![Pic1_9 Pic1_9](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/12/1fca17ff9500b24721ea727c9973be0e.jpg)
Photo by Chishima,J.
(キバシリ 2006年2月 北海道帯広市)
「キマワリ」とは多くの地方でゴジュウカラを指すようだが、群馬県の一部ではゴジュウカラは「キネズミ」と呼び、「キマワリ」の名をキバシリに当てているそうである。本種の行動をよく体現した、粋な名前だと思う。たしかに、キバシリが木の幹を上下している様を見ていると、木を走るというよりは幹の周囲をくるくる回りながら上下しているような印象を受ける。
高校時代、この小さな鳥に憧れて群馬県北部の山岳地帯に広がる針葉樹林を歩いたものだが、会えずじまいだった。今思えば鳴き声くらいは聞いていたのかもしれないが、深いコニファーの森奥に住む隠者的なイメージに思いをますます募らせた。
ところが、北海道に来たら平野部の林にも普通に分布しているのに驚いた。同じような例は他の種でもあり、本州中部以南だったら山地や高標高地で見られるアカゲラ、ノビタキ、アカハラ、ゴジュウカラ、ホオアカ、アオジなどが平野部でも普通に繁殖している。かといってモズ、シジュウカラ、ホオジロ、スズメなど本州の平野の鳥がいないわけではなく、同じような場所に生活している。これは、高緯度に位置する北海道では鳥類の垂直分布が本州よりも下降し、結果として山地の鳥が低標高地で平野の種と混在するという圧縮された形を示すからである。この圧縮された垂直分布は、国内では北海道にのみ分布・繁殖する種のいること(エゾライチョウ、ヤマゲラ、センニュウ類など)や本州以南では冬鳥の種が繁殖していること(オオジュリン、ベニマシコ、シメなど)などと併せて、北海道の鳥類相の重要な特徴である。
ノビタキ(メス)
2005年6月 北海道十勝郡浦幌町
![Pic2_8 Pic2_8](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/ef/daaa9abcc555158c39e6d739f18bc79a.jpg)
Photo by Chishima,J.
ホオアカ(オス)
2005年6月 北海道中川郡豊頃町
草原には普通の歌い手であったが、近年見る機会が減少しているように思うのが心配である。
![Pic3_8 Pic3_8](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3a/07/c4d549974e3993629d1b0d53fb99f808.jpg)
Photo by Chishima,J.
アオジ(オス)
2005年6月 北海道帯広市
繁殖期の北海道の平野部ではおそらくもっとも個体数の多い種で、私のいた大学ではスズメ呼ばわりされていた。
![Pic4_8 Pic4_8](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/53/05d4c1f751fe42eee674ee63db958fc0.jpg)
Photo by Chishima,J.
繁殖地(上)と越冬地(下)のオオジュリン
上:2005年6月 北海道中川郡豊頃町
下:2006年2月 千葉県船橋市
緑の草原で高らかに歌っていたオスも、冬はヨシ原でひっそりと採餌する。
![Pic5_9 Pic5_9](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1c/13/78a08f078693e1367623d9a1b5afff9f.jpg)
![Pic6_8 Pic6_8](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/34/d6/7a8d1f7262bda842c4977698cd131de4.jpg)
Photo by Chishima,J.
北洋からの寒冷な親潮に洗われる根室・釧路の沿岸域では、垂直分布の下降はさらに顕著になる。6月、海岸線まで広がる針葉樹の森に足を踏み入れると、そこはルリビタキ、コマドリ、キクイタダキ、ウソなどの鳴き声で溢れかえっている。メボソムシクイの不在を除けば、さながら本州中部の亜高山帯のようである。しかし、海霧とともに飛来したオオセグロカモメの物悲しい声によって束の間の錯覚は打ち破られ、そこが海抜0メートル地点であったことを思い出す。
ルリビタキ(オス)
2006年2月 群馬県太田市
![Pic7_8 Pic7_8](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/12/d9/f61659c66f8f23e5eff4848c11aa79f9.jpg)
Photo by Chishima,J.
オオセグロカモメ(成鳥)
2006年2月 北海道幌泉郡えりも町
![Pic8_8 Pic8_8](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2d/da/dde598dfce4eca745045e49b6f502917.jpg)
Photo by Chishima,J.
北海道に来て、垂直分布の下降によって身近になった鳥がいる一方で、会えなくなってしまった鳥たちもいる。夏のサシバ、コアジサシ、サンコウチョウや冬のジョウビタキ、シロハラなどがその典型であるが、関東人の僕にとって最も寂しいのはオナガの「ギューイ!」という喧騒が近所から消えたことである。
オナガ
2006年2月 群馬県伊勢崎市
![Pic9_7 Pic9_7](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/3e/2ca1a228bc30ae22911602b3176c5975.jpg)
Photo by Chishima,J.
(2006年2月27日 千嶋 淳)