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All Photos by Chishima,J.
(水浴に訪れたベニマシコの幼鳥(手前)とアオジ 以下すべて 2008年9月 北海道中川郡幕別町)
今年の7、8月は真夏らしい日が少なく、少々寂しい感のあった十勝地方。9月に入ってから暫くは暑い日が続いた。本格的な夏の訪れを意識しないうちに残暑になってしまったというわけだ。この日も朝から気温がぐんぐん上がり、昼近くには9月も折り返した後とは信じ難い暑さに包まれた河原では、鳥たちもすっかり動きを潜めてこの熱気をやり過ごしているかに思えた。
そろそろ帰ろうかと通りかかった河川敷の一か所に、白昼とは思えないほどの小鳥が屯していた。どうしたのだろう?未舗装道路の端に車を止め、流れ出る汗に耐えながらしばし観察していると、謎は解けた。鳥たちの目当ては道の中央部にある水たまりだった。このところの少雨・好天で、水場に窮していたのだろう。観察していた30分ばかりの間にも、ハシブトガラやシジュウカラ、アオジ、ベニマシコ等が代わる代わる訪れては、水浴びや飲水を行っていた。
アオジ
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水浴び(ベニマシコ・幼鳥)
冒頭の個体より腰等の赤みが強い。オス?
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通常、水場でのこうした行動は朝夕に見られることが多いのだが、この日の場合、余りの暑さに耐えかねて、涼を求めて水場へやって来ているかのようだった。事実多くの鳥は、口を開いて暑さに喘ぎながら、水場での時間を過ごしていた。
面白かったのは、周囲への警戒の度合が種によってかなり違っていたことだ。水場での水浴や飲水は生命維持の上で不可欠な行動ではあるが、開けた場所に出てきている上に水浴でもしたら周囲がよく見えなくなる、危険と隣り合わせの行為でもある。この危険行為に際して最も大胆なのは、ハシブトガラであった。彼らは周囲の灌木や草の上から水場に一気に飛んで来て、用事を済ますとさっさと河畔林に帰って行く。次はアオジであるが、こちらは直に飛来することはせず、叢の中から地面をホッピングして周囲を窺いながら近接して来る。この時点で危険を察知すると叢に引き返してしまい、再出発となる。ベニマシコはアオジがひとしきり水浴して危険が無さそうだとわかると、同じく叢の中から地上をやって来る。しかし、一度夢中になると周囲が見えなくなるタイプのようで、アオジが引き揚げた後もずっと水浴に興じているから、これではどっちが安全なのか…。シャイな筆頭はノゴマだ。やはり叢の中から、長い脚で跳躍しながら現れるが、少しでも気に入らないと脱兎の如く戻ってしまう。
アオジの水浴
顔をどっぷり水に浸しての入浴は、無防備の一瞬でもある。
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共同浴場(ハシブトガラ(左)とベニマシコ・幼鳥)
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そんな小鳥たちの仕草を微笑ましく眺めていたが、ブラインド代わりの車中の暑さに耐えきれず、また恥ずかしがり屋のノゴマにも水浴びをさせてあげたく、正午少し前に撤収。後にこの日の帯広の最高気温は、正午の28.1℃であったことを知る。
ノゴマ・オス(背後はハシブトガラ)
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厳しい残暑もこの日までだったようで、翌日は掌を返したように爽やかな秋晴れ。そこから幾度かの雨を経て、すっかり涼しくなった今日の夕方、犬の散歩で外に出た私の頬を突き刺した冷たい風は、既に冬の気配を纏っていた。
(2008年9月27日 千嶋 淳)