鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

141129 ワシ一斉調査(十勝川中・下流域)

2014-12-11 19:16:15 | 猛禽類

All Photos by Chishima, J.
結氷間近の沼に群れるヒシクイオオハクチョウマガモ 以下すべて 2014年11月 北海道十勝川中・下流域)


 ワシ類越冬個体数等調査の1回目でした。基準日は30日なのですが、明日は都合の悪い会員もいるため、野鳥の会十勝支部では一日前倒しで実施しました。私が担当したのは十勝川の中流域と下流域。時折小雨のちらつく曇天の下、予想はしていましたが調査範囲が広く、7時間もかかってしまいました。
 中流域でオオワシ29羽、オジロワシ5羽、下流域でオオワシ2羽、オジロワシ6羽を確認しました。下流域のワシもほとんどが中流域に隣接したエリアで、晩秋から初冬のこの時期に、十勝川中流域に多くの海ワシ類の集まっている状況を明らかにできました。例年ならオオワシ並みかそれ以上いるオジロワシが少なめでしたが、ワシクルーズでは順調に出ているので、陸からは見えない場所にいるか、支流でもそこそこの数が出たので分散しているのかもしれません。


十勝川河岸段丘の木に点在するオオワシ
成鳥6羽、幼鳥1羽の計7羽がいるが、初冬の枯野の中では意外と目立たない。



 野外調査で嬉しいのはワシ以外のいろいろな鳥も見られること。タンチョウは34羽を数え、各種カモ類やベニヒワ、久しぶりのオオモズなどに出会えました。走行中の車から、500m以上離れた木に止まるオオモズを見つけた時は、己の目もまだ捨てたもんじゃないなと思えました。
 帰宅するとちょうど、注文していた「海ワシ物語」が届いておりました。素晴らしい写真集です。これからじっくり拝見させていただきます。
 冒頭の写真は薄氷に覆われた沼の、わずかな開水面に集まったヒシクイやオオハクチョウ、マガモなどです。ガン類は、ほんのひと握りの群れを残すだけとなりました。

確認種:ヒシクイ オオハクチョウ オカヨシガモ ヨシガモ ヒドリガモ マガモ オナガガモ コガモ ホシハジロ キンクロハジロ スズガモ クロガモ ホオジロガモ ミコアイサ カワアイサ ドバト タンチョウ オオバン カモメ シロカモメ セグロカモメ オオセグロカモメ トビ オジロワシ オオワシ アカゲラ オオモズ ハシボソガラス ハシブトガラス シジュウカラ ヒヨドリ スズメ ハクセキレイ セグロセキレイ ベニヒワ


黄昏の十勝川築堤で活動するタンチョウのつがい




(2014年11月29日   千嶋 淳)

140923 十勝が丘展望台タカ渡り観察会

2014-10-09 10:39:29 | 猛禽類
アオダイショウと子ども 以下すべて 2014年9月 北海道河東郡音更町)

 秋らしい爽やかな快晴の中、NPO法人日本野鳥の会十勝支部主催の観察会には26名が集まりました。午前7時半、朝のひんやりした空気が心地良い展望台周辺はシマエナガやメジロの声に包まれ、コアカゲラまで姿を現しました。更にはアオバト2羽が飛んで来て、1羽は近くのカラマツ樹上に止まってくれたため、望遠鏡でじっくり観察できました。

 小鳥が静かになってくると、いよいよタカ類に期待がかかります。しかし、9時を回ってもタカは現れず、そのかわりテーブルを広げてカフェを開く者、熱気球を観察する人々、鳥談義に花を咲かせる一行など思い思いの時間を楽しみました。そんな中、参加者の一人が小ぶりのアオダイショウを捕まえて来て、何人かの子供たちは歓声を上げて喜び(大人も当日一番の盛り上がりを見せておりました。ある一時、越冬場所を探す無数のテントウムシの仲間が展望台を通過して行ったのも印象的でした。自由集合・自由解散のため人の少なくなってきた午前11時頃から猛禽類の動きがやや活発になり、午後12時半の解散までにオジロワシ2、ハイタカ1、ノスリ2、チゴハヤブサ1が飛びました。今年も晴天に恵まれ、ゆったりとした展望台タイムを満喫できた探鳥会でした。参加いただいた皆様、ありがとうございました。

思い思いの時間を楽しむ


観察種:マガモ ドバト キジバト アオバト カワウ アオサギ ダイサギ タンチョウ オオセグロカモメ トビ オジロワシ ハイタカ ノスリ コゲラ コアカゲラ アカゲラ チゴハヤブサ ハシボソガラス ハシブトガラス ハシブトガラ ヒガラ シジュウカラ ヒヨドリ エナガ メジロ ゴジュウカラ ハクセキレイ ビンズイ タヒバリ イカル シメ ホオジロ アオジ (33種) その他:エゾリス アオダイショウ

展望台から望む十勝平野と日高山脈


(2014年9月25日   千嶋 淳)

140223 ワシ一斉調査

2014-03-01 11:44:39 | 猛禽類
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Photo by Chishima, J.
ワタリガラス 2014年2月 北海道十勝管内)


 先の日曜日はオオワシ・オジロワシ一斉調査でした。NPO法人日本野鳥の会十勝支部でも管内の数ルートを会員で分担し、私は2名の会員と一緒に内陸の山間部を調査しました。エゾシカ残滓があると思われる場所に数羽のオオワシ、オジロワシを発見したのを皮切りに次から次へと出現し、総数はオオワシ50羽、オジロワシ18羽の計68羽でした。晩秋から初冬にかけてサケを求めて十勝川中流域に集中し、その後海や山へ分散してゆく傾向は数年前のシーズン通しての調査でも見られましたが、今年も同様のようです。嬉しかったのはワシ類と一緒に、計10羽前後のワタリガラスが見られたこと。昨年のモンゴルでは郊外やウランバートル市内でも普通に観察できましたが、この鳥はやはり銀世界の青空を、甲高い不思議な声で鳴きながら舞うのが似合っていると思います。


(2014年2月25日   千嶋 淳)


140112 十勝川ワシ観察クルーズ最終日

2014-01-14 00:14:03 | 猛禽類
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All Photos by Chishima,J.
十勝川ワシ観察クルーズ 以下すべて 2014年1月 北海道十勝川中流域)


 11月半ばに開幕した今シーズンも、あっという間に最終日。陸上からオジロワシ、オオワシの成鳥をじっくり観察した後に繰り出した川面はいつになく穏やかで、5kmほど離れたJRの鉄橋を渡る汽車の音が鼓膜を揺らします。新水路の釣り人から「寒くないのぉ~?」と声をかけられ、「寒いよー!!」、「気ィ付けてなぁ!!」等と会話を交わしつつ細波すら立たぬ川を下るゴムボート。最終日で気分が高揚していたのか、気が付けばオジロワシを取り囲んでサケを強奪したタンチョウ家族にまで話は及んでいました。

 このところの寒さで迫り出した薄氷の上を忙しなく歩くハクセキレイやセグロセキレイを見ながら進みますが、肝心のワシがなかなか現れてくれません。猿別川合流点に近付いてようやく、30cmはあろうかというウグイを掴み飛ぶオジロワシを発見。それを後ろから追う、もう1羽とともにしばし観察していると、今度はトビとハヤブサの空中戦が繰り広げられ、本日のハイライトとなってくれました。その後もワシ放談を楽しみながら、青から鉛色へ変わった降雪直前の空の下、ホオジロガモの羽音をBGMに無事ゴールしましたが、タンチョウやオオワシは残念ながら姿を現してくれませんでした。ここ数日の冷え込みで移動したのでしょうか。
 シーズン5となる今季は、オオワシやタンチョウとの遭遇確率が高い季節でした。案内するこちらが興奮状態のことも少なからずでしたが、自分が楽しめないもので人を楽しませることはできないと思ってますのでご容赦下さい。十勝川温泉という土地柄ゆえ道外のお客さんが多いこのクルーズも、今季は地元十勝のお客さんにも結構乗船いただきました。多くの方が帯広から半日のプログラムでワシやタンチョウを堪能できることに驚き、喜んで下さいました。近年、諸条件が重なった結果、時期を選べば帯広近郊でワシやタンチョウを容易に観察できるようになって来ました。その凄さや地域にとってのポテンシャルを、微力ながら伝えてゆくお手伝いを今後もさせていただけたら、これに勝る喜びはありません。来シーズンもよろしくお願いいたします。


JR鉄橋と千代田大橋
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*十勝川ワシ観察クルーズの詳細は、十勝ネイチャーセンターのHPを参照下さい。


(2014年1月12日   千嶋 淳)


140108 十勝川ワシ観察クルーズ

2014-01-10 23:26:04 | 猛禽類
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All Photos by Chishima,J.
タンチョウ 以下すべて 2014年1月 北海道十勝川中流域)


 本日はお客さんのご都合により、昼過ぎからの川下りとなりました。この時期の午後は風が強くなるので心配していましたが、幸いクルーズ中は適度な西風を受けながら、微睡むような穏やかさの中を流れました。
 陸上からオオワシ、オジロワシを観察後に繰り出した川の前半は、ここ数回と同様ワシは少なめでしたが、セキレイ類やカモ類が劇的に増えていました。特にホオジロガモは数~数十羽の群れがいくつも頭上を行き交い、英語で‘whistle(口笛)’と称される金属的で美しい羽音を、今シーズン初めて堪能しました。ようやく、いつもの冬の十勝川の雰囲気になって来ました。このところの冷え込みが効いたのでしょうか。
 そして後半、河畔林から飛び立ったオオワシ成鳥が何度も頭上を旋回して、惜しみなくその雄姿を披露してくれました。その後はオジロワシ成鳥、タンチョウと立て続けに出現し、特にタンチョウは3羽の群れが2つ、合計6羽も見ることができました。いずれもファミリーではなく、ペアに単独個体が付きまとっている(?)ものでした。密接して、動作までシンクロさせて飛ぶ2羽の後ろを鳴きながら付いてゆく単独個体を見ながら、ボートの上からは参加者がそれぞれのタンチョウ恋物語を妄想し、アドリブで台詞を連発していました(笑)。


オオワシ成鳥
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 上陸後は陸上からのワシ観察スポットへ。午後の早い時間ということもあって休息中のワシが多かったのも束の間、風が強くなるとやおら動き出し、餌を探しに行くワシを何羽も見送りながら本日のプログラムを終えました。
 サケはあらかた食い尽くしたと見え、ワシの数はかなり減って来ましたが、タンチョウを6羽も見られたのは案内する自分にも驚きでした。今シーズンは運航した9回中8回でタンチョウと出会えています。個体数と分布の拡大に伴って、十勝川中流域で越冬するタンチョウが確実に増えているようです。この状況が今後も続くなら、「十勝川ワシ・タンチョウクルーズ」と銘打てる日も近いかもしれません。本日のお客さんも仰ってた、「タンチョウって、釧路に行かなくてもこんなに見れるんだぁ…」を多くの方に実感していただきたいと思います。


十勝川の水面を行く
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*十勝川ワシ観察クルーズの詳細は、十勝ネイチャーセンターのHPを参照下さい。


(2014年1月8日   千嶋 淳)