日は糠平の泊まりということなので、早朝は糠平で自分たちで鳥を見てもらい、9時半に池田に来ていただき合流しました(帯広への送迎が無い分、ガイド料をお安くできます)。こうした融通が利くのもプライベートガイドの良さ。
 
 池田町内や十勝川下流域を中心に半日ほどの探鳥でした。最初に訪れた公園では、つい最近園内の草刈りが行われた場所に虫が多数出てきているようで、多くのアカゲラやカラ類にくわえ、ヤマゲラ、アオジ、キビタキなども地上で虫を捕えていました。撮影派のおふたりは、次から次に現れる小鳥たちに夢中でシャッターを切っていました。
 
 郊外の湿地に移動する頃には風がやや強くなり、期待していた草原性の小鳥は少なめでしたが、晴れ渡った青空を吹く風がヨシ原を揺らす様が感動的でした。付近ではタンチョウの親子がコムギ畑に出ており、初めて出会うタンチョウにいたく感激されていました。上空高く舞い上がるオジロワシの若鳥を、2羽のチゴハヤブサがモビングしていました。
 
 次の目的地はアカエリカイツブリの繁殖地。通常、この場所では繁殖中のカイツブリに配慮して、車内からのみ観察・撮影を行います。しかし、本日のお客さんは三脚を持参していたため、カイツブリと反対のドアから出て音を立てないでドアを閉める、撮影は車の陰からのみ行う、撮影は短時間で済ませガイドの指示に従うなどいくつかの約束をしていただいた上で車外からの観察・撮影を試してみました。結果、アカエリカイツブリは特に警戒することもなく、通常通り休息や羽づくろい、給餌等行っていました。ただし、この方法は車1台分の人数しか通用しないでしょう。

 最後の原生花園はジリ(霧と雨の中間のようなもの)で身震いする程の寒さでした。それでもノビタキやシマセンニュウが活発に活動しており、晴天時には朗らかなノゴマの囀りが、霧の中の潮騒と重なって妙に物哀しく聞こえていました。

 写真はアカゲラ幼鳥。頭頂部全体が赤く、胸から腹の白は煤け、下腹・下尾筒の赤はやや鈍い。

確認種:マガモ アカエリカイツブリ ドバト キジバト アオバト アオサギ タンチョウ カッコウ ハリオアマツバメ オオセグロカモメ トビ オジロワシ コゲラ アカゲラ ヤマゲラ チゴハヤブサ ハシボソガラス ハシブトガラス ハシブトガラ ヒガラ シジュウカラ ヒバリ ショウドウツバメ ヒヨドリ ウグイス センダイムシクイ シマセンニュウ エゾセンニュウ コヨシキリ ゴジュウカラ キバシリ ムクドリ コムクドリ ノゴマ ノビタキ キビタキ スズメ ハクセキレイ カワラヒワ ベニマシコ シメ イカル アオジ オオジュリン (44種)


(2015年7月6日   千嶋 淳)