鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

131221 十勝川ワシ観察クルーズ

2013-12-26 22:19:11 | 猛禽類
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Photo by Chishima,J.
オジロワシ成鳥 2013年12月 北海道十勝川中流域)


 時折薄日が差す程度の曇天でしたが、細波一つ立たぬ十勝川は穏やかそのもので、気温も高めで快適な川下りでした。事前に陸上からオオワシ、川面に繰り出してから河原に降り立つオジロワシを観察。その後しばらく寂しい状況が続いた後、後半で2種のワシが続々と現れ、オオワシがボートの真上を飛び、2回連続で河畔林に止まるオジロワシの至近を、飛ばれることなく通過して一同の興奮はピークに達しました。上陸後も近場のワシスポットで10羽以上を観察し、2種のワシを堪能した午前のひと時でした。カモ類やセキレイ類、ミソサザイ等は相変わらず少ない状況が続いています。


(2013年12月21日   千嶋 淳)



131218 十勝川ワシ観察クルーズ

2013-12-26 22:09:05 | 猛禽類
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All Photos by Chishima,J.
河畔林に止まるオオワシ成鳥 以下すべて 2013年12月 北海道十勝川中流域)

 お客さん6名とボードガイド、それに私の8名で下って来ました。例年、12月も中旬を過ぎると本格的にシバれて来て、日によっては顔や足先の痛みに耐えながら樹氷や毛嵐を見ることもありますが、今日は秋のような温かさ、穏やかさでした。それはそれで快適なクルーズとなって良かったのですが。

十勝川の水面と千代田新水路、日高山脈
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 乗船前には時間の関係で、オオワシ1羽のみ陸上から観察しました。この陸上観察はボートでワシが出なかった時の保険だけでなく、スコープで顔つきや細部を見ることによって、ワシをより深く知ってもらうために行なっています。
 川面に出廷後ほどなく、河畔の木にオオワシとオジロワシを発見。オオワシは肉眼で嘴の黄色や翼前縁の白がはっきりわかる距離で観察できました。その後も景色や歓談を楽しみながら下ってゆくと、2羽のタンチョウが雪を頂いた日高山脈を背に河原を歩いていたり、終盤近くではオジロワシの成鳥もごく間近に見るなど、盛り上がりのうち無事に終えることができました。
 カモ類やセキレイ類が少なく、例年なら大群で頭上を通過する際の羽音が美しいホオジロガモも疎らにしかいないのが少々残念なところです。今年は温暖で開水面も多いと予想されるため、鳥が分散しているか、もっと北に留まっているものが多いのかもしれません。
 このクルーズのお客さんの多くは道外か、道内でも十勝管外の方ですが、十勝の人にも、知床や釧路に行かなくてもワシ類やタンチョウが、しかも帯広から半日足らずの行程で楽しめることを知っていただきたいなと、ふと思いました。


河原に佇むタンチョウのつがい
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*十勝川ワシ観察クルーズの詳細は、十勝ネイチャーセンターのHPを参照下さい。


(2013年12月18日   千嶋 淳)


今年の冬は赤い小鳥が熱い!?

2013-12-10 22:05:34 | 鳥・冬
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All Photos by Chishima,J.
イスカ 2013年10月 北海道中川郡池田町)

NPO法人日本野鳥の会十勝支部報「十勝野鳥だより182号」(2013年11月発行)より加筆修正・写真追加して転載)


 夏が終わり、山野の草木から急速に緑が褪せて来ると、今年の冬鳥はどうだろうかとそわそわし始める。日本に飛来する冬鳥の故郷であるロシア極東北部等の寒帯・亜寒帯は年による環境変動が大きく、夏の天候や種子の出来具合等も年により大きく異なるらしい。おそらく、それらの影響で日本への冬鳥の渡来数や分布もシーズンごとに大きく変わる。極端な例がベニヒワやレンジャク類で、これらは「当たり年」にはあちこちで、それこそ市街地の街路樹でさえも群れで見られるが、少ない年にはシーズンを通して数度かそれ以下しか出会えない。これほどまででなくともアトリの多い冬やツグミの少ない冬等、年によって傾向が異なるので、その冬のトレンドが気になって仕方ないわけだ。

キレンジャク
2006年2月 北海道帯広市
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 この5年ほど、秋はT展望台をメインに猛禽や小鳥の渡りを観察して来たが、最近ではすっかり観光地化して人が多いためか以前ほど鳥が近くを飛んでくれないこと、ガソリン価格の高騰で近場とはいえ繰り返すと家計を圧迫することを受け、ハチクマの渡りが終息する9月下旬以降は自宅から車で5分程度のM展望台に観察の中心を移した。小鳥は当初ビンズイ、メジロ、アオジ等夏鳥が中心であったが、10月3日に旅鳥のエゾビタキが1羽観察された。本種を北海道では夏鳥とする文献があり、十勝でも1960~70年代に山地を中心に夏期の記録があるが、それらはサメビタキの、胸が縦斑状に濃色な個体の誤認ではないかと思う。「蝦夷」の名に反して北海道、特に道東では少なく、秋の南西諸島では至って普通なので、主要な渡りルートは大陸側にあるのだろう。10月10日はアトリとカシラダカが群れで観察され、同14日はアトリやマヒワ、ツグミ、カシラダカ等がそれぞれ30~100羽以上通過した。この時点で、アトリとマヒワは例年より良さそうな印象を持った。


エゾビタキ
2013年10月 北海道中川郡池田町
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カシラダカ(上)とマヒワ
2013年10月 北海道中川郡池田町
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 10月18日、根室で高田勝さんのお別れ会に参加した翌日、久しぶりに秋の根室半島へ繰り出した。半島先端部の温根元は快晴ベタ凪で、青空を映した海では秋サケ定置網漁船が仕事に勤しんでいた。空き家や番屋に住み込ませてもらいながら、アザラシ類の標本収集を行なった20歳前後のことを懐かしく思い出す。海無し県出身の自分は、ここでサケやカレイの捌き方、イクラの漬け込み方等を漁師に一から教えてもらった。タヒバリやカワラヒワが次々飛び出す番屋付近の未舗装道路にゆっくり車を走らせていると、趣の異なる小鳥が1羽、水溜りの周囲を闊歩している。双眼鏡を当てるとベニヒワだった。1996年や2007年といった当たり年には、10月末近くから小群を見ることはあったものの、それと比べても随分早い。冬枯れの雪原で見慣れたこの鳥を、夏の艶は失せたとはいえまだ青々とした草を背に観察するのは、何とも妙な心持ちであった。


ベニヒワ
2013年10月 北海道根室市
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 道東での用事を済ませて数日後にMでの観察を再開すると、相変わらず多く通過してゆくアトリやマヒワ、カワラヒワに加えてベニヒワの姿が目立ち始めた。数~数十羽の群れが幾つも、小さいのと飛翔高度が高いのとで十分見えない場合もあったが、「ジュジュジュ…」と聞き慣れればすぐにそれとわかる地鳴きと共に渡って行き、一朝で100羽を超える日もあった。時をほぼ同じくして、群馬のTさんから栃木県奥日光で早くもベニヒワが観察されたとの情報を頂いた。この頃から頻繁に通過するようになったもう一種がイスカ。10~数十羽が「キョッ、キョッ」と少しばかりアトリに似た声で鳴きながら現れる。高めを飛ぶベニヒワとは対照的に、稜線からあまり高度を上げずに飛び、時には山側に引き返して来るものだから何度か撮影の機会もあった。もっとも、Iさんと一緒に観察していた時は、近くから群れの声が聞こえて来たので色めき立って待っていたら、本当に樹冠すれすれを飛んだので近過ぎて写真が撮れず、「あああぁぁ…」という嬉しさと悔しさの籠った叫びで群れを見送った。撮影に成功した画像を見ると、偶然なのかもしれないが、群れの中でも雌雄のペアが近接して写っているものが多く、不思議であった。ちなみに、ベニヒワでもそうだったが小鳥の渡り観察では「地鳴き力」が要求される。イカルやヒガラのように囀りながら渡る種もいるが、大部分は地鳴きと共に高空を飛んで行くためだ。目視できる距離を飛んだ時は、写真撮影も有効だ。ただし、シャッタースピードは相当速く設定しておく必要がある。この方法でギンザンマシコのメスを記録できたことがある。デジタルの時代ならではの方法といえよう。
 10月末よりバードフェスティバルや全国総会のため半月近く本州に行かねばならず、今シーズンの観察はほぼ終了となったが、帰宅した翌日の11月13日、短時間だけ展望台へ顔を出すと、すっかり静寂に包まれた枯木色の中、まだベニヒワの小群がうろうろしていた。全国総会でお会いしたオホーツクのKさんと話をすると、稚内や道東でベニヒワは日に数千から万を超えるような渡りを観察しており、イスカやギンザンマシコもぱらぱら出ていて、稀に見るアトリ科の大当たり年になるのではないかとのことであった。本州滞在中は、ベニヒワやイスカが今期は早い時期から離島以外の本土でも確認されているという話を何度も聞いた。関係は不明だが、10月下旬には台湾から初となるオオマシコが記録されている。
 これらを総合すると、今年はシーズンの早い時期から相当数のベニヒワやイスカをはじめとするアトリ科の冬鳥が南下していると考えて良さそうだ。心配なのは渡りの観察なので、これらがそのまま南下してしまうことだ。一昨年、Mで一朝に2000羽を超えるアトリの通過を観察したものだから、今期はアトリ祭に違いないと期待したが、いつまで待っても他の場所に現れず、西日本で大群が出たらしいと後に聞いた、どうやら北日本をまっすぐ通過して行ったようだ。それでも、ベニヒワやイスカの通常越冬域はアトリよりずっと北だから、このまま冬に突入しても北海道周辺に多数が残って我々鳥見人を楽しませてくれるのではないかと期待している。この冬は森や原野や海岸に、冬枯れや白銀の世界に紅という彩りを添えるアトリ科の小鳥を追い求めてはいかがだろうか?家の庭や街路樹等、身近な場所にも現れるかもしれない。ただし、予想に反して全く観察できなくても当方では一切責任を負えないので、よろしく願いたい。運良く素敵な出会いが待っていた時は野鳥情報としてお寄せいただけると、貴重な渡来情報となることだけは保証して筆を置く。


アトリ
2011年10月 北海道中川郡池田町
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展望台より望む雲海の十勝平野
2013年9月 北海道中川郡池田町
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(2013年11月15日   千嶋 淳)

2013年12月10日の追記:先週は十勝平野の河川を調査で走り回ったが、ベニヒワは各地で数~10数羽の群れを見ることができた。ただ、カラマツやハンノキ類の樹冠部でそれらの実を食べているか、移動飛翔のため近くでじっくりとは見られていない。今後、これらの食物を食べ尽くし、また積雪で活動場所が限定されて来れば海岸近くの原野等で数百羽かそれ以上の大群と地表近くでの出会いを期待できるのではないだろうか。


131202 十勝沖海鳥・海獣調査

2013-12-06 17:24:07 | 海鳥
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All Photos by Chishima,J.
食卓を埋め尽くすケガニハナサキガニのご馳走 以下すべて 2013年12月 北海道十勝地方)


 漁の関係でいつもより遅めの午前8時に出港。乗船前にはヒシクイやオオハクチョウの群れが幾つも、海岸線沿いに飛んで行くのが見られました。湖沼や河川の結氷で急な南下を余儀なくされたのでしょう。天気は快晴だったものの、冷たい風の吹く海上はやや波があり、右に左に絶え間なく揺れながらの航海となりました。例年、11月~12月上旬は南下途中のウミスズメが多数観察されますが、今回は少なめでした。通常は11月末までに概ね南下するウトウがやや多めに観察されたことから海の状態が例年と違っていたのかもしれませんし、実際にはもう少しいたけれど、波の影響で小型の調査船からは見えにくかったのかもしれません。浮いているウミスズメは、突然目の前に現れて、飛び去るか潜り去るものが大部分でした。

波間を飛ぶウトウ
冬羽だが先頭の個体は顔の白線がうっすらと残り、嘴基部の突起も比較的明瞭。
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 この時期のもう一つの目玉、アビ類は水深50m前後でシロエリオオハムの渡りが盛んに見られたほか、沿岸部ではアビも散見されました。繁殖後換羽が部分換羽のため、秋の渡りの早い時期には夏羽に近い鳥も多く観察されるシロエリオオハムも、さすがに肩羽や雨覆の一部に白斑を残すほかは茶色と白の冬羽の個体が圧倒的に多くなっていました。
 沖合では操業中の漁船が何隻かあり、それらに10~数十羽のオオセグロカモメとカモメをはじめとしたカモメ類が追従していました。漁船が操業を止めて港へ引き返すとカモメ類は分散し、調査船の傍にも飛来してしばらく併走した後で他の船を探しに去って行きました。
 帰路、港に戻る直前にはおよそ150羽のマガモが海上で観察されました。厳冬期でも20羽前後がいることはあるものの、これほどの数は珍しく、淡水域の結氷に伴う現象と思われます。ミズナギドリ目はまったく観察されず、チドリ目主体の冬の鳥類相に移行していた海上ですが、ウミスズメ類は少なめでやや消化不良感が残りました。それでも、下船後は番屋で旬の毛ガニや花咲ガニをこれでもかというくらい頂き、至福に包まれて2013年最後の調査を終えることができました。次は年明けの1月か2月になるでしょう。今年も多くの方に参加・協力いただきながら続けて来ることができました。厚く感謝申し上げると同時に、来年も引き続きよろしくお願いいたします。


沿岸を高めに飛ぶシロエリオオハムの冬羽
雨覆と肩羽下部に夏羽の白斑を残す。
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確認種:マガモ スズガモ シノリガモ ビロードキンクロ クロガモ アカエリカイツブリ ハジロカイツブリ アビ シロエリオオハム ヒメウ ミツユビカモメ ユリカモメ カモメ ワシカモメ シロカモメ セグロカモメ オオセグロカモメ ハシブトウミガラス ケイマフリ ウミスズメ ウトウ トビ ハシボソガラス ハシブトガラス

*十勝沖調査は、NPO法人日本野鳥の会十勝支部が日本財団より助成を受けて、漂着アザラシの会、浦幌野鳥倶楽部との連携のもと行われているものです。


(2013年12月3日   千嶋 淳)