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All photos by Chishima,J.
(センダイムシクイ 2006年5月 北海道中川郡豊頃町)
先日、東京の人から「沖でウミツバメを沢山見た。」というメールをいただいたので、返信の中で「いいですね。こちらの5月はセンダイムシクイばかりですよ。」と書いたら、「センダイムシクイなんていいじゃないですか!東京はツバメ、メジロ、シジュウカラくらいのものです。」と返されてしまった。そして、関東にいた時分にはセンダイムシクイは新緑と共に初夏を告げる、憧れの鳥の一つであったことを改めて思い出した。4月末から5月頭、山への移動中に平野で聞く本種の囀りに、夏鳥シーズンの到来を感じたものだ。
そんな新鮮な感動を忘れさせてくれるほど、北海道の林にはセンダイムシクイが多い。高緯度地帯特有の垂直分布の下降により平野部でも普通な上に、河畔林や公園、ちょっとした緑地などとにかく緑のある所には見かけないことがないくらいである。「風薫る川辺で」でも書いたように、伐採や洪水といった撹乱の少なくなって成熟中の河畔林には特に多く、本種に托卵するツツドリの姿も川の周辺で増えているように思う。
囀り(センダイムシクイ)
2006年5月 北海道中川郡豊頃町
小さな体サイズに反して、声量は大きい。
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捕食(センダイムシクイ)
2006年5月 北海道河西郡芽室町
その名の通り、枝先で虫を捕らえた。
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エゾムシクイ
2006年5月 北海道帯広市
センダイムシクイよりはやや標高の高い、針広混交林に多い。針葉樹の樹幹部にいることが多く、姿を見ることは難しい。
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同じように初夏の北海道でありふれた鳥に、アオジがある。こちらはセンダイムシクイ以上にどこにでもいる鳥で、5月の早朝にアオジの声のしない場所を探すことは困難だろう。アオジの囀りは文字で表すには少々複雑だが、北海道に来て間もない頃、「千代ちゃん、ちょっとビールが飲みたいな」と聞きなすと良いと教えてくれた人がいる。その時は「そうか?…」と思ったものだが、10年以上聞いていると今ではそうとしか聞こえないから不思議なものである。
アオジ(オス)
2006年5月 北海道河西郡芽室町
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アオジ(メス)
2006年5月 北海道河西郡芽室町
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囀り(アオジ)
2006年5月 北海道広尾郡大樹町
左手前にはキタコブシの白い花。
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地面で採餌(アオジ)
2006年5月 北海道中川郡豊頃町
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夏鳥の減少が言われるようになって久しいが、この2種の多さは世の中にまだ鳥たちによる、夜明けのコーラスが存在していたことを高らかに宣伝しているようで、ちょっとほっとした気分にさせられる。疎林やヤナギ林など、人間の営みによって創出された環境をうまいこと利用してきた結果であろう。
しかし、当然のことながらそのような鳥ばかりではない。代表格を一つ挙げるなら、アカハラだろうか。ほんの10数年前、帯広近郊の夜明けはアカハラとともに始まったと言っても過言ではない。それくらい多かった。友人たちと酒盃を交わしていて、気が付いたら他種に先がけて鳴くアカハラのコーラスに包まれていることもしばしばだった。その喧騒が、今はずいぶん静かになった。また、秋の渡去前には実の成る木に集団で群がっていたものだが、そんな群れも見なくなった。残念なことである。輪をかけて残念なのは、その原因がよく分からないことである。森が無くなったとかなら分かりやすいし、対策の取り様もあるだろう。しかし、環境が人間の目にはそう大きく変わっているようには見えないのに、ある種の鳥は確実に減っている。これは辛いことだ。
アカハラ(オス)
2006年5月 北海道帯広市
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それでも、アオジやセンダイムシクイはまだたくさんいてくれる。フィールドの悩みはフィールドで解決するしかない。今夜は寝酒をこの辺で打ち切って、明日は早朝の原野に繰り出してみようか。
(2006年5月30日 千嶋 淳)