All Photos by Chishima,J.
(エトロフウミスズメ 以下すべて 2013年2月 北海道十勝沖)
今年初となる十勝沖海鳥・海獣調査を実施できました。海況は良い予報でしたが、低温のため船のエンジンがかかるか不安でしたが、船頭さんがガスバーナーまで使って暖めてくれたおかげで無事出航できました。午前7時半、どこまでも澄んだ青空と十勝の大地、その先に聳える日高の峰々を見ながら沖を目指します。舳先から振り返ると、今年初の出航となる船の縁から、船頭さんがお酒を撒いて御利益を願っています。
通常、水深ごとに異なる海鳥が見られ、沖に行くと陸ではなかなか見られない海鳥との出会いも増えるのですが、今回は水深100m以深の沖合では海鳥が非常に少なく、ウミガラス類やエトロフウミスズメ、カモメ類等が疎らに観察されただけでした。しかし、水深30~50mの沿岸域ではコウミスズメを中心とした海鳥が多く、冬の海上を堪能できました。コウミスズメはこれまでの調査や自身の経験からもっと外洋性が強いと思っていたのですが、水深30m前後で数~数十羽の群れがひっきりなしに出現し、総数は1000を下らないでしょう。出現の大半は海上で、また大きな群れでは個体間の距離が非常に密接していたことから摂餌中だったのではないかと思います。2年前の同時期に100羽以上が記録されたウミオウムは、今回は可能性のある1羽が観察されただけで確認できませんでした。年によって分布が相当変わるのかもしれません。アホウドリ類やウトウ、フルマカモメ等はまだ見られませんでした。
コウミスズメ
4時間近い航海で冷え切った体で帰った港で見たのは、乗船した岸壁の水面に浮かぶ蓮氷でした。朝はなかったのに…。下船後は番屋で温かい鮭のお汁はじめご馳走をいただき、久しぶりの調査後ということもあって話も弾み、昼をだいぶ過ぎてから各々帰途につきました。冬の調査は大変だけれど、やはり得るところの大きいとつくづく実感できた一日でした。
確認種:マガモ スズガモ シノリガモ ビロードキンクロ クロガモ コオリガモ ホオジロガモ カワアイサ アカエリカイツブリ ミミカイツブリ アビ ヒメウ カモメ ワシカモメ シロカモメ オオセグロカモメ ハシブトウミガラス ウミガラス ウミバト ケイマフリ コウミスズメ エトロフウミスズメ オジロワシ ハシブトガラス
*十勝沖調査は、漂着アザラシの会が日本財団、NPO法人日本野鳥の会十勝支部がセブンイレブン記念財団より助成を受けて、上記2団体と浦幌野鳥倶楽部の連携のもと行われているものです。
ウミガラス(冬羽)
(2013年2月26日 千嶋 淳)